扉が開く音。
アゲハちゃんを横に座らせたまま 立ち上がって駆け寄ろうとすると、
そこにいたのは全く別の人物だった。
アメ
ルキ
アメ
乾いた音がそこに響く。
頬の痛みと母の涙で、 自分が平手打ちされたんだと気がついた。
メヤ
メヤ
しないでちょうだい!!
絶叫に似たような声だった。
いずれこの時は来ると 分かっていた。
ルキ
アメ
ルキ
アメ
アメ
大事な居場所なんだ……。
メヤ
メヤ
顔を合わせた事ないじゃない!
アメ
アメ
俺は爺やと!!
心地の良い雨が降り注いでいた。
諦めることを知らず、 人や傘を濡らし続けている。
世界が曇りきっている。
……私の心のように。
コガネ
コガネ
こう言うことだったんだね。
メヤ
メヤ
アメを、息子をこの世界に
引き摺り出したりはしないって!
コガネ
私は止めました。
メヤ
思ってるんですか?
メヤ
分かっているんですか!?
メヤ
イオリ
コガネ
コガネ
イオリ
コガネ
したまでですので。
ルキ
コガネ
コガネ
イオリ
イオリ
アメが10歳だって話……。
コガネ
コガネ
イオリ
そのお爺さんは喜ぶわけ!?
コガネ
イオリ
しれないけど!
イオリ
少しは、頼ってよ……。
コガネ
赤の他人だ。
コガネ
もちろん信頼してる。
コガネ
君には分からない。
イオリ
イオリ
イオリ
頼りない?
イオリ
少しは貴方を教えてよ!!
コガネ
コガネ
雨か涙か、 分からないものが頬を滑り落ちた。
爺さん、貴方はずるい!
ずるい人です……。
私の気持ちを知っておいて!!
私が貴方に、どんな思いを 抱いてるのか知っておいて!
貴方は、いつだってそうだ!
爺さん……
この気持ちの正解を教えてよ──
数分後、扉が空いたときは コガネさんがびしょ濡れで立っていた。
アメ
コガネ
来てただろ?
コガネ
アメ
どうして、
どうして……コガネさんまで そんな事を?
アメ
俺を捨てるんですか?
コガネ
アメには早すぎただけだ。
アメ
言おうとして、そこで辞めた。
黄金色に光る瞳が揺れている。
困ったように眉を下げて、 微笑んでいる。
コガネ
いつかは話せと託されていたんだけど、
話すタイミングを逃していたんだ。
コガネ
コガネ
アメ
アメ
適当なタオルで 髪を拭くコガネさんに促され、 椅子に座る。
ソファの感触が、 いつもより固く感じた。
俺すら知らない、 俺の能力。
どうして爺やは、 それを隠していたんだ?
コガネ
まず結論から話すけど、
驚かないでほしい。
コガネ
10歳なんだ。
アメ
いや、俺は15歳で……。
コガネ
そこで違いが生まれてるんだ。
コガネ
爺さんの名前を知らない。
アメ
知らない、ですけど……。
コガネ
──コガネ、だよ。
アメ
アメ