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梅雨が好きになった日

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梅雨が好きになった日

1 - 梅雨が好きになった日

♥

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2020年05月31日

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ザーザー

今日もしつこく雨が降る

梅雨は嫌いだ

普通の人は

じめじめするからとか

遊びに行けないからとか言うけど

俺は違う

それは

君が俺の前から

いなくなった季節だから───

────3年前のこと

俺がクラスで浮いていたこの頃

君は話しかけてきた

放課後、だったかな

まぁーた雑用頼まれたんですか?

晴希

……

しょーがない、手伝いますよ!

晴希

…頼んでない

だって、この量1人でやるんですか?

晴希さんはお人好しだから断れなかったんですよね?

晴希

お人好しな訳ないだろ

私は、晴希さん優しいと思います!

晴希

お前みたいな変わったやつは初めて見たな

ほんとですか?!

晴希

褒めてない

出会いは、こんな感じだったな

それから、俺は君と よく話すようになったね

君はよく声をかけてくれたから

ある日の帰り道、君になんで敬語で話すのか聞いてみたら

お母さんが敬語で話す人だったんです

でも、お母さんは5年前に亡くなってしまって

お父さんがずっと落ち込んでいたので

お母さんみたいに話して元気づけてるんです

気休めにしかなりませんよね

君は強いと思った

そのとき、えへへっ、と乾いたように笑った君に

初めて、愛しい、と思った

そうだ、晴希さん!

私の名前、覚えてますか?

晴希

えっ、と?

ひどいなぁ、私は晴希さんの名前覚えてるのにー!

ほんとは知ってた

けど、名前を呼ぶのは気恥ずかしくて

優雨(ゆう)です!

お母さんが付けてくれたんです!

お母さんは雨が大好きだったので!

雨は優しく私たちに降ってくれる、かけがえのない存在なんだって

晴希さんの名前の由来は?

晴希

さぁ……?

えー

あっでも、私と晴希さん天気に関する名前が入ってますね!

晴希

ほんとだ

私は雨、晴希さんは晴れ

なんだかバランスいいですね!

晴希

そうかーー?

私はそう思いますよー!

ある日、急に君から電話がかかってきた

通話終了

通話
00:43

晴希さんですか?

晴希

そりゃそうだろ

今すぐに会えますか?

晴希

今すぐ?

はい

晴希

どこで?

海に来てください!

駅の近くのところです

晴希

わかった

晴希

すぐ行く

タッタッタッ

海に着いたら君はもう来ていた

今日の空みたいな綺麗な色のワンピースを着て

あっ、晴希さん!

急かしてしまってすみません

晴希

どうしたんだ?

私、今日この街を離れるんです

晴希

えっ…?

急な話でごめんなさい

お父さんの実家に移ることになったんです

晴希

そうなのか

はい

晴希さんにはどうしてもお礼が言いたくて

晴希

俺に感謝することなんてないだろ

あります!

晴希さんといる時間、とっても楽しかったです!

晴希

そんなこと…

優雨ーー!!そろそろ電車が来るぞ!

ごめんなさい、ほんとはもっと話したかったんですけど…

ありがとうございました!!

そう言って笑った君は

生まれてきてから見てきた何よりも

綺麗で、美しかった

俺はずっと彼女を乗せた電車を見送っていた

ザーザァー

晴希

雨だ

帰ろうと思うが、足が動かない

それから、後悔の波が襲ってくる

優雨、と呼べなかったこと

好きだ、と伝えられなかったこと

最後に、ありがとう、と言えなかったこと

晴希

どうして、どうして俺は…!

俺の涙を慰めるように

雨は優しく降っていた

久しぶりに、昔を思い出してたな

君は今…元気だろうか

そういえば、君がいなくなった日も

3年前の今日だったな

なんだか無性に外に出たくなって

雨が降っているにも関わらず、 俺は傘も持たずに外に飛び出した

結局海に来ちゃったな

懐かしいな

俺もちょっと未練がましい奴だ

ちょっと、傘もささずに何してるんですか?

後ろから女の声がする

晴希さん!

まさか……

後ろを振り向くと優雨が立っていた

晴希

え、なんでいるんだよ?

優雨

こっちに戻ってきたんです

優雨

懐かしいですね、ここ

晴希

そうだな

晴希

雨、止んだな

優雨

今日の雨はなんだか気持ちよかったですね!

晴希

どういう、

優雨

あっ、晴希さん!

優雨

虹です!

晴希

おぉ…綺麗だな

俺の横で、ずっと話したかった人が 笑ってる

俺も、少し勇気を出そう

晴希

優雨

晴希

話が、あるんだ───

晴れ、雨、虹

いろんな天気が

俺を応援してくれている────

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