昔、あるところに1軒の茶店があった。
その茶店は、関所が近いため、
行きかう通行人で繁盛していた。
もちろん、場所だけが理由ではない。
この店は老婆が1人で切り盛りしていたのだが、
この老婆が働き者のうえに、気立てもよかったため、
ひいきしてくれる人たちがたくさんいたのである。
薬売り
薬売り
今日も、なじみの薬売りが、
店先の縁台に荷物をおろしながら声をかけた。
茶店のおばあさん
茶店のおばあさん
薬売り
薬売り
老婆のいれてくれたお茶をおいしそうに飲みながら、
薬売りは笑顔で答えた。
医療が発達していない時代、薬は、
病気を治すための最も効果的な手段だった。
ただ、ドラッグストアなどは当然存在せず、
薬を持って行商して歩く薬売りは、庶民だけでなく、
豪族や武家の間でも、とても重宝されていた。
中でも、この薬売りは、
どんな病にも対応した薬を売ってくれると評判で、
この薬売りに助けられた人間も、少なくはなかった。
それから3カ月後、
ひとしきり江戸で薬を売り歩いた薬売りは、
足どりも軽く帰途についた。
______また、あの茶店の、
婆さまの元気な顔を見ていくか。
土産話もいっぱいできたし、さぞ喜んでくれることだろう。
ところが、どうしたことだろうか。
にぎわっていた茶店が、ひっそりしている。
働き者の老婆が、毎日、隅々まで
きれいに掃除していたはずの店内にも、
なぜかうっすらとホコリがたまっている。
そのせいか、店全体がどんよりと暗く見えた。
店先の縁台には、老婆がうなだれて座っている。
薬売り
薬売り
薬売りは、驚いて駆け寄った。
茶店のおばあさん
茶店のおばあさん
老婆の言葉は、なぜか力なく感じられるものだった。
薬売り
薬売り
薬売り
昔の履物と言ったら、下駄か草履が基本。
これがなければ、外を歩けない。
傘も同じく、雨の日の必需品である。
茶店のおばあさん
薬売り
茶店のおばあさん
茶店のおばあさん
茶店のおばあさん
茶店のおばあさん
茶店のおばあさん
茶店のおばあさん
茶店のおばあさん
老婆は、目に涙をためて、ため息をついた。
茶店のおばあさん
茶店のおばあさん
薬売り
老婆の話を聞き終わった薬売りは、にっこり笑って答えた。
薬売り
薬売り
薬売り
薬売り
薬売り
薬売り
薬売りのおかげで、老婆はすっかり元気を取り戻し、
茶店はまた繁盛した。