TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

保健室。

未だ、中也が一年の頃。

殺し屋業務を始めて間もない頃だっただろうか。

疲れで眠って居た時だ。

人の話し声が聞こえて、薄らに目を開ける。

太宰 治

…なら、雲のアントは?

フョードル・ドストエフスキー

…そうですね、面白くない答えだと…海になりますか

太宰 治

そうだねぇ、全然面白くない

カーテンの隙間から、二人の様子が見えた。

フョードル・ドストエフスキー

どんな答えを期待しました?

太宰 治

解って居るだろうに

太宰は珍しく白衣を着て居らず、向かいのドストエフスキーと愉し気に話して居る。

フョードル・ドストエフスキー

ええ、分かりますよ

フョードル・ドストエフスキー

…ですが此処は敢えて

フョードル・ドストエフスキー

雨、とでも答えておきましょうか

太宰 治

…ほう、その心は?

フョードル・ドストエフスキー

さぁ、如何でしょう?

…何の話だ。 中也は姿勢は変えずに聞き耳を立てる。

だが、ヒントが少な過ぎて何も分からない。

太宰 治

…そうだね

太宰 治

元々同じH2Oなのに、堕ちるものと浮いて居られるものがあるのだからねぇ

フョードル・ドストエフスキー

この世の理とは残酷なものですよ

太宰 治

知って居るさ

太宰 治

…雲とは罪なもの、だねぇ

フョードル・ドストエフスキー

罪ですか

太宰 治

…ふふふ、厭に反応するじゃないか

僅かに大きな反応を見せたドストエフスキーに、太宰が笑む。

フョードル・ドストエフスキー

では

フョードル・ドストエフスキー

罪のアントニムとは?

太宰 治

…難しいじゃないか

フョードル・ドストエフスキー

其れが此の遊戯の醍醐味じゃないですか

くつくつと笑い声を出すドストエフスキーに、太宰は答う。

太宰 治

…蜜、かい?

フョードル・ドストエフスキー

太宰くん

意地悪い笑みを浮かべた太宰に、ドストエフスキーが頬杖をつく。

太宰 治

私は巫山戯てなど居ないよ。何時だってねぇ…じゃあ君は如何思うのだい?

中也は『何時でも巫山戯てるだろ』と心の中で突っ込んだ。

フョードル・ドストエフスキー

…罰、ですかね

太宰 治

…シノニムでは?

フョードル・ドストエフスキー

いいえ?

太宰 治

…聞かせてくれ給えよ

太宰 治

…否、そもそも

太宰 治

罪とは何で、罰とは何なのだい?

フョードル・ドストエフスキー

…罪と罰は仲良しなんですよ

太宰 治

表裏一体…か、生活者と芸術家の様だね

フョードル・ドストエフスキー

其れはどの様な意味で?

太宰 治

さぁ、如何だろう?

フョードル・ドストエフスキー

…貴方と話すのは楽しいですよ

太宰 治

奇遇だねぇ、私もだよ

フョードル・ドストエフスキー

…では、『罪は罰からの脱却』

フョードル・ドストエフスキー

此の意味は?

太宰 治

…嗚呼、判るよ

中原 中也

(全っ然わかんねぇ…!)

中也には理解の及ばぬ世界か。 小さく溜息を吐いた時。

太宰 治

…もっと話して居たい処だけど、生憎患者様の御目覚めだ

中原 中也

バレてる、と中也が身を揺らした。

太宰 治

また今度

フョードル・ドストエフスキー

ええ、ぼくも授業が有りますから…

嫌に鮮明な記憶だ。

あの時は、何も分からなかった。

でも、今ならほんの少しだけわかる気がする。

『罪は罰からの脱却』

その意味が。

同時に

『罰は罪からの脱却』

と言う事も。

だから

罪と罰はantonym…対義語なのだ。

罪を犯すは罰を受けるのが然り。

二つは輪廻。

だが、罪を犯せば其の罰は…

其処で思考は止まる。

時計は六時を指した。

中也は、殺し屋業務用の武器庫が段ボールの荷物から抜き取られて居る事に気が付く。

其の理由は、分からなかった。

中学生殺し屋は養護教諭に恋をした。  太中※学スト改変

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

430

コメント

36

ユーザー

矢っ張りこういう謎というか天才同士の会話のクオルティーが凄い…っていうかこの学校行きたい。あのときの保健室の先生が太宰さんだったらどれほど良かったことか…

ユーザー

くっ!人間失格のあのシーンのやつ!(はい?) 今回も最高でした!ありがとうございます!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚