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おままごとのような生活から1週間が経った
翔平さんに渡されたこの可愛らしいパジャマには未だに慣れない
と言うか頭のこれは何なんだろう
雅
(いい加減日本に帰りたいなぁ)
雅
(翔平さんは練習しに出掛けてるし、)
雅
(今のうちに何とか脱出…ん、?…)
雅
そう言えば、この部屋って大きい窓が一個だけあるよね、
雅
(高さは結構ある)
雅
(でもロープとか耐久性のあるものを使えば降りれるんじゃ、?)
思いついてからは行動が早かった
手先には自信がある
カーテンや部屋にある道具で滑車を作る
この方法なら力のない人でも1トンを持ち上げることが出来る
足を怪我してるので慎重に作っていく
ーーー
雅
後は石鹸で滑りを出して…、
雅
出来た…、
雅
ちょっと時間が掛かっちゃったけど、これで逃げれる…!
ガチャッ
ヒュゥー
風が心地よい
雅
…、
雅
さよなら
雅
お人形さん
雅
さよなら、
雅
…翔平さん…、
私は窓に身を乗り出した
大谷
何…してんの…?
雅
…‼︎ッ
雅
…何で、…翔平さんが…
大谷
早めに終わって帰ってきたら物音が聞こえるし、
大谷
窓を開ける音で走って来たんだよ
大谷
ねぇ何それ
大谷
また逃げようとした?
大谷
ねぇ何で分かってくんないの
大谷
どうしてそんなに嫌がるの
大谷
ねぇ何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何でなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
大谷
僕が嫌いだから?嫌だ嫌だ何で嫌うの僕がいや?僕、が悪い?僕が。ぼく、おれ、俺が。俺のせい?
大谷
俺を置いてくの?
大谷
許さない
大谷
許さない許さない許さない許さない嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ
大谷
殺す
大谷
殺してやるッッ!!!!
大谷
お人形さんなら、
大谷
お喋りする口も、
大谷
逃げようとする脚も、
大谷
こんなの作る手も、
大谷
真っ赤なお腹の中も、
大谷
みんなみんなみんな要らないよね、?
大谷
ねぇ、そうでしょ、?
大谷
そうだよね、?
大谷
なら、
大谷
俺が全部取り除いてあげる、
雅
…、
雅
翔平さん、
雅
私はお人形さんじゃないの
雅
脆い陶器の身体じゃないし
雅
傷付いたら修理して直す事も出来ない
雅
ずっとおんなじ姿な訳じゃないし
雅
感情だってある
雅
そんなにお人形が良いなら他の女の子をあたってください
雅
私はおままごとに付き合えない
大谷
やだ。
大谷
嘘だ、
大谷
待ってよ、
大谷
ねぇ行かないで…ガタガタッ
大谷
お"ね"がい"だか"ら"ぁ"ッ グズッ
大谷
ごめ"ん"ッ、な"さ"い"ぃ"…ッ!ポロポロ
大谷
や"だよ"ぉ"ッ…、グズッ
大谷
置いてかないで、ヒック…置いてかないでよぉッ…ヒック…
初めて見た彼の泣いている姿
私が思っていたより彼はずっと子供だった
さっきまで逃げる気でいた
でも、
何だかそれは正解じゃない気がする
雅
…翔平さん、
大谷
グスッ…ゥ、ウッ、ヒック…ッ、グズッ…、ヒクッ、
雅
泣かないで、ナデナデ
雅
本当に私を愛してくれていたのは分かります
雅
ありがとうございました
雅
でも、貴方は囚われすぎたんです
雅
お人形さんは確かに都合の良い存在です
雅
だけど、本当にお人形さんみたいな女の子なんてどこにも居ません
雅
女の子は皆んな、そんな都合の良い存在じゃないんです
雅
貴方も同じ。
雅
貴方は意地悪で傲慢。
雅
とても王子様にはなれない
雅
お互い完璧じゃないんです
雅
それでも好きになっちゃうのが恋なんです
雅
だから、
雅
今の私をちゃんと見てください
大谷
…、?クルッ
雅
ふふ、
雅
涙で顔がぐちゃぐちゃです
大谷
(笑ってる…、)
素のこの子の笑顔を初めてちゃんと見た気がする
何だか
胸がドキドキしてるんだ