藍
…透真くん
藍
まだいたんだね
蒼氷
白菊さん…
藍
…っ
蒼氷
…白菊さん…?
言葉が出ない。
呼吸ができない。
どうして?
言う言葉はわかってるのに。
嫌いって。
たった3文字すらも言えない…
ここで彼を傷つけないと。
彼の人生を潰してしまう。
100のために1を切り捨てる。
覚悟はしていたはずなのに。
蒼氷
白菊さん、どうしたの?大丈夫?
藍
…
男子生徒A
あ〜あ、ざんね〜ん☆
男子生徒B
これで透真の人生終了〜☆
蒼氷
…は?
蒼氷
やっぱりお前ら、白菊さんに何か…
男子生徒A
白菊にさ、言ったんだよ
男子生徒A
白菊が透真を傷つければもう透真には何もしないって
男子生徒A
でも白菊はできなかった
男子生徒A
つまりは、そういうことだよな
蒼氷
…白菊さん、本当?
藍
…
白菊さんは無言で頷く。
蒼氷
…そっか
蒼氷
白菊さん、教室に戻ろう?
藍
え…
蒼氷
相手にしなくていいよ
男子生徒A
…本当に生意気だな
男子生徒B
生涯つきまとってやるから
蒼氷
…行こう
別に僕はどうなろうが関係ない。
ただ、僕の所為で周りを傷つけるのを恐れているだけ。
藍
…透真くん?
藍
ここ、教室じゃないよ
蒼氷
ここなら、我慢せずに泣けるでしょ
藍
え?
蒼氷
泣きたかったら泣けばいい
蒼氷
我慢する必要はないと思う
蒼氷
泣くのは悪いことじゃない
藍
…ごめんね
白菊さんの頬を透明な雫が伝う。
藍
私、もう生きるのやめようかな…
蒼氷
…
藍
みんなに迷惑かけてばかりだし
藍
いてもいなくても変わらないし
藍
それなら、いない方がましでしょ?
蒼氷
…否定も肯定もしないよ
蒼氷
僕はね、その人の人生を変えられる自信がないと生きろなんて言えないと思うんだ
蒼氷
じゃないと、生きろって口だけで
蒼氷
その人は地獄を見ることになって
蒼氷
…人の人生を変えるなら、相応の覚悟が必要
蒼氷
僕には君の人生を変えられる自信がないから
蒼氷
ただまあ、君が逝くなら僕も一緒に逝くよ
藍
…そっか
藍
ありがと、なんか元気出た
蒼氷
…あ、授業1時間サボっちゃった
藍
あ〜、透真くんいけないんだ〜
蒼氷
君の所為だよ
藍
人の所為にしたら駄目って習わなかった?
蒼氷
人の所為にしてないから大丈夫
藍
はぁ〜…私泣いちゃうわ
蒼氷
泣けば?はい、ハンカチ
藍
うわ酷っ
蒼氷
ハンカチ渡してるだけでも褒めてほしい
藍
わーすごいねー
藍
かっこいいねー
藍
天才だねー
蒼氷
棒読みじゃん
蒼氷
演技の勉強でもしたら?
藍
じゃあ私、透真くんが驚くような名女優になってあげるよ
蒼氷
ふ〜ん、楽しみにしておくよ
藍
そっちだって棒読みじゃん!
蒼氷
僕は男優目指すつもりはないからさ
藍
あ〜もう、絶対演技鍛えてやる!
蒼氷
頑張れ〜