一覧ページ

LINE１３４６

第1話 - あ

2023年11月26日

#スカッと

タナカトシキ

タマミ

これ、お父さんのLINEだよね

タカヤ

ん…？もしかして、タマミか？

タマミ

そうだよ。三年ぶりだね

タカヤ

なんで俺のLINEを知ってる？三年前お前は１１歳で、スマホなんて持ってなかったろう

タマミ

お母さんのスマホから見つけたんだよ

タマミ

お父さん、お母さんから聞いてるよ

タマミ

養育費を払わない、子供との面会も断った、

タマミ

娘の私を捨てた最低の父親だってね！

タマミ

ふざけんな！お陰でお母さんは女手一つで必死に働いてるんだよ！

タマミ

それでもうちは貧乏で、私高校に行けるかもわかんないんだけど！さっさと養育費払えよ！

タカヤ

そう言われてるのか…悪いが、養育費は払わない

タカヤ

俺のことは最低親父だとでもなんとでも思ってくれたらいい

タカヤ

その代わり、慰謝料も請求しなかったしな

タマミ

なんでよ！そりゃ確かに浮気したお母さんは悪いよ

タマミ

でも私には関係ないじゃん！養育費は子供の権利じゃん！

タマミ

私が高校に行けなくてもいいの！？

タカヤ

あぁ。別に構わない

タマミ

は！？それが親の言うこと！？

タカヤ

話はそれだけか？今は仕事中なんだ。手を煩わせるな。それじゃ、俺のことは忘れてくれ

タマミ

ちょっと待ってよ！私達同居してた頃は仲良くしてたじゃん！

タマミ

忘れられるわけないじゃん！無責任なこと言わないでよ！

タマミ

なんで私を捨てたのよ！お父さん！！

～数日後～

タマミ

おいクソ親父！さっさと養育費払わないと、わかってるんだろうな！

タカヤ

今度はなんだ？

タマミ

あんたが養育費払わないで娘を捨てて、娘が高校に行けなくても構わないって言い放った

タマミ

最低親父だってこと、会社にばらしてやるから

タマミ

会社にそうやって、電話やメールでクレーム入れてやる。取引先にもね

タカヤ

おい馬鹿、何やってんだ！

タカヤ

会社は関係ないだろ！巻き込むな！

タマミ

そうだよねーあんたの信用にかかわるもんね

タマミ

今すぐ払ってくれたら、こんなことしないよ？

タカヤ

…それでも、養育費は払わない

タマミ

はぁ？ここまでしてまだわかんないわけ！？

タマミ

ふざけんな！あんたは私の父親でしょうが！

タカヤ

俺は父親じゃない

タマミ

へ？

タカヤ

養育費なら、本当の父親に頼め

タマミ

ちょっと待ってよ…何言ってるのよ

タカヤ

これは、お前には言わない筈だったんだ

タカヤ

タマミ、お前は俺の子じゃない。お母さんの、浮気相手の子なんだ

タマミ

そんな…嘘でしょ。そんなの聞いてないもん！

タカヤ

本当だ。信じないなら、DNA鑑定の結果も見せる

タカヤ

お母さんは、こんなに昔から浮気をしていたんだ。本人も認めた

タカヤ

だから養育費は払わない。そう決めたはずなのに、

タカヤ

あいつは俺が悪いように吹き込んでいたんだな

タマミ

で、でもさ、仮にそうでも１１年間ずーっと親子としてやってきたわけでしょ

タカヤ

そうだな

タマミ

なら、私のこと助けたいと思わないの？

タマミ

父親としての情はないの！？

タカヤ

情はあるよ

タカヤ

情があるからこそ、お前のことを考えて慰謝料は請求しなかったし、

タカヤ

お前が浮気相手の子だという事実も言わなかった

タカヤ

何も知らずに俺のことを恨むなら、その方がいいと思ってた

タカヤ

だが、会社まで巻き込むなら話は別だ

タマミ

情があるんなら、養育費払ってくれたっていいじゃん！

タカヤ

だから、今どこにいるかもわからない本当の父親に頼め。そいつこそ無責任だろう

タカヤ

俺は自分の子じゃないお前を１１年間も育てた。充分だろう

タカヤ

お互い、忘れた方がいい

タマミ

養育費払ってないのは事実でしょ！

タマミ

なら、やっぱり苦情を会社に送るから

タカヤ

それなら俺は、養育費を払わない理由を周りに説明しなきゃな。それも、鑑定結果という証拠付きで

タカヤ

お前が本当の子じゃないということは、お前への影響も考えて誰にも言わなかったんだ

タカヤ

もし俺がした説明が広まって、お前の学校にまで届いたらどうする？

タカヤ

そしたら、友達からどんな目で見られると思う？

タマミ

…何それ、娘を脅すの？

タカヤ

お前は娘じゃない。それに、先に脅してきたのはお前だろ

タマミ

…ねぇ、本当に助けてくれないの？

タマミ

私にとって、父親はやっぱりお父さんだけなんだよ

タカヤ

悪い。お前も被害者だということはわかってる

タカヤ

だが、恨むなら本当の両親を恨め。まして、会社を巻き込むようなことをするな

タカヤ

そんなことをしたら、お前は純粋な被害者ではなくなるんだ

タカヤ

俺のことは忘れてくれとしか言えない。このLINEもブロックする

タマミ

お父さん！

タカヤ

じゃあなタマミ…できれば、幸せになれよ

～数時間後～

ヨウコ

ちょっとタカヤ！

ヨウコ

タマミの出自のことは、タマミ本人には言わないって言ったじゃない！

タカヤ

君がタマミに、俺を養育費を払わない最低男だと吹き込んだのが悪いんだろ

タカヤ

タマミは俺の連絡先を見つけて苦情を言ってきた

タカヤ

このままだと俺の仕事にも悪影響を及ぼしそうだったから、

タカヤ

タマミを納得させるために、事実を伝えるしかなかったんだ

タカヤ

なぁ、どうしてタマミにあんなこと吹き込んだんだ？

ヨウコ

だって…あなたに離婚されて、両親にも援助しないって言われて、

ヨウコ

タマミしか私のそばにはいなくなった…だから、あなたを悪者にして、

ヨウコ

味方になってほしかったのよ！

ヨウコ

それなのに、今のタマミは私と口も利かないで、

ヨウコ

軽蔑と憎しみのこもった目で見てくるのよ…

ヨウコ

それがどれほど辛いことか、あなたにわかる！？

タカヤ

自業自得だ

タカヤ

俺もタマミに、恨むなら本当の両親を恨めと言ったからな

ヨウコ

は！？なんでそんな余計なこと言うのよ！

タカヤ

だってそうとしか言いようがないからな

タカヤ

被害者は俺とタマミなんだ。お前が被害者面するな

タカヤ

じゃあな

～数日後～

ヨウコ

ねぇタカヤ！タマミがどこにいるか知らない！？

タカヤ

知るわけないだろ。何があったんだ

ヨウコ

タマミが家出しちゃったのよ！

ヨウコ

あれから親子喧嘩が絶えなくて、思わず私が

ヨウコ

『あんたが生まれてきたせいよ。あんたなんか産まなきゃよかった』

ヨウコ

って言って叩いちゃったら、それからタマミがいなくなって…

タカヤ

何やってるんだよお前…母親として言っていいことも悪いこともわからないのか？

タカヤ

完全に逆恨みじゃないか

ヨウコ

うるさいわね！それより、一緒にタマミを探してよ！

タカヤ

なんで関係ない俺が？俺はお前たちのことは早く忘れたいんだよ

ヨウコ

関係なくないでしょ！あなたのことがきっかけなんだから！

ヨウコ

元はといえば、あなたが養育費を払わないからこうなったのよ！

タカヤ

は？俺のせいかよ

ヨウコ

そうよ、あなたのせいよ。責任もって探してよ！

タカヤ

なんだよそれ…いずれにしろ仕事が忙しいし、探すのは無理だ

ヨウコ

あなた、タマミのことが心配じゃないの！？

タカヤ

あいつなら大丈夫だろ

ヨウコ

ずっと育ててきたのに、いくら血の繋がりがないからってここまで冷たくなるなんて！

ヨウコ

薄情な人ね！！

タカヤ

お前がそれを言う権利があると思うのか？

ヨウコ

それは…

タカヤ

俺をずっと騙してきて、タマミにも言ってはいけないことを言って手を上げたくせに

タカヤ

とりあえず、考えられるのは友達の家

タカヤ

それか、お前の両親の家くらいだな

タカヤ

頑張って探せよ

～翌々日～

ヨウコ

タマミ、やっぱり両親の家にいたわ…

タカヤ

そうか。見つかって良かったじゃないか

ヨウコ

ちっともよくないわよ…

ヨウコ

両親、托卵のこともあなたが養育費を払ってないことも知らなかったけど、

ヨウコ

全てタマミから聞かされて、激怒してるのよ

ヨウコ

それで、『そこまでのことをしていたなんて。タマミはこのまま私達が引き取る』

ヨウコ

『お前は母親失格だ。完全に縁を切る』って言われたの…

ヨウコ

タマミには『勉強を頑張ることを条件に高校まで行かせてやる』って言ってた

ヨウコ

だから、あの子完全に両親の家から帰らなくなっちゃったのよ

タカヤ

それは良かった

タカヤ

タマミは自分の力で、助けてくれる大人を見つけられたんだな

タカヤ

常識的なあの人たちなら、タマミを立派に育ててくれるだろうし安心だ

タカヤ

あぁでも、お前が育ったくらいだからわからないか

ヨウコ

そんなこと言わないでよ！

ヨウコ

私、離婚されて娘にも両親にも縁を切られて、

ヨウコ

一人ぼっちになっちゃった…

タカヤ

浮気相手がいるじゃないかｗ

ヨウコ

彼にはもうとっくに逃げられちゃって、連絡も取れないわよ！

タカヤ

いずれにしろ、タマミがお前の元にいないなら、もう容赦する必要がないな

ヨウコ

ちょっと、何の話？

タカヤ

決まってるだろ。慰謝料だよ

タカヤ

お前に薄情だと罵られた俺でも、タマミのことを考えて請求しないだけの

タカヤ

情はあったんだ。だが、今なら思う存分請求できるな

ヨウコ

は？それはもう、請求しないって決まってたじゃん！

ヨウコ

今更請求なんて…もう時効よ！

タカヤ

浮気がバレて、三年以内なら慰謝料請求できるんだ

タカヤ

ギリギリだが、まだ三年経っていないからな

ヨウコ

待ってよ！私ただでさえ生活がカツカツなのよ！

ヨウコ

あなたに離婚されるまで働いてなかったんだから！

ヨウコ

それなのに、慰謝料なんて払えないわよ！

タカヤ

知るか。１１年間俺を騙してたこと、許さないからな

タカヤ

そうそう、逃げたっていう、お前の浮気相手にも当然請求する

タカヤ

良かったなぁｗ愛する浮気相手と、

タカヤ

また連絡が取れるようにしてやってもいいぞｗ二人仲良く払ってくれｗ

ヨウコ

ま、待ってそれだけはやめて！彼には迷惑かけたくないの！

タカヤ

なんでだ？お前を捨てて逃げた無責任野郎に、天誅を食らわしたい気持ちはないのか？

タカヤ

あぁ…浮気相手が既婚者だからか

タカヤ

奥さんにバレたら、奥さんからも慰謝料請求されるから必死に止めてるんだろ

ヨウコ

そうよ…この上奥さんへの慰謝料なんて、とても払えない

タカヤ

そうだろうな。俺はタマミへの影響を考えて、

タカヤ

浮気相手の奥さんにも知らせようとは思わなかった

タカヤ

だが、今は違う。配偶者を裏切るということが

タカヤ

どれほど罪深いか、思い知れ

タカヤ

それと、お前が薄情だと言った俺が、どれほどタマミへの情で

タカヤ

我慢してきたかも、な

ヨウコ

もう充分思い知ったから！反省してるから！！

ヨウコ

だから許して、お願い！！

タカヤ

反省してるから何だ？反省したからって、騙されていた俺の１１年間は戻らないし、

タカヤ

タマミの心の傷も治らないんだよ

～後日談～

タカヤ

その後、俺はヨウコと浮気相手に改めて慰謝料を請求

タカヤ

浮気相手もまた奥さんに離婚され、

タカヤ

ヨウコと共に奥さんからも慰謝料請求されました

タカヤ

ヨウコは両親に泣きつくも、絶縁されているのでもちろん助けてもらえず、

タカヤ

慰謝料支払いのために借金を作ってしまい、その借金の返済が追い付かず、

タカヤ

とうとう夜の店で働き出したそうです

タカヤ

ヨウコの両親は、改めて俺に謝罪をしに来てくださいました

タカヤ

何度も頭を下げる二人からは、タマミが毎日勉強を頑張っていることと、

タカヤ

タマミもまた、俺に謝りたいと言っていることを聞かされました

タカヤ

俺は、今は会わないことがお互いの為であると思っているので、

タカヤ

タマミからの謝罪を断りました

タカヤ

俺のタマミに対する心境はやはり複雑ですが、いつかは整理がついて、

タカヤ

穏やかな気持ちで会える日が来ればいいと思っています

この作品はいかがでしたか？

0件

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう！

タナカトシキ

プロフィール

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

LINE１３４６

第1話 - あ

作者の他の作品すべて見る

#スカッとの新着小説
一覧

関連するタグ

LINE１３４６

第1話 - あ

作者の他の作品すべて見る

#スカッとの新着小説一覧

関連するタグ

#スカッとの新着小説
一覧