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春千夜

………ッ……

雨の音で目を覚ました

壁にかけられた時計は、深夜2時を指している

春千夜

はぁ、きもっ…

中途半端な時間に起きてしまい、寝起きの枯れた声のまま憎まれ口を叩く

春千夜

………………

ココ

おい、三途!

春千夜

…!

ココ

お前、なんでまた…

春千夜

なんで俺、泣いてたんだ?

昨日あったことを思い出す

気がついたら夢の中にいて 気がついたら泣いていて

気がついたら、 目の前に焦った顔をした部下がいた

春千夜

(また、夢遊病か…?)

春千夜

(あの時は、あいつが居なくても夢を見た)

春千夜

(あいつに会ったら夢を見るのか、それとも他に原因が…)

春千夜

あいつなら、何か知ってる…?

咄嗟に窓の方を見る 外は相変わらず雨が降っていた

春千夜

(雨さえ降ってれば、いるかもしれねぇな)

そう思った俺は、傘を手に外へ出た

昼間より、強い雨が降っていた

深夜ということもあって、人の気配はなく

まるでこの世界に1人だけ そんな変な感覚に包まれた

しばらくして、見覚えのあるベンチが目に入る

雨と夜闇に視界を奪われていたが、あのベンチだけは妙に存在感があった

息の切れた身体を無理やり動かし、ゆっくりとそれに近づく

春千夜

春千夜

なんだ、これ…

ベンチに、何かが置かれていた

それは先端にギザギザの切れ込みがある 赤黒い花だった

手に取った瞬間、 知った匂いが鼻に通った

春千夜

チョコレート…

春千夜

もしかして、あいつが…?

咄嗟に周りを見渡すが あの女の姿は無い

しかしベンチの方に目をやった瞬間 下で何かが光った

春千夜

なんだ?

身体を屈ませ、ベンチの下に手を伸ばす

そこにあったのは、青い宝石のついたフープピアスだった

春千夜

これ、なんか見覚えあんな…

春千夜

春千夜

そうだ、確か…!

なぜか見覚えのあるピアスだった 曖昧な記憶を辿って、それが確信に変わる

花とピアスを手に、 雨の降る夜道を再び走った

家に入り、靴を乱雑に脱いで 寝室へと走る

そして花とピアスを持ったまま、クローゼットを漁り、床に服を撒き散らす

普段なら絶対に許さない でもこの時だけは違っていた

ただ自分の記憶が本当か 確かめたくて仕方がなかったのだ

春千夜

春千夜

あった…

あるカーディガンのポケットから出てきた 瓜二つのフープピアス

それには同じ青い宝石がついており 暗い部屋の僅かな光に、小さく反射していた

春千夜

間違いねぇ、同じだ

春千夜

でも、なんで俺がもう一個を…

なぜ持っていたのかは分からない それにこれ自体、俺の物では無い

見つけた日は覚えていない でも持っていることは覚えていた

記憶は何もかも、全てが曖昧で 分からないことだらけだ

でも一つだけ分かったことがある

春千夜

(きっとこれは、あいつのだ)

それに気がついた瞬間 いつもより身体が軽くなった気がした

もう一度あの場所へ行こう そう思ったその時

俺の視界が暗転した

春千夜

(ここは…?)

突然の暗転の後 気がついたら、俺はカフェにいた

春千夜

(また夢か?)

春千夜

(よくわかんねーけど、多分目の前のこいつは…あの女だよな)

目の前にはいつも通り、あの女がいた

だが少し雰囲気が変わっていた

少し大人っぽくなっている気がする 髪は前より少し伸びていて、服は黒いスーツに変わっていた

急な変わりように 同一人物か少し不安になる

春千夜

(俺はもう梵天に入ってんのか、こいつはその事知ってんのか?)

自分の風貌と腕の刺青を見て 自分の状況を確認する

まだ組織に入って経っていないのか 服装はあまり厳重ではない

???

╌╌╌╌╌╌!?

春千夜

(ん?なんか言ってんな)

目の前の女のオーバーリアクションが 意図せず視界に入った

声が聞こえず、顔も見えないのに そんなもの関係ないとでも言うくらい、こいつの動きはうるさい

春千夜

春千夜

(このピアス…)

何となくテーブルに目をやった するとそこには小さなピアスケースがあり、見覚えのあるピアスが入っていた

???

╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌、╌╌╌┄╌╌╌╌!

春千夜

(これ、俺があげたのか?)

半信半疑な俺を前に 女は嬉しそうにピアスを付け始める

初めて付けるのか、手元が覚束無い様子で 見たこともないくらいしかめっ面になっていた

春千夜

(不器用だなこいつ)

春千夜

(しゃーねぇ、付けてやるか)

見ていられず、俺は立ち上がり 女の手からピアスを取り上げる

女は一瞬驚いていたが 俺がピアスを付け始めると、動きを止めそっと様子を伺う

付けるところを見ているんだろう 次から自分で付けられるように

春千夜

(っし、これでいいだろ)

???

╌…╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌!

春千夜

(そんな顔赤らめて言うことか?)

春千夜

(まあ、礼は素直に受け取っとくか)

女は嬉しそうにピアスを触る そのピアスが入っていたケースも、愛おしそうに見ているようだった

春千夜

なんだ?場所が変わった?

女をしばらく眺めていると 突然風景が変わった

春千夜

(ここ、俺の家のリビング…だよな?)

春千夜

(なんで…こんなこと、今まで一度も…)

いきなりのことに パニックになりかけた

しかしパニックになる要因は それだけではなかった

春千夜

(部屋の感じが、いつもと違ぇ)

春千夜

(見慣れてるはずなのに、初めて来たみたいだ)

リビングには、 見知らぬ小物や家具が置いてあった

不思議な気分だった 見慣れているはずなのに、そこは全く知らない部屋で

その空気も、雰囲気も 何もかもが違和感だらけだった

春千夜

(何なんだこれ…)

ドンッ!!

春千夜

!?

しかし次の瞬間 俺の胸に、小さな衝撃が走った

驚いて下を向くと 見慣れた人物の姿が目に入る

???

……ッ…!

春千夜

お前…

春千夜

(なんだ、泣いてる?)

そこにはあの女がいた だがそいつはいつもの笑顔ではなく、泣きながら俺に何かを訴えかけていた

???

┄╌╌╌╌…

春千夜

(行かないで…)

春千夜

(なんのことだ?)

春千夜

(つかそれよりも、なんでこいつは泣いてんだ?)

目の前にいる女が涙を流す理由 それが俺には分からなかった

だが泣き止む気配もなく 女は俺のカーディガンを引っ張る

???

┄┄╌╌╌╌╌╌╌╌╌…!!

春千夜

(貴方じゃなくたっていい)

???

┄╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌…

春千夜

(帰ってこられないかもしれない…)

春千夜

(もしかして、任務か?)

春千夜

(俺が危険な任務に行こうとしていて、それを止めようとしてる…?)

???

┄╌、╌╌╌╌╌╌…

???

╌╌┄┄╌┄┄╌…

春千夜

(違う、そうじゃない)

春千夜

(ただ貴方が心配で…)

???

╌╌╌╌、┄╌╌╌╌╌╌╌╌…

春千夜

(どうして分かってくれないの…)

春千夜

(なんでこいつ、こんなに俺のこと気にかけて…)

???

╌╌╌╌…

???

┄┄╌╌╌╌╌┄╌╌╌!!

すると女は何かを叫ぶと 俺から離れ、部屋へ入ってしまった

春千夜

(もういい…)

春千夜

(三途さんなんて知らない)

春千夜

(…そこまでして俺を行かせなくねぇのか)

春千夜

(そんな危険な任務、行ったことあったか?)

全く覚えがなかったが 何となく自分の記憶と辿ってみる

しかしそれらしい記憶は出てこず 無意識に頭を掻き、あいつの部屋の方を見る

春千夜

春千夜

これ…

床で何かが光った 拾い上げてみると、それはあのフープピアスだった

春千夜

(さっきの夢であげてたやつだな)

春千夜

(走った拍子に落ちたのか?)

春千夜

(まあ、後で渡しとくか…)

あいつの気持ちを考え とりあえず、ピアスをカーディガンのポケットに入れた

春千夜

あ…?

春千夜

(カーディガン、ピアス、ポケット)

春千夜

(もしかして、この時にピアスが…?)

春千夜

(でも入ったままってことは、返せてない?)

春千夜

(なんで…)

ポタッ…

しばらくの間、考え込んでいると 突然俺の手に、一つの水滴が落ちてきた

しかしそれだけではなく いつの間にか俺の身体は、水バケツでも被ったかのようにぐっしょりと濡れていた

春千夜

え…濡れてる、なんで…?

ギイィィィィーー!!

耳を劈くようなクラクションが聞こえた

それと同時に眩い光が見え 気がつけば、一つのトラックが俺に迫ってきていた

春千夜

…!?

ドンッ!!

だが次の瞬間 俺の背中が誰かに押された

俺はそのまま前に倒れ込み 地面を軽く滑った

春千夜

…ッ……痛っ、くそっ…なんで外に、

身体に走る痛みを噛み締めながら 俺は後ろを向く

春千夜

(居ねぇ…どういうこと…)

春千夜

後ろにいたはずの存在は いつの間にか消えていた

しかしその代わり 地面に落ちていたピアスが、自身の存在を示していた

春千夜

(まさか…)

俺はピアスを拾い、走り出す

後ろで呼び止める声も聞かず 雨の降る道をひたすらに駆けた

暫く走り続けて 俺はあの公園にたどり着いた

気がつけば 空が少し明るくなっていた

雨に濡れた身体で ピアスを握りしめ、ベンチへ向かう

だが疲労のせいか力が入らなくなり 俺はベンチに倒れ込み、もたれかかった

視界に入ったのは 雨とベンチと、あのピアス

春千夜

……ッ…くそっ…

春千夜

なんで、来ねぇんだよ…

途端に、涙がこぼれ落ちた

俺に近づいてくる足音も 雨が弾かれる音も一切しない

身体を何度も打ち付ける雨は 止むことを知らない

俺は冷えきった身体に触れ ほのかな寂しさをひとり噛み締めた

To Be Continued…

雨時、君の声が聞こえる

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コメント

26

ユーザー

今回のも最高すぎます! 現実と夢が結構交差してましたね。 フープピアス結構鍵になってそうだな、青い宝石…なんだろう? はるちを押したのは、もしかしてあの女性かな?気になる! そして女性が来なくて悲しそうなはるち…辛すぎる

ユーザー

めっちゃ泣ける😭毎回素敵な作品をありがとうございます!!女の子に会うのが夢を見る鍵じゃないのなら何がきっかけで夢を見てるんでしょうか!続きが楽しみです!!

ユーザー

泣きました…フープピアスが鍵なのかな?…今回はほとんど夢?の中だったな…続き待ってます!!!

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