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今夜、その記憶が。

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今夜、その記憶が。

9 - 赤い宝石は静かに眠る

♥

9

2023年10月08日

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ドアを開ける。

床に倒れている澪。

朱里

!!

朱里

澪!!大丈夫?!

...ん、

朱里...?

朱里

...っ
とりあえずソファまで運ぶね

ケーキボックスを置き、 澪をおぶってソファまで 移動する

朱里

動かして大丈夫だった...?

うん...ちょっとだけ頭痛くて
動けなかったの。ありがとう

朱里

よかった、
頭痛薬持ってくるね

朱里、

朱里

どうしたの?

澪の手が 私の服の裾を掴む

どこにも、いかないで

朱里

...うん、行かないよ
薬取ってくるだけだよ

...

朱里

(どうしたんだろう...)

澪が俯いていて 顔がよく見えない

朱里...

朱里

うん

...死なないでね

朱里

え?

1人に...しないで...

そう言って澪は 電池が切れたかのように 寝てしまった。

朱里

(寝言...だったのかな。)

薬と水を持ってきたが 澪が起きる様子は無い。

玄関に置きっぱなしだった ケーキボックスを冷蔵庫に しまい、

澪が目覚めるまで 側にいることにした。

朱里

...

朱里

........

カーテンの隙間から漏れる光で 今が夕方なのがわかる。

澪が目覚める前に 夕飯を準備しようと思っていた

しかし、隣で寝息を立てている澪につられて私もいつのまにか 寝てしまっていた。

...

朱里..?

澪の隣に座ったまま 寝ている朱里がいた。

(...側にいてくれたんだ)

...

不思議な夢を見たの

何度も見た夢なのに 今日は少し違ったの

澪?

せんせい...?

澪?

どこいったんだろう...

冷たい廊下に1人、裸足の澪 いるはずもない「先生」を ひたすらに探す昔の「私」

いつもなら、 ここで夢が終わるはず

朱里?

...澪

(あれ...なんで朱里が)

澪?

「せんせい」!

夢の中の私は朱里に駆け寄った。

(朱里が先生...?
面白い夢だなぁ)

(確か、先生って
もう少し髪が、)

...

あれ...先生の顔が思い出せない。

朱里?

澪、また抜け出して迷子になってたんでしょ。

澪?

うう...だって。
おべんきょーいや

朱里?

そんなんじゃ立派なお姉ちゃんになれないよ?

澪?

そんな...

澪?

おべんきょーはいやだけど
「  」のためなら...

朱里?

うん。一緒に頑張ろうね。

私と「先生」と呼ばれる朱里が手を繋いで歩いていく

(妹がいたら...って思ってたときあったなぁ)

(ふふ...立派なお姉ちゃんかぁ。夢の中の私はなれたのかな)

...

隣で寝ている朱里を見て思う、

私は甘え続けていいのかな

朝起きたら私が 朱里と過ごした時間を忘れてて

その度に同じことを説明して 何度も、

何度も何度も何度も何度も何度も

私に忘れたくない 思い出を作ってくれるのかな

朱里には幸せになってほしい

口だけじゃ、ダメだよね

...

ありがとう、朱里

もう一度話せてよかった。

青い海月のキーホルダーを握って、玄関のドアを開けて外に一歩出る

なんもない、ドアの閉まる音が

もう戻れないと、 そう強く思わせた。

今夜、その記憶が。

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