若井滉斗side
次の日、俺は朝起きてすぐ鏡を見た
どれだけ自分が透明になったか知りたかった
きっと昨日の出来事で透明化が進んでいるのはわかっていたから。
俺のお腹や背中の透明化していた部分が大きくなっている
右手の小指だけでなく、薬指まで透明化している
左の足の親指がなくなっている
段々、自分の身体が透明化していく
日に日に透明な部分は大きくなっていく
それは俺が透明病だから
透明病になったのは元貴たちに無視されるから
俺が無視されるようになったのは俺と別れた涼ちゃんが元貴と付き合い始めて俺のことが邪魔になったから。
言葉にするとこんなに簡単だ
でも、俺の心はまだ複雑なまま。
また、三人で笑い合いたい。
そう思っているのに透明化は進む
俺の気持ちを無視してどんどん病気は進行していく
元貴と涼ちゃんとの間の溝は埋められないまま。
苦しい
テレビを大音量でつける
苦しい気持ちを一時だけでも忘れたい
苦しい気持ちをないものにしたかった
部屋中にテレビの中のアナウンサーの笑い声が響き渡る
頭を空っぽにしたい
記憶を全部消してしまいたい
昨日、元貴に透明病を打ち明けたときの元貴の反応も
今元貴と涼ちゃんから無視されているという現実も
自分が透明病であと残りわずかな命しかないことも
全部全部、俺の記憶から無くなって仕舞えば
ないことにできるのに、な。
だけど記憶は消えてくれない
忘れようと思っても忘れられない
それはどうして?
忘れたいのに、忘れられないの
それは俺の心が弱いから?
俺の勇気が足りないから?
全部全部本当だけど、全部違う気もする
ニュースを消す
もうそろそろレコーディングに行かないといけない時間だ
いつもよりもちょっと早いけど、家を出ることにした
イヤホンでギターのフレーズを聞き直しながら家を出る
朝日が眩しい
このレコーディングルームまでの道も、あと通るのは何回だろうか
そんなことを思いながら歩いているといつのまにかレコーディングルームについていた
誰もいないだろうと思ってドアを開ける
しかしそこには元貴の姿があった
元貴は俺と目があった瞬間俺の右手を見た
そして複雑そうに顔を歪める
大森.
元貴は持っていた携帯を机に置くと、俺の方を向いた
若井.
大森.
若井.
大森.
若井.
若井.
大森.
若井.
大森.
元貴はそのまま俯いた
元貴の顔をよく見ると目が赤く腫れていた
大森.
元貴は小さく呟いた
そして俺の顔をしっかりと見た
なぜか、泣いてしまいそうになった
どうして?
もう元貴には期待しないって決めたよ
なのにどうしてそんな態度を取るの?
最後に切り離すなら、もう優しくしてくれなくていいよ
俺はまた、元貴を期待してしまうの?
昨日嘘でしょって言われて逃げたれた傷は消えない
ずっとずっと痛み続ける、透明になって消えるまで。
なのに、そんな目で見られたら
また期待をしてしまう
ねぇ、元貴。
期待しても、いいの?
こんにちは✨
1500いいねありがとうございます😭 感想も有り難く読ませていただきました!
この作品もいいねと感想よろしくお願いします🤲
次の話も楽しみに待っててくれると嬉しいです✨
それではまた!
コメント
6件
やばい続きが楽しみすぎます
期待したいよ………… でも信じられないよね… うわぁもう苦しい……………… 次mtkさんがなんて言うか楽しみ…! どうか救われてくれぇっ!!