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赤桃/学パロ ちょっとながい
肌を凍てつくような冷たさを纏う風が靡く頃。
センター試験前の高校3年生である俺は、“人生を決める”と言っても過言では無いほど、日々勉強に精を出していた。
が、全て器用にこなす性であるため、既に指定校推薦で進路が決まっている友人らと、学校からの帰路で遊び呆けていた。
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黒
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桃
他愛のない冗談を交えつつ、ひと呼吸おいてから、恩師にのみ打ち明けていた進路を口にした。
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桃
桃
遠くを見据えながら、その夢を口にした途端、彼らの面持ちは一変する。
黒
青
水
桃
皆、この寂れ、娯楽施設も無く、イオンモールしかない田舎から出る。揃って同じ場所へと上京するつもりでいた。
応援の言葉はなかった。なかったが、皆の驚く顔は“希望に満ち溢れた顔”であることは確かだった。
白
涙や鼻水をダラダラと垂らし、少し気が早い初兎ちゃんに『ありがとう』と微笑んでから、いむがその痴態をいじってみせた。
水
水
白
楽しい時間は瞬く間に過ぎ去り、重たい足取りで帰宅してはリビングへと向かう。
桃
己の部屋に到達するまでには、リビングという“大きな壁”を越えなければならない。
電気も灯らず、テーブルとセットで置かれた椅子に腰掛け、蚊の鳴くような声で出迎える母の声。
『挨拶はしたんだ』そう言い聞かせ、母の隣を通り過ぎようとした刹那。
己の腕を、ちぎれてしまいそうな程、強く掴む母の手に阻まれた。
桃
またか。
そんな軽々しいはずがない感情が、己の心に居座り続ける。
だが、実際には“いつも通り”の母で、“進学”ではなく“就職”を望む母の悲痛な叫びであった。
地を這うような声が響き渡り、その椅子から立ち上がる母の手は、次第に俺に縋るように纏わりつく。
桃
父は家族を捨てた。
何度でも言おう。
父は家族を捨てた。
俺が中学2年生の頃。
家族に愛想を尽かしたのか、子供が邪魔だったのか、父は忽然と姿を消した。
そして、父の勤め先は大手不動産。次期社長にまで上り詰めたが、確信を得られるまで残り1歩といったところだった。
その決定的な1歩は、社長の箱入り娘と結婚をすることだった。
いわゆる売れ残りで、添い遂げるには相当の覚悟を要するだろう。が、父は利益を求め、そちらを選択した。
最王手の業界にはよくあることで、証拠を会社に送ろうが揉み消され、貯金も全て持ち去られてしまったため、民事にもかけることはできなかった。
結果、母は豹変。
本気で愛していた故の怒りと、裏切られた事への失望が、膨大なものと成り果て、息子を縛り付けた。
桃
父が悪いのだ。
海を亘り、首席で合格の座を奪い取り、母に何ひとつ不自由なく老後を過ごしてもらいたい。
命を削る理由ができた。
首席でも何でもやってやる。
黒く染ったルーズリーフを濡らしながら、その隙間に殴りつけるように書き綴った。
黒
桃
全てが積み重なり、上手く笑えないでいた。
毎日荒れ狂う母と、伸びきらない結果と、打ち明けたからには受からなきゃならない、というプレッシャーによる負荷。
のしかかっていた重荷が、皆に気を使わせるほど不格好に現れていた。
水
白
突拍子もない誘いに驚きつつ、瞬時に俺を気遣ってのことだと悟る。
裏山は、町外れにあるイオンモールの裏にある山で、
幼心が燃え盛っていた頃は、よく虫だの動物だの、あわよくば“山の神様”だの、探しまわっていた。
でも、想像力のかけてしまった大人はあの山を“禁足地”だと噂している。
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黒
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あの遊び盛りだった小学3年生頃に思いを馳せ、気づけば笑顔になるほど語り合っていた。
流れる川の音が耳を包みながら、更に麓へと進んでいく。
桃
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水
麓に着くと、いむの大きな歓声が辺りに響いた。
青
白
綺麗な景色を期待したが、辺り一面山景色であった。
黒
アニキの声が耳を包み、一斉に後ろに振り返る。
指を指されたその先には、神様を祀る“摂社”が佇んでいた。
好奇心からそちらに歩み寄り、揃いも揃ってまじまじと摂社を探り出す。
白
桃
古びた鳥居に書かれた『大神様』という綴り。初めて目にした神様だ。
再び目を凝らした刹那。
後ろから押されたような衝撃で、その鳥居に身をぶつけた。
桃
青
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表を上げると、古びた鳥居の横棒が、歪な形を残して折れていた。
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桃
青
迷信を信じ怯える3人と、迷信を信じていない俺らの嘲笑。
あるわけがない。あろうとも、何人足りとも怖くない。
お化け屋敷だのなんだので、ひと言も驚きを言葉にしたことが無い俺が保証する。
桃
黒
折れた鳥居の欠片を置いて、古びた摂社を背に歩き出した。
変わらず勉強に精を出していた頃だった。
予備校にも通えず、己の力でのみ挑む受験生には致命的であろう。
桃
突拍子もない激痛が、己の左手首を襲う。
視線を落とせば、手首がこれでもかと赤く腫れ上がり、悲鳴をあげている。
四六時中机に向かい、ペンを握っていたための腱鞘炎だろうか。
そして、これほどまで突然として発現するのかと驚く自分もいた。
桃
そう吐き捨て、机の一番下の引き出しにある湿布を取り出した。
ひんやりとした感覚が手首を伝い、薬品の苦い香りが辺りを漂う。
不自然なような発現に集中が削がれ、今日はここまでにしよう。そういってベッドに体を横にした。
疲労感から重たくなる瞼に身を任せ、瞬く間に意識がシャットアウトした。
『よっつ、よにんめ』
『病に犯され卒倒す』
桃
荒くなる呼吸と、頬を伝い滲む汗と共に目が覚めた。
不思議な夢を見た。
初めて耳にする声色なのに、どこか聞き心地のいい好青年の声。
そして、説明し難い空間に浮いているような、不思議な感覚だった。
そのうえ、意味の知り得ないことばかりを口にしていた。
大層夢見心地が悪く、再び寝付けるような状態では無かったためにスマホを開く。
桃
相も変わらず汚れた教室に飛び込んだ。
遅刻した末の3時間目の古典の授業。
古典の教科担任は年配の女性教員であり、気に入った生徒以外は目の敵にする『畜生』という2つ名もある。
そんな教科担任が務める時間帯に目を覚ました己を大層憎く思う。
桃
桃
まさか『寝坊です』なんてバカ正直に話す訳にもいかず悶々としていると、教科担任の視線が少し下に傾いた。
桃
まさか許しを頂いたと驚きながら、足早に己の机へと向かう。
周りには、笑いを堪え表情を歪めるクラスメイトらが、視線のみをこちらに向けていた。
桃
青
隣の席に位置するまろが、笑いながら己の左手首を指さす。
青
左手首に視線を落とすと、昨日発現した幹部に貼っていた湿布が光る。
どうも俺は手首を切り付け、ストレスを緩和しようとしている者だと思われてしまったらしい。
桃
青
桃
青
桃
桃
驚きから声が溢れると、途端に教員に見つかった。
そのせいで耐えきれなくなったクラスメイト複数名が、笑い声を密かに零していた。
青
桃
“バカは風邪をひかない”と言えてしまいそうなほど、アニキは風邪を引いたことがなかった。
1年、2年は皆勤賞だったが、3年になってとうとうインフルにかかり、まさか倒れてしまった。
桃
『病に卒倒す』
その言葉が脳裏を過ぎり、ハッとした。
桃
なんて惚けながら、机の中から参考書を取り出し、内職を始めた。
今日も疲れた。と抜かしながらベッドに入る。
まさかのアニキがインフルエンザにかかるというイレギュラーや、己の左手首が腱鞘炎になったこと。
遅刻し内職がバレ、結局反省文を書かされたこと。
我ながら荒れていた一日だったと思う。
明日も早いため、瞼をそっと閉じた。
『みっつ、さんとめ』
『足おりて謹慎す』
再び汗で身体を濡らしながら飛び起きる。
またもや不思議な夢を見た。
そして、また同じ過ちを犯さぬようスマホの画面を急いで開く。
充分と言えるほど間に合う時間帯で、ゆっくりとベッドから立ち上がり制服を探した。
1時間目は体育の授業。
試合とし、丁度11人ずつに別れてサッカーをしていた。
皆、女子が関心深く観戦しているために気合いは充分で、サッカー部や運動経験者が腕を鳴らしている。
己すらもそれの一部で、掛け声と共に燃え上がっていた。その時だった。
水
近くで、走っていたほとけが躓いたように転倒する。その際、不自然な方向へと曲がる足首と目が合った。
桃
水
そう言って足首を摩るいむ。その足首に視線を向けると、おかしな方向に曲がっている左足があった。
赤黒く染まり、痛々しいガワに眉を顰めた。
桃
見てしまえば患部は鋭く痛む。
そうして、いむの瞼を手のひらで覆いながら声を張り上げた。
わらわらと駆け寄ってくる教員と生徒らを他所に、いむが痛がりながら蚊の鳴くような声を絞り出した。
水
水
桃
その言葉に耳を疑った。
独りでに走って躓いただけであろうに、いむの証言は俺の見た光景と異なっている。
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桃
動揺のあまり瞼から手を離してしまうと、いむが患部を見据えて再び苦痛を声にする。
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水
桃
水
瞬く間に肩を貸され、コート外へと出ていく後ろ姿を見届けながら、いむの背中にある“靴裏の跡のような汚れ”と視線が重なった。
体育の後の授業、科目は現国。
体育の疲労、気疲れ、焦燥で塗れていた。
グルグルと駆け巡る思考は途切れず、必要に纒わりこびり着く。
いむへの心配と共に、“いむがスピってしまった”のではないか。という不信感が肥大化する。
まるで“見えないなにか”に襲われたような供述に度肝を抜かれた。背中の跡はただの地面にあった足跡であろう。
なのに、何かに怯えているかのような面持ちが、常に脳裏にこびり付いている。
桃
これからの交友関係を懸念しつつ、机に突っ伏しながら重たい瞼を閉じた。
『ふたつ、ふたりめ』
『夜道に襲はれき』
『____』
『__こ』
『__き___て、ないこ!』
青
身体を過剰に揺さぶられながら目を覚ます。
意識が戻ったと同時に、まだ朦朧としつつも椅子から立ち上がる。
桃
桃
普段から真面目に生きているからか、居眠りでも大目に見てもらった場に安堵し、胸を撫で下ろした。
桃
桃
自室で勉学に励んでいた頃だった。
腱鞘炎に表情を歪めながら、ただひたすらに目標へ向かって走る。
その刹那、自室のドアが開かれる。
桃
桃
「夜道で刺されたんだって」
桃
机から母へと向きを正したのも束の間、母に『ないこも気をつけなさい』と吐かれ、その場を後にしてしまった。
寝るに寝付けないため、ベランダの柵にのしかかりながら、まろと通話を繋げていた。
青
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青
桃
労いにも歯切れが悪い返事を垂れると、どこまでも優しいまろは痺れを切らずに問うてくる。
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桃
己の口を、恐る恐る開いた。
口に出してしまえば、それは事実と成りえるからだ。
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驚きから詰めることもせず、深掘りを続けるまろに呟くように伝えた。
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『次はまろかもしれない』
そんな言葉は出るに出ず、悶々としながら黙り込んでしまった。
青
青
会話を成立させようと献身する声。ただその声はどうも震え、動揺を隠しきれていない。
そんなまろに追い打ちをかけるかの如く、恐る恐る打ち明けた。
桃
桃
桃
そう、全てはあの裏山に登った先で起きたハプニングのせいだ。きっとそう。
俺が神様なんて微少にも信じていなかったせいで、鳥居を直さなかったせいで、周りが大変な目に遭っている。
罪悪感と打ち明けた開放感から、涙と嗚咽が止まらなかった。
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青
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焦りか涙か知り得ぬが、震えつつも声を絞り出すまろに再び涙が溢れた。
そして、突拍子もないことを吐き捨てる。
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出てればすぐに表にて待っていたまろの姿。
桃
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その言葉を合図に、共に歩みを進めた。
山頂目前の岩場で必死に足を上げた。
山頂付近は既に夜が更けつつあり、少々光が射し込んでいるために足場は確かである。
青
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桃
踏み込む足は更に強くなり、着実に一歩ずつ進んでいた。
桃
到達すると、歩みを止めずにいた疲労がどっと溢れてくる。
荒くなる息と共に摂社を探して見渡した。
青
まろが指を指した方向を見据えると、そこには“おおみわ”と書かれた摂社が佇む。
急いで駆け寄り、その前にしゃがみ込んだ。
桃
桃
桃
青
桃
『こら、ダメでしょ』
気づけば、見ず知らずの場所にいた。
桃
大きな河の先には満月が光っている。
その満月の光から影が伝い、こちらまで伸びている。
桃
恐怖から友の名を呼ぼうと、どこかに行ってしまったのか返事はこない。
そしてその言動が、神の怒りに触れた。
赤
瞬く間に目の前に現れたのは、先程の声の主であろう“青年”だった。
ただの青年ではなく、天狗のような羽に着物。長く鋭利な爪が己の顎を持ち上げる。
桃
赤
赤
赤
桃
初めて耳にする名の、何を司るかも知り得ない神様。
赤
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桃
神様だなんて、スピリチュアル的な物の化身だとしか思っていなかった。
なのに、その神様が、身の前に。
赤
そう言った彼は、大きな両手で俺の両頬を覆った。
赤
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赤
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赤
言葉を失った。
否、言葉がみつからなかった。
全ての発端は俺なのに、みんなが完治しない大きな傷を負った。
みなの安否とは別に、恐る恐るひとつの疑問をぶつける。
桃
桃
桃
桃
つっかえた俺に間髪入れずに口を開く。
赤
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赤
赤
桃
赤
赤
赤
赤
もう、ダメだ。
何を言ってもダメなんだ。
嫌という程、身をもって痛感した。
全てを巻き込んで、全て俺のせいで不幸になってしまった。
桃
赤
赤
腕と羽に包まれ、意識を手放した。
『あの山?』
『あぁ、入っちゃいけないよ』
『大神様が出る』
『バカな子らがいてな』
『摂社に封印されてた力を解いちまったんだ』
『不運なこた、解いた子が魅入られちまってな』
『すごく頭が良かったんだ』
『なんでもできて、外国にいくつもりだったげな、魅力的なもんだ』
『周りの子みんな祟られよって』
『結局連れてかれただ』
『でもな』
『その子も神の遣いとして“出る”んよ』
『ぬらりひょん様かなぁ』
『美人さんじゃったけぇ、その子やろうなぁ』
『その子?』
『いっつも泣いとるんやて』
コメント
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初💬 失礼します🙇🏻♀️💧 ホラーよりなこのお話めっちゃ好きです> < ♡ 💝様 の書き方、雰囲気が本当に小説っぽくて何回も読み込んでます😭😭