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大学の出口が見えてくる 康平は歩きながら考える
康平
思い返してみても 思い当たらない
名前で呼んだ 一緒に帰った 少し話した どれも,普通だ 少なくとも,康平にとっては。 康平はちらりと蓮音を見る 蓮音は前を向いたまま, 唇を噛んでいる
康平
呼ぶ。 自然に,何のためらいもなく。 蓮音の肩が ほんの少しだけ揺れた
蓮音
康平
言葉が続かない 康平は, 自分でも理由が 分からないまま言った
康平
蓮音は足を止めないまま答える
蓮音
即答だった
康平
それ以上,聞かない 聞けないというより, 聞く必要がないと思ってしまった 嫌なら言うだろう 本当に無理なら, 距離を取るだろう 康平はそう信じている それが優しさだと思っている
校門の前で,蓮音が立ち止まる
蓮音
康平
康平は当たり前のように言った
康平
蓮音は一瞬, 何か言いかけてやめた そして,小さく頷く
蓮音
去っていく背中を 見送りながら, 康平は胸の奥に残った違和感を 軽く振り払った
康平
そう結論づける 康平は自分が何かを 壊しているなんて, これっぽっちも 思っていなかった 触れていない 縛っていない 引き止めてもいない
康平
その「大丈夫」が, 誰のためのものなのかも考えずに。