チャット型小説アプリ

腹に冷たいナイフが入り、肉をえぐってくる

呼吸ができなくなる

薄れゆく視界に映っていたのは……

チャージしてください 残り時間29︙59

そう【他の話を読む】を押して小説を選ぶ

今私が使っているのは最近流行りのチャット型小説アプリ

無料で様々な人の作品が読めるし、チャット型な為読みやすい

だが

最近のアップデートで新しい機能がつけられてしまった

それがチャージ機能

小説読める時間が限られており、

時間切れになるとチャージをしなければいけない

チャージの方法は2つある

1つは数十分のチャージ時間を待つと続きが読めるようになる方法

もう1つは単純に課金だ

そこそこ高い課金をすればすぐ読めるのだが

無課金勢の私は当然、他の人も課金なんてしないだろう

今まで小説アプリといえば無料だったのに、

こんな機能をつければお金なんて払う気など起こらない

次に私が選んだのはいじめられている女の子が自殺して

幽霊となりいじめっ子たちに復讐するというお話

チャージしてください 残り時間29︙59

次に選んだ話は森の中を迷子になり、ある館に行きつき

その館に閉じ込められて殺人鬼に追いかけられるお話

チャージしてください 残り時間29︙59

次の話は異世界転生した男の子が勇者となり、

ヒロインを助けに行くお話

チャージしてください 残り時間29︙59

そう私は若干眠い目を擦って

【恋愛学園】という小説を押した

そう読み続けていると

いつの間にか私は眠っていた

目の前には眩しいほど整った顔立ちの男の子がいた

わけがわからなかった

自分が寝ているベッドも知らない

部屋も、窓から見える景色も見覚えがない

しかし先程の2人の顔は見覚えがあった

明晰夢というのだろうか、意識があるなら楽しいことこの上ない

こうして私の楽しい時間は始まった

可愛い弟に

かっこいい兄に

イケメンになった幼なじみ

まさに恋愛学園の世界だ

こんな楽しい世界の主人公になれるなんて

夢のようだ

小説では主人公が結ばれる予定の男の子がいた

私も彼が1番キャラとしては好きで

ぜひ小説のようにストーリーを進めたい

小説と同じ様々な恋愛イベントを体験していく

どれも理想通りで心踊った

そしてついに……

そう、告白イベントだ

どういうのかは寝落ちして覚えていないが、

告白されるのは間違いない

放課後を楽しみに待ち、ついにその時がきた

わざとすっとぼける

告白とはわかっているが、敢えてそうするのは優越感に浸れるからだ

ついにその瞬間がきた

男の子の口の動きがゆっくりに見える

男の子はその続きをいつまで経っても言わない

ゆっくりに見えたのは本当に動いてないのだ

時が止まったように固まる男の子

すると突然

視界が暗転する

わけがわからなかった

さっきまで教室にいた筈なのに

なんで部屋に？

それに弟も兄もまるで最初のような会話をそっくりそのまま繰り返している

それからも全く同じ展開が進む

そして

また世界が暗転する

何度も

何度も繰り返す

学園の生活を

イベントを

何もかも

告白する寸前に世界が戻り、

また繰り返す

何度目かもわからない告白が始まる

ついに私は叫んだ

初めて男の子が止まった

バグったように言葉も繰り返さない

もしかしてついにループを抜け出したのかと思い男の子を見る

男の子の姿がコンピューターのように点滅する

ようやく男の子が新たな言葉を紡いだ

しかし声色は今までのもとは違い感情がこもっていない

男の子から予想外な言葉が飛び出した

男の子は点滅しながら喋り続ける

男の子はひときわ激しく点滅した

男の子の姿が変わる

男の子の姿が変わる

男の子の姿が変わる

点滅のスピードが早くなる

ふと景色が変わると 横断歩道の真ん中に立っていた

身体が動かない

プーーーーー！！！！

視界が宙を舞う

身体のあちこちが軋む

鮮血が飛び出す

地面に打ち付けられる

身体が動かない

死なせて

その時初めてそんな感情を抱いた

こんな辛い思いをするなら

死なせて

終わらせて

骨が折れて呼吸が上手くできない

横断歩道の真ん中に立っていた

身体が動かない

プーーーーー！！！！

繰り返す

痛みが身体中を駆け巡る

身体の骨が折れ曲がる

何度も何度も

繰り返す

『あーもうこっから30分チャージしなきゃじゃん！』

『こっからどうなるか気になるのに〜』

どこからか声が聴こえる

『やめたやめた』

『そんなの待ってられるかっての』

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