テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
💌『君が書く文字だけで、僕は嬉しくなる』🌷
移動していた病棟は、少しだけ空気が違った。 窓の外の景色も、ベッドの配置も、全部少しずつずれている。
なのに、机の上に届いた一通の手紙だけが、 変わらない僕の世界と繋がっていた。
「なおきりさんへ」
封を開けると、えとさんの文字がふわっと目に入った。
なおきりさん。 今日もこっちはすこぶる退屈です。あなたがいないと、 冷凍庫のアイスココアが余ってしょうがないんだけど。どうしてくれるの。
そこから始まって、くだらない病院の出来事、看護師さんの小話、 そして最後に、少しだけ小さな字でこう書いてあった。
でも、やっぱり顔がみたいな。 元気でいてね。帰ってくるって、信じてるから。
読むだけで、喉の奥が熱くなる。 僕はすぐに、返事を書き始めた
🌟『好きって言葉は、まだ書けない』🍫
なおきりさんの返事は、折りたたんだ紙にびっしりと文字が詰まってた。
えとさんへ アイスココアの在庫はあと何本? 僕のいない間に飲みすぎないように。 検査は順調。でも、ちょっとだけ寂しいな。 君の声が聞こえない夜は、やっぱり静かすぎる。
それから、ふたりでやりたいこと、夏に話してた未来の計画をまたひとつ、ふたつ。 そして最後に、ちょっと照れたような字でこう書いてあった。
僕は、えとさんの声も笑い方も、ぜんぶちゃんと覚えてる。 だから、戻ったとき。変わらずそこにいてくれたら嬉しい。
その時こそ、ちゃんと……ね。
手紙を呼んでるだけなのに、心臓がどくんって鳴った。 「ちゃんと」って、なんだろう。
でもーーなんとなくわかる気がした。
しばらく会えないふたりは、する違わないように、ほんの少しずつ自分の 気持ちを紙にこえる。手書きの文字、にじんだインク、消せない言葉。 それがなおきりとえとを、繋いでいった。
🌿『ひさしぶり、えとさん』🌷
病棟の廊下に足を踏み入れた瞬間、僕の心臓が少しだけ跳ねた。 前より少しだけ空気が甘く感じるのは、あの手紙のせいかしれない。
🍫
えとさんがナースステーションの前で、ちょっと不自然に立ち止まった。
🍫
🌷
🍫
🍫
🌷
🍫
顔をそらしたえとさんの耳が、ほんのり赤い。 その仕草がずるいって、本人はたぶん知らない。
💞『紙じゃなくて、ちゃんと届く』🌷
病室に戻って、並んで座って、 他愛もない話をするーーそれだけで幸せって、なんて不思議だろう。
🌷
僕が言うと、えとさんはふいに目を細めて笑った。
🍫
🌷
🍫
照れくさくて、でもどこか満ちていくようなこの時間が、ずっと続けばいいのにって、本気で思った。
🌨️『最後に、これだけ言わせ』
僕は、すこしだけ体を前に出す。
🌷
🌷
えとさんの目がぱちぱちと瞬いたあと、ふっと笑ってーー そっと僕の指先を握った。
🍫