瑛太
結
ほぼ理論値みたいなやつじゃん!
瑛太
ここまで来るのにめちゃ時間かかったんさな…
結
彼女のいつも通りの柔和な笑み 彼女とのいつも通りのやり取り それが僕にとっての至高の一時だ
くだらない正義感をぶつけてくる級友や 意味のない暴言や暴力をじゃれ合うように行使してくる奴ら 僕に対してのヘイトがすごい教師 そのいずれをも忘れられる位彼女と話しているときが幸せだ
授業開始のチャイムがなる
颯
結
授業が始まると彼女は前の席の奴によく話しかけられる その時も彼女は屈託のない笑顔を見せている それも見ているとどうしても嫉妬してしまう
瑛太
彼女に対する恋心に気づいたのは去年 冬もそろそろ始まるだろうかという時期だった
恋心に気付いた瞬間僕は罪悪感に苛まれた おそらく彼女は僕を友達としか見ていないだろう なのに僕は彼女に対してこんな邪な感情を抱いている 彼女のことを裏切ってしまったのだという罪悪感が僕を支配した
そして僕は彼女に告白をしてフラれた 分かりきった結果だったから残念でもなんでもなかった むしろ勇気を出した僕を友人に褒めてほしいくらいだった でも
恋心はそう簡単に潰えない
次第に彼女のことを考える時間が増えてきた 入浴中、勉強中、ゲーム中 しまいにはほぼいつも彼女のことを考えていた
瑛太
僕だって分かってるんだ!
瑛太
何度そう吐き捨てただろうか 恋心は恋をしている当人にとっては尊く儚いものだがそれの対象になってる人間からしたらそんなものではない
怖いのだ
それもそうだろう 恋心を抱いてるわけではない人からの恋心なんて理解不能で気持ち悪いだけだ それをわかっていながらも僕は… 考えずにはいられなかった
勿論今でも友人を続けていられているのはひとえに彼女の優しさに起因するだろう 本来なら「キモ、近寄らないで」と一蹴され今までの関係もリセットされるだろう しかし彼女は手を振りほどかなかった
でも だからこそ僕は更に苦しむことになった
彼女の仕草が好きだ 彼女の話し方が好きだ 全てが愛おしい 初めて人をこんなにも愛した
それでも間違ってる このままだと取り返しのつかない事態になる可能性だってある それでも若い恋心はそうは簡単に冷めてくれない
かと言って彼女が誰かと付き合ったとしても諦めがつくだろうか? …おそらく数日は引きずるだろう
そう考えていると授業終わりのチャイムがなった
しばらくして帰りのホームルームが始まった
先生
気をつけて帰れよー
そう言うと先生は教室を出ていった
瑛太
颯
瑛太
じゃ行くか
結
瑛太
…こんなちっぽけな挨拶一つで嬉しくなってしまう 恋心なんてものは単純で狂ってる
瑛太
ただいまー!
母親
お風呂は行っちゃいな
瑛太
風呂に入り考えにふける 彼女との今後の関係をいくら考えてもどうするのが正解かは分からない
分かってる 分かってるんだ 一度振られてしまったらもう一回告白しても同じ結果だと わかってるからこそこの気持ちをどうすればいいか分からない
瑛太
瑛太