冷たい潮風が吹き 穏やかな波音が響く。
気が付くと 俺は海辺にいた。
今は真冬なのに あまり寒くなかった。
何となく海辺を歩き続けた。
ただただ、ひたすら……。
”あいつ”のことを 考えながら───。
ふと顔を上げると ニコッと微笑んでる人がいた。
俺よりも ほんの少し年上の女。
雪のように真っ白な肌。
風になびく焦げ茶色の髪。
ほのかに香る甘い匂い。
間違いない。
”あいつ”だ。
誰よりも大切な、 ……俺の好きな人。
カーテンの隙間から差し込む 太陽の光が眩しい。
スマホの画面を開き 時間を見る。
午前7時
スマホを放り投げて ゴロンと寝返りを打つ。
”あいつ”に想いを 伝えられますように───。
布団に潜って目を瞑り そっと願い事をした。