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嫌われてるはずの義理の弟(Dom)に面倒を見られる

第16話 - 2日目　前半

2023年10月21日

#BL

#創作BL

北

内原圭悟

翔、起きろ

内原翔

んぅ…

内原圭悟

あと10分で出るぞ

内原翔

うん…起きる

目を擦りながら体勢を起こした。

内原翔

圭悟、起きた…

内原圭悟

ん？

内原翔

褒めてくんねーの…？

内原圭悟

！

内原圭悟

えらいな

内原翔

ん…

内原圭悟

は、かわい

内原翔

！

内原翔

あれ、俺、何言って…

内原翔

間違えたっ！！

内原翔

頭撫でるな！！

内原圭悟

素直じゃないな、翔くん

内原翔

う、うるさい！

突然、ピンポーンとチャイムが鳴った。

内原翔

あ、志摩と春先輩

高木春

おはよう

多田志摩

バレないようにみんなで行こうぜー

内原翔

あ、うん、すぐ用意する！

朝食会場

安達先生

おい、お前らビリだぞ

高木春

す、すみません

俺以外の3人がそそくさと席に着く。

安達先生

……

内原翔

(なんか安達先生が見てくる？)

安達先生

お前…派手にやられたな

内原翔

？

内原翔

なんのことですか？

安達先生

いや、なんでも

多田志摩

おい翔、早く来い

内原翔

あっ、うん

1時間後

安達先生

じゃあこの後移動なので、10時にホテルのフロント集合です

安達先生

くれぐれも遅れないように

多田志摩

おい、鍵

内原圭悟

ああ

みんながゾロゾロと移動する中、圭悟と志摩がコソコソと鍵を渡し合っていた。

多田志摩

あー、俺の幸せの時間が終わった

内原翔

悪かったな！
隣が俺で

多田志摩

お前も仲直りしたんだろ？

内原翔

へ？

多田志摩

あの腹黒弟くんと

内原翔

ま、まぁ…

多田志摩

告られた？

内原翔

！？

内原翔

な、なんで、知って…！！

多田志摩

やっぱり

多田志摩

やるな、あいつも

内原翔

お前、あいつが俺のこと好きだって知ってたのかよ！

多田志摩

いや気づかねー方がやばいだろ

多田志摩

あんな独占欲剥き出しにされてよ

内原翔

だって、パートナーだから束縛されてるのかと思ってたし…

内原翔

俺がSubだからそうなんだって

多田志摩

で？

多田志摩

そうじゃないって知ってどう思ったんだよ

内原翔

それは…

内原翔

まあ…悪くないっつーか…

多田志摩

ふーん、嬉しかったんだー

内原翔

だ、だって今まで嫌われてるって思ってし！

内原翔

俺は仲良くしたかったんだから、そりゃちょっとは嬉しくなるだろ！

多田志摩

あー、はいはい

多田志摩

わかったからもう惚気はいいよ

内原翔

お前が言わせたんだろ！

そろそろ出発するとなって、安達先生がバスに乗ってきた。

安達先生

2人とも今日このバスな

高木春

はい

内原圭悟

はい

内原翔

ひっ！！

多田志摩

春！

高木春

あ

内原圭悟

…

圭悟を見つけて思わず手のひらで顔を隠した。

内原圭悟

…春先輩、酔いやすいから窓側がいいんですよね

高木春

え？うん

内原圭悟

安達先生、俺も酔いやすいんで多田先輩と席交換してもいいですか？

安達先生

ああ、いいぞ

内原翔

え！？

内原翔

(圭悟と隣！？)

多田志摩

お前！ナイス！！

結局なぜか圭悟は窓側に座らず、俺窓側に座らせた。昨日あんなことを言われたせいで、逃げ場のない状況に追い込まれている。

内原翔

(ダメだ…鼓動がうるさい…！)

内原圭悟

意識してんの？

内原翔

！！

内原翔

そ、そりゃ…するだろ…

内原圭悟

ふーん

不意に圭悟の手が俺の手に触れた。そのまま手のひら同士が合わさって、恋人繋ぎにされる。

内原翔

なにっ…

内原圭悟

誰も見てない

内原翔

そう言う問題じゃ…！

内原翔

(ドキドキしすぎて、心臓やばい…！！)

多田志摩

春、乗り物酔いしやすかったんだな

高木春

うーん、ちょっとだけね

高木春

だから寝てもいい？

多田志摩

えっ、ああ、いいよ

多田志摩

(本当は話したかったけど…春の寝顔見れるしいいか)

高木春

ありがと

そう言って春は俺の肩にこてんと頭を乗せて目を閉じた。

多田志摩

！？

多田志摩

(なんだこれっ…めちゃくちゃ幸せ！)

多田志摩

(一生このままでもいい…)

2時間後

安達先生

もう着くから、寝てる人起こせよー

高木春

ん…

多田志摩

あ、起きちゃった？

多田志摩

もうすぐ着くって

高木春

いっぱい寝ちゃったな…

多田志摩

春、確認だけど、昨日バスで寝てないよな？

高木春

ん？

高木春

行きは先生が流れ説明してくれてたからずっと起きてたよ

多田志摩

だよな！！
よかったー

多田志摩

(内原に寄りかかって寝てたらどうしようかと思った…)

高木春

あと多田といるとよく眠れる

高木春

なんでだろ

多田志摩

えっ

多田志摩

(Subは信頼するDomのそばだと寝つきが良くなるって、本に書いてあった)

多田志摩

(俺のこと信頼してくれてるってこと…？)

多田志摩

(やばい、嬉しい)

安達先生

着いたぞー荷物全部持てよー

多田志摩

行こう、荷物俺持つよ

高木春

え？別に自分で

多田志摩

いいから

内原翔

ハイキングきついなー

内原翔

俺体力ないし

多田志摩

そーだな…
春も体力ないから心配だ

内原翔

俺の心配はないのかよ

笹原先生

じゃあ、それぞれのタイミングで水分補給するように

笹原先生

俺は一番後ろからついていくから、前の人と距離開かない様に着いていけよ

列がゾロゾロと動き出して、ハイキングが始まった。

笹原先生

内原は安達先生について、一番前に行ってくれ

内原圭悟

はい

笹原先生

俺と高木は後ろな

高木春

わかりました

笹原先生

結構坂きついな…

笹原先生

高木は大丈夫か？

高木春

はい…なんとか

高木春

俺体力ないんで、もし遅かったら置いていってください….

笹原先生

安心しろ…

笹原先生

俺もわりと限界に近い…

笹原先生

(ペース早くないか…？
安達の体力馬鹿め！)

高木春

この辺、特にぬかるみおおいです、ね

笹原先生

そうだ、マップにも要注意って書いてあったから、気をつけて

高木春

は、は…すみません、ちょっと休憩しても…？

笹原先生

大丈夫か？

高木春

あ、やばいかもです…めまい、が

笹原先生

！？

笹原先生

あぶない！！

そう口にした時にはもう遅かった。めまいでバランスが取れなくなったのが、高木は足を踏み外し、そのまま崖から転げ落ちる。

笹原先生

高木！！

俺は手を伸ばした。

多田志摩

！

内原翔

どうした？

多田志摩

いや、なんか寒気が

内原翔

こんな暑いのに？

多田志摩

…だよな

男子生徒

安達先生！！！！

安達先生

おー、なんだ？

男子生徒

笹原先生が崖から落ちたって！！

安達先生

！！

男子生徒

あと生徒も一人！！

安達先生

…やばいな

安達先生

内原、すぐそこの広まってるところで全員待たせてくれ

安達先生

あと人数確認も

安達先生

そしたら中盤にいる青山先生と待っててくれ

内原圭悟

わかりました

安達先生

じゃあ、行ってくる

内原圭悟

安達先生！

安達先生

なんだ

内原圭悟

…落ち着いて行動してくださいね

安達先生

はっ

安達先生

大人をなめんなよ、ガキ

内原圭悟

！

内原圭悟

(あの人本性やばそ…)

笹原先生

いって…

高木春

ごめんなさい！
俺のせいで…

笹原先生

大丈夫、気にすんな

間一髪、俺の手が高木に届き、ゴロゴロと茂みを転げ落ちたが、負傷したのは俺だけで、高木は何も怪我はなかった。生徒に怪我がないだけで、本当によかった。

笹原先生

それより圏外なのがな…

高木春

助け呼べないですよね…

転げ落ちたその先で、適当に洞穴を見つけて入った。急に降ってきた雨はかろうじてしのげる。

笹原先生

雨も降ってるし、こっから出れそうにないしな…

笹原先生

まぁ、さすがに誰か来るだろ

高木春

そうですよね

高木春

前向きに考えましょう

冷静を装っているが、かなり不安で仕方ない。高木はもっと不安なはずだ。

笹原先生

寒いだろ。
ウインドパーカー着ていいぞ

高木春

えっ、いいんですか

高木春

笹原先生は…

笹原先生

俺は暑がりだから大丈夫

高木春

ありがとうございます

30分後

笹原先生

高木、大丈夫だからな

高木春

すみません…俺のせいで

笹原先生

泣きそうな顔するな

笹原先生

これ食べるか？

高木春

パン？

笹原先生

食べ物を持ってるのは、先生の特権だからな

高木春

いただきます…！

笹原先生

なぁ…高木

高木春

？

笹原先生

答えたくなかったらいいんだ

笹原先生

その…高木はSubか…？

高木春

！

高木春

なんで、それを…

高木春

もしかして、あいつが…！

笹原先生

ああ、いや！

笹原先生

誰かに聞いたわけじゃないんだ

笹原先生

ただなんとなく、そんな気がして

笹原先生

(安達がラーメン屋で意味深なこと言ってたからまさかと思ったが…高木だったか)

笹原先生

俺の友達もSubなんだ

笹原先生

大変だろ

高木春

あ、いえ…

高木春

パートナーがいるんです

笹原先生

そうか！
いいことだな

高木春

いや、それが…

高木春

薬飲まなくてよくなったの、最近で

高木春

笑っちゃいますよね

笹原先生

そうなのか？

高木春

はい

高木春

プレイすればいいってわけじゃないんです

高木春

自分は何を一番望んでいるのか

高木春

それを把握して、パートナーから提供してもらわないとダメなんです

笹原先生

…そうなんだな

笹原先生

(自分は何を望んでいるのか、か)

笹原先生

(考えたこともなかったな)

高木春

例えば支配されたいとか、尽くしたいとか…

高木春

そういう欲求の種類があるんです

笹原先生

そうか

笹原先生

俺の友達はどうなんだろうな

高木春

でも少しパーソナルな部分なので、聞かれるのが嫌な人も多いはずですよ

笹原先生

確かにそうだな

笹原先生

高木も嫌か？

高木春

……俺は

高木春

笹原先生になら言ってもいいかな

笹原先生

えっ

高木春

俺は、ずっと"愛されたい"と思ってたんです

笹原先生

！

高木春

パートナーとして必要とされるんじゃなくて、俺自身を愛して欲しかった

笹原先生

そうか

笹原先生

そんな相手がいて、幸せだな

高木春

ですかね…

高木春

(多田とパートナーってバレない様にしないと)

高木春

笹原先生は？

笹原先生

へっ！？

高木春

友達じゃなくて、笹原先生のことですよね

笹原先生

！

笹原先生

……なんでバレた

高木春

さすがにわかります笑

高木春

嘘下手ですね

笹原先生

そーか…

高木春

パートナーいないんですか？

笹原先生

ああ

笹原先生

それどころか、一度もプレイしたことがないんだ…

高木春

！

高木春

珍しいですね

笹原先生

Subだって誰にも言ってないから

高木春

そしたら、あのDomの放送の時も？

笹原先生

そうだ、俺も実は被害に遭ってて

高木春

…！

笹原先生

やばいと思ってすぐ隠れたよ

高木春

ケアしなかったんですか？

笹原先生

ああ

高木春

すごい…一人であの状況を乗り切ったって…

笹原先生

実は一人じゃなかったんだ

高木春

でもDomじゃなかった？

笹原先生

いや、Domだった

笹原先生

ケアするって言われたけど断った

高木春

そ、そうなんですね

高木春

(強情だな…)

笹原先生

でも、ずっと隣に居てくれた

高木春

…守ってくれてたんですね

笹原先生

っ！

笹原先生

ま、まあ…俺は一人でも大丈夫だったけど…

高木春

パートナーにならないんですか？

笹原先生

……そいつとなら、なっても良かったかもな

高木春

じゃあ！

笹原先生

もう遅いんだ

笹原先生

ずっと断り続けてたから、多分俺に興味無くなったんだろ

笹原先生

何も言われなくなった

高木春

何それ…切ないですね

笹原先生

…別にいい

笹原先生

もともと一人で生きるつもりだったし

高木春

でも、そんなことしたら薬の過剰摂取に…

笹原先生

いいんだ

笹原先生

体調悪くても、生きてはいける

高木春

…そう、なんですね

笹原先生

パートナーか…

胸がズキズキと痛む。俺はずっと一人で生きてきた。 Domに媚びたりせず、真っ当な努力をしてここまで来たのだ。ずっとそれで良いと思っていたはずだ。なのに…。

笹原先生

(きっと抑制剤を飲んでいないからだ)

笹原先生

(こんなに寂しいのも)

笹原先生

(あんな奴のことが恋しくなってしまうのも…)

俺は体育座りをしながら、自分の膝に額を擦り付ける。

笹原先生

あだち…

高木春

え…

その時、望んでいた声が聞こえた。

安達先生

笹原ー！

笹原先生

！

高木春

！

笹原先生

安達！？

高木春

笹原先生、座っててください！

高木春

俺が…！

笹原先生

俺が行く！

高木春

無理しないでっ！

笹原先生

安達！！！

安達先生

笹原、いるのか！？

安達先生

返事しろ！

笹原先生

ここだ！！

洞穴から外を覗くと、雨の中で懐中電灯で照らしながらレインコートを着ている安達と目があった。

安達先生

笹原っ！

俺の名を呼びながら、でこぼこの道をまるで動物のように走ってくる。途中で荷物を捨てて、安達は洞穴に向かってくる。

笹原先生

安達、助かっ、わっ！

安達先生

笹原っ…！！

笹原先生

な、なんだよ！

安達先生

本当によかった……！！

安達は洞穴に入るなら俺を抱きしめてくる。いつもなら、一瞬で殴っているところだが、こうして抱きしめられて、異常なほどの安心感を感じている自分がいるのも事実だ。

笹原先生

安達…

グッと力の入っている笹原を宥める様に背中に手を回した。

高木春

あの…

笹原先生

！？

安達先生

ああ…高木いたのか

高木春

いましたけど…

安達先生

よし、戻るぞ
これお前らの分のレインコートな

笹原先生

あ、ああ

安達先生

怪我は？

高木春

僕はないです
笹原先生が、足首を

笹原先生

少し捻っただけだ

安達先生

見せろ

安達先生

…腫れてるな

笹原先生

どうってことないって…うわぁ！

安達先生

よし、これで戻るぞ

笹原先生

待て待て待て！

笹原先生

よし、じゃねーよ！

笹原先生

ダメに決まってんだろ！！

安達先生

？

笹原先生

お姫様抱っことかありえねぇ！！

安達先生

え、じゃあ担いで欲しいのか？

笹原先生

そっちの方がましだ！

安達先生

しょーがねーな

安達先生

背中でおぶってやるから

笹原先生

…たく、最初からそーしろよ

笹原先生

合流前に絶対降ろせよ

安達先生

わかったよ、わがままだな

笹原先生

うるさい！

高木春

な、仲良いですね…

笹原先生

良くないっ！！

笹原先生

(こいつを待ってたさっきまでの俺を殴りたいっ！)

嫌われてるはずの義理の弟(Dom)に面倒を見られる

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北

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