何か、大きな音が聞こえた後で 雨の音が聞こえてきた。
朱里
...ん
朱里
澪...?
ソファで寝ていた澪が どこにもいない。
玄関に澪の靴が無いと気づいたのは家中を探した後だった。
朱里
そうだ、電話...
プルルルル
♪〜♪〜
朱里
嘘でしょ...
目の前の机で鳴っているのは 澪の携帯だった。
朱里
どこにいるの澪...。
朱里
(何事も無ければいいけど...)
雨が降ってきた。
それでも「私」は行かなきゃ いけないところがある。
澪
(家出る前に傘一本借りれば
よかったかな。)
よかったかな。)
朱里に、 ちゃんと話せばよかったかな。
澪
...
澪
(ううん、もう迷惑はかけないって決めたの。)
エントランスに入り パネルに「1002」と打ち、 呼び出しボタンを押す。
ガチャン
オートロックが解除される。
澪
なにか言ったらどうなんですか
パネル
...
澪
...言わなくとも、
今から会いに行きますけど。
今から会いに行きますけど。
エレベーターで10階まで移動した先に目的の人物はいた。
澪
...
澪
こんばんは
澪
「先生」で合ってますよね
先生
ええ、こんばんは。
先生
...立ち話もなんですから、
「研究室」でゆっくり話しましょう。
「研究室」でゆっくり話しましょう。
そう言って先生は 1002号室に入っていく
朱里
はぁ...はぁ...
雨の中、やみくもに澪を探す
私の中の嫌な予感を 振り払うように走る
朱里
(私が何か、間違ったのかな)
朱里
(もしかして、澪がまた脅されたんじゃ...)
家中を探している時、 海月のキーホルダーが 1つ無かった。
朱里
(ただの散歩なのか、それとも)
もう戻って来ないのかもしれない
嫌だ
「やっと会えたのに」
朱里
「やっと」...?
朱里
...
朱里
「澪ちゃん」...?
思い出してはいけなかった のかもしれない。
欠けたピースを 見つけたところで
どこのピースかは 澪しか知らない。
知らないままの方が 幸せだった。
朱里
「研究室」...!
なぜ今までこんなことを 忘れていたのだろう。
まるで何かのスイッチが 切れたかのようにそれは 唐突に溢れ出す。
澪はあのマンションにいる。
昼間、なぜオートロックが開かなかったのかはわからない。
しかし、今なら開くと 不思議とそう思った。
ガチャン
朱里
...!!
朱里
澪...まだ行かないでね...
欠けたピースを埋めに 10階へと進む