太宰が珍しく難しい顔をして居る。 考えても、思考は纏まらない。
中原 中也
太宰 治
二人は暫く考えを巡らせていたが、本棚の本が倒れる音で思考が遮られた。
何かに耐えられなくなったような其れの様子は、やけに太宰の印象に残った。
太宰 治
太宰 治
中原 中也
太宰 治
太宰 治
中原 中也
中也は俯いて黙って居る。 糸の切れた人形の様に…触れたら今直ぐにでも、壊れてしまいそうに。
中原 中也
太宰 治
太宰 治
中原 中也
顔を上げた中也の顔には、笑み。 取り繕った笑みだという事はすぐに解った。
中原 中也
途切れ途切れに、自分に言い聞かせるように、揺れる声を落とす中也。
太宰 治
『行っても』と告げた手前、彼の意見を蔑ろにするのは気が引けた。
何処か、中也の言葉に違和感を感じた気がしたが…太宰は其れを取り逃がした。
中原 中也
空がもう明るい。 時計の針は五時を回って居た。
太宰 治
中原 中也
中也は立ち上がる。 ふらついた様にも見えたのは、太宰の錯覚だろうか。
中原 中也
太宰 治
太宰 治
中也は頷き、角を曲がる。
段ボールが移動されて居た部屋の戸を開け、中を覗いた。
七畳…程あるだろうか、綺麗な洋室だ。
後ろ手に扉を閉めると、中也がその場にへたり込む。
中原 中也
不意に泣いて仕舞いそうだった。 奥歯を噛み締めて耐える。 人間の噛む力はこんなに強かったのか、とぼんやり惟い、体の力を抜いた。
安心したんだ。
太宰が、何事も無かった様に接してくれた事に。
ちゃんと、自身の事を信じてくれた事に。
何でもない様な冗談に。
普通の、日常に。
同時に、如何しようも無い、不安も感じる。
明日の、教室で何が起こるか。
太宰に、裏切られないだろうか。
そして
殺し屋が幸せになっても良いのか、と。
どれだけ取り繕おうと
自分は何十人もの人間を殺した。
本当なら死刑。
中也の頭の隅、言葉がぽつぽつと浮かぶ。
これは
この俺への虐めは
俺の犯した罪への
罰
罪を犯した者は
罰を受けなければならない。
中原 中也
中原 中也
…『罪とは何で、罰とは何なのだい?』
『罪と罰は仲良しなんですよ』
『表裏一体…か、生活者と芸術家の様だね』
『其れはどの様な意味で?』…
何時の記憶だろう。 嗚呼、一年の時だ。
どんな話をして居たっけ。 確か、話し声で起きたけど…暫く盗み聞きしてたんだ。
常人には分からない様な内容の話をして居たあの二人。
中也は記憶の波に溺れて行く。
コメント
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すっげぇ。漫画家になれるよほんと。すごいしか言えない。
ド、ッドス君? ァァァどんな形であれみんな幸せになってくれぇぇぇ!!今回も最高でした!ありがとうございます!