コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
体育祭当日
昨晩はあんま眠れなかった
それでも自分を信じて
練習の成果を発揮するだけだ
宮田
東吾
宮田
宮田
宮田
(拳を合わせる)
東吾
少年漫画の世界に生きてんのかよ
東吾
糸は約束通り
見学として登校していた
本当に一切参加はしないようで
端っこの木の下に突っ立っている
ずっとそうしているつもりだろうか
俺はすぐに教室から椅子を持ってきた
東吾
西都
西都
東吾
東吾
西都
西都
西都
東吾
西都
確かに日焼け止めによって
肌がいつも以上に白い
東吾
西都
西都
西都
西都
東吾
西都
西都
西都
西都
東吾
西都
西都
東吾
西都
西都
東吾
西都
東吾
西都
東吾
西都
東吾
西都
西都
東吾
その励ましが
何よりも力になったんだと思う
まず、コートに並んだ時点で
やけに落ち着いていた
生徒
生徒
生徒
生徒
後ろからごちゃごちゃ聞こえたが
心底気にしないようにした
先生
先生
スタートダッシュも順調だった
軸がブレない
身体が軽くて
足もちゃんと動く
腕も大きく振れていて
ぐんぐん風を切っている
歓声に混じって
あの人の声が聞こえるとかはなかったけど
見守られているようだったし
見せつけようと思った
一瞬、他の人に足が引っ掛かりそうになったが
サッカーの経験を活かして上手くかわした
気付くと宮田を抜かし
陸上部の部長と並んでいた
あれ?
意外と速いんじゃね?
とか内心抜かしつつ
だがギリギリの差で追いつけず
結局陸上部が優勝し
俺は2位だった
東吾
息切れが心地良い
生徒
係の人から紙製の銀メダルを掛けられる
ビリと転倒を免れた安堵で
呆然と突っ立っていると
後ろから背中を叩かれた
宮田
宮田
東吾
宮田
宮田はめちゃくちゃ笑顔だった
まさかわざと負けた?
いや、こいつはそんな奴ではない
そこは、絶対に
宮田
東吾
宮田
東吾
宮田
宮田
東吾
来年もやる気なのかよ
勘弁してくれ、と思ったが
予定ができるのは良いことかもしれなかった
忘れてはいけないが
他の種目も普通にあるわけで
クラス対抗リレーでは
二人抜かして一応クラスに貢献した
綱引きや大玉転がしでは負けたが
皆が騒いでいる中にいるのは割と楽しかった
途中途中でふと
糸はどうしているかと気になった
熱中症予防の為、昼に閉会式を終えた
それまで抜けるタイミングがなかった為
日焼け止めを返すのと
レースの感想を聞くのも含め
早く木の下に行こうと思っていると──
女子生徒
ほぼ話したことのない女子から肩を叩かれた
女子生徒
女子生徒
……ん?
女子生徒
女子生徒
女子生徒
予感は当たった
東吾
足の速さで告白されるのは
中学生までかと思っていた
高校生もなんだ
と、一瞬失礼なことを思ったが
『ずっと』と言ってるので多分違うんだろう
こっちが何も言えないでいると
相手が気を遣って語り出した
女子生徒
女子生徒
助けたっけ
女子生徒
覚えてないことが何となくバレてるな
女子生徒
女子生徒
女子生徒
女子生徒
あー、そういえばそんなことが
一年前くらいにあったような
女子生徒
……なるほど
女子生徒
女子生徒
女子生徒
女子生徒
女子生徒
東吾
走りを褒められてつい返事してしまった
女子生徒
女子生徒
女子生徒
女子生徒
女子生徒
東吾
笑いながら語りつつ
手が震えているのが見えた
告白されるのは初めてだ
この人は結構可愛い
し、勇気もある
もし付き合ったら
周囲から騒がれるんだろうけど
悪い気はしないのかもしれないし
一回は誰かと付き合う経験が
あるに越したことはないかもしれない
もしキスとか迫られたら
上手く対応できる自信はないが
それも慣れのうちだろう
もしレアな確率で長続きして
学生結婚とかになったとしても
そういう人生もあるんだろう
そこまで考えて
『いいよ』と答えそうになった時
糸の顔が浮かんだ
なんでかはっきりとは分からないが
浮かんで離れなくなった
東吾
東吾
気付くと
決まりきった台詞を口にしていた
『一旦考える』と付け足そうか迷ったが
保留は逆に嫌われそうだとも思う
女子生徒
女子生徒
女子生徒
女子生徒
女子生徒
東吾
咄嗟にそう返すと
女子生徒
女子生徒
誤魔化すように笑いながら去っていった
多分この後泣いたりするんだろうと思うと
居た堪れない気持ちになる
自分の返答を後悔しかける
でも、間違いではなかったと思った
まぁこういうこともあると思って
取り敢えず早く木の下に行こうと思った
糸の姿はなかった
もう帰ったのかと
少し残念に思いながら
周りを見回した時
校舎の方に駆けていき
風に揺れる髪が見えた
──やばい、多分見られた。
途端、レースの時のように
足が地面を蹴り上げていた
つづく