柳瀬
あー
柳瀬
でも
柳瀬
了承してしまったから性虐待にはならないのか?
柳瀬
分からない
柳瀬
でも、これだけは言えるよ
柳瀬
あの時、妹を庇って良かったって。
冴
っ
柳瀬
妹が傷付かなくて良かったって。
柳瀬
あ、
柳瀬
一昨年、母さんが亡くなってから
柳瀬
荒れたって言ったけど
柳瀬
中3までは、暴力だった
柳瀬
高一からは妹を庇って性虐待
柳瀬
そして、もうずっと離さない為に
柳瀬
監禁されてた
冴
は?
柳瀬
監禁はされてたけど
柳瀬
家の中は隅まで移動出来た
柳瀬
父さんは、家にいなかった
柳瀬
いつでも抜け出せると思ってたけど
柳瀬
実際、そんな事はなくて
柳瀬
防犯カメラと盗聴器が家中に仕掛けられてた
柳瀬
……
柳瀬
そんな感じで
柳瀬
高一の1年間は、外に出る事さえも
柳瀬
高校に行く事さえも
柳瀬
許されなかった
柳瀬
もうずっと、外の空気を吸ってなくて
柳瀬
息苦しくて息苦しくて
柳瀬
息が出来なくて
柳瀬
だから
柳瀬
一度、抜け出したんだ
柳瀬
バレるとは分かっていても
柳瀬
玄関の扉を開けたんだ
柳瀬
するとね
柳瀬
父さんが目の前で立っていた
柳瀬
その後は
柳瀬
一日中、ずっとイかされて
柳瀬
嫌だと言っても「言いつけを守らなかった霧香が悪い。」と言われた
柳瀬
その次の日からは
柳瀬
さらに監禁が酷くて
柳瀬
足首におもり(?)を付けられた
柳瀬
さらに寝室から出てはダメと言われた
柳瀬
泣いて縋っても霧香の為と言って
柳瀬
許してくれない
柳瀬
外に出れないうえに
柳瀬
窓を開けるのもダメ
柳瀬
妹と弟達と話すのもダメ
柳瀬
と言われた
柳瀬
唯一の癒しを失って
柳瀬
もう何もかもが馬鹿らしくなって
柳瀬
自分の首を吊ったんだ
冴
!!
柳瀬
でも、死ねなかった
柳瀬
目を覚ましたら病院にいて
柳瀬
絶望した
柳瀬
死ねなかったんだって
柳瀬
でもそれ以上に
柳瀬
妹と弟を残して、死のうとしたことを
柳瀬
後悔した
柳瀬
もし、このまま死んでいたら
柳瀬
妹や弟を必死に守った自分が
柳瀬
馬鹿みたいだから
柳瀬
医者から状態を知る為に
柳瀬
質疑応答程度の診断をしよう
柳瀬
って言われたから検査とか行ったんだ
柳瀬
そしたら
柳瀬
過度なストレスと疲労が相まって
柳瀬
咽喉頭異常感症と不眠症と鬱病
柳瀬
って、診断された
柳瀬
どうしようかと思った
柳瀬
父さんが知れば
柳瀬
もっと監禁されると思った
柳瀬
そしたらね
柳瀬
父さん、心配してくれたんだ
柳瀬
まぁ、私じゃなくて霧香の方だったけど
柳瀬
でも、医者の人達が頑張ってくれたおかげで
柳瀬
父さん、監禁はせずに
柳瀬
ちゃんと高校に行かさせてくれた
柳瀬
でも、性虐待はまだ続いてる
柳瀬
行為されてる時に通報しようか迷った
柳瀬
でも
柳瀬
どこかで
柳瀬
父さんは、母さんがいた時の優しい父さんに戻ってくれるんじゃないか。
柳瀬
って
柳瀬
淡い期待をしてる
柳瀬
冴、どう思う?
柳瀬
こんな“俺”をちゃんと見てくれる?
冴
……
冴
最初は、可愛い女の子だと思ってた
冴
男だと知っても抵抗は無かった
冴
その話を聞いて
冴
希霧を助けたいと思った
柳瀬
………
冴
でも、希霧の家族の方針は、
冴
希霧が決めるべきだ
冴
希霧がもう、終わりにしたい
冴
と思うなら手助けするよ
柳瀬
………
柳瀬
……
柳瀬
…お…おれ……は…
冴
正直に話してみろ
柳瀬
…………
柳瀬
俺は
柳瀬
昔の父さんに戻ってほしいだけなんだ
柳瀬
ただそれだけなんだ
冴
………
柳瀬
………この状況は嫌だけど
柳瀬
昔の父さんに戻ってほしい
柳瀬
………
柳瀬
………昔の父さんに戻れるように
柳瀬
「“霧香”はもういない」って
柳瀬
自力で頑張ってみる
冴
……本当にそれで良いんだな?
柳瀬
………うん
冴
そうか
冴
じゃ、頑張れ
柳瀬
うん
柳瀬
話、聞いてくれてありがとう
柳瀬
少し軽くなったよ
冴
そうか