颯
はっはっ、ぁ…え……?
無くなった
颯
おれ、のっ█…が……?
何がなくなった?
██
颯!
血がダラダラと出て、痛くて痛くて叫びそうだったけど
ただ、それがなくなったという事だけに強く困惑した
大量に血が出て、多分血が出過ぎて目の前が白くもやがかって見えて……
気を失いそうになった時でも
それがなくなった
俺の大切がなくなった
その恐怖感と喪失感だけが残っていた
颯斗
ん…あたまいてぇ
ガンガンと頭をハンマーで殴っている時のような鈍痛が襲う
颯斗
ここは……
病院独特の消毒液の匂い
颯斗
病院か
上半身を持ち上げて、左腕を見る
颯斗
……
どこも痛くはない
鎮静剤か、それとも痛みがなくなるまで寝ていたのか……
颯斗
はぁ、ダル……
そう言えば、起きたらナースコールを押せばいいんだっけか
と思い、ナースコールを探すとすぐそばにあったので右手で押した
颯斗
……
ぼんやりと窓の外を見る
空は暗くなって、星が出ている
暗い部屋が月明かりで照らされる
深く息を吸う
鼻腔に消毒液の匂いが広がる
颯斗
……
かち、かち、と時計の秒針が動く音
颯斗
はぁ…
ドクン、ドクン、自分の心臓の鼓動
颯斗
…いきてる
生きてる、俺は今この瞬間存在している
生きてる、と実感しているとドアが開かれる
医者
斉藤さん、おはようございます
颯斗
…あぁ、おはようございます……?
医者
なんでここにいるか分かりますか?
颯斗
女に左腕刺されたから
医者
はい、そうです
医者
あなたを刺した女性は逮捕されました
医者
ですが、刺された左腕に後遺症が残っている場合がありますので診察をします
医者
大丈夫ですか?
颯斗
はい
診察が終わり、医者が部屋を出ていく
颯斗
はぁ…
左腕、指先に痺れ、多少の感覚麻痺、動かすのが少し遅れる
颯斗
……ま、利き手じゃなかっただけマシか
手を握ったり開いたりを繰り返す
大体時差は1秒程度
颯斗
……はぁ、もう寝よ







