夏を待ちわびる庭に
今年も種をまいた
雷
(またこの季節が来たな…)
雷
(今年もよく育つといいなぁ…)
あなたと過ごした日々が
色褪せず此処に見える
雷
(またあなたのことを思い出してしまう…)
ようやく芽を出した双葉
奏多
やっと芽出たな
雷
そうですね(*ˊ˘ˋ*)。♪:*°
奏多
今年も向日葵を植えたのか?
雷
えぇ、そうですよ
君の好きな向日葵の花
奏多
雷は向日葵が好きなんだな〜ナデナデ
雷
(*´ ˘ `*)♡エヘヘ
奏多
来年も再来年も植えようなニコッ
雷
はい!
来年も再来年も見られると思っていた
兵隊さん
我妻さん(2人の苗字)
雷
!はい…?
届いたその手紙は
兵隊さん
おめでとうございます…召集令状です
雷
ッ…ありがとうございますッ…
見事な薔薇(そうび)の赤
降り出す雨の中で
奏多
雷〜ただいま〜…!?
雷
フラァッ…
か細い背が崩れ落ちた
雷
じ、実はッ…奏多さんに召集令状がッ…ポロポロ…
奏多
ッ…泣かないで(手を握る)
雷
!
奏多
俺のこの手に守れる明日があるなら…
奏多
喜んで俺は戦地へ向かうよ
奏多
雷が繋ぐ、未来のために
雷
ッ…嫌だ!ポロポロ…
雷
行かないで!僕を置いて!ポロポロ
雷
奏多さんがいない未来なんて…いらないから!ポロポロ…
雷
ただ此処にいてッ…ポロポロ…
降り止まぬ雨を拭って
雷
僕は父と母の3人家族だった…
雷
父も母も優しくて幸せに暮らしていた…
雷
だが…幸せはそう長く続かなかった
雷
父が戦死してしまった…
雷
それからは大変だった…
雷
母も少しして病気にかかり…父を追って自殺をしてしまった…
雷
それから僕は一人ぼっちになってしまった…そんな時に出会ったのが奏多さんだった
雷
でも奏多さんまで戦争に行ってしまう…
雷
あぁ…なんて神様は僕たちを引き離してしまうのだろう…
鳴き出す汽笛の声
奏多
そろそろ行かなきゃ…
雷
ッ…ポロポロ…
別れの時が迫る
奏多
テテテ…
迷わず踏み出す背を
か細い手が強く阻んだ
雷
行かないでッ…ポロポロ…
奏多
ッ…
奏多
止めないで、雷のこの手は尊き明日を掴んでッ…
雷
でもッ…ポロポロ…
奏多
泣かないで…最後くらいは…笑顔の花を手向けてくれッ…ニコッ
雷
逝かないでッ…ポロポロ…
雷
僕を置いてッ…
雷
惜別の餞(はなむけ)なら、あげないからッ…ポロポロ…
雷
ただ此処にいてッ…ポロポロ…
降り止まぬ雨に打たれて
向日葵の花を待っていよう