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ノア
ノア
ノア
静けさに包まれる浴室
ただ換気扇の音だけが響く中
直哉は震える手で右顔面を 覆っていたガーゼを剥がす
直哉
直哉
直哉の右顔面は赤黒く変色しており
手で抉られた部分は現代医学を 持ってしてでも直せないほど
異様に変形していた
笑顔を作ろうとすれば顔の右半分が醜く歪む
直哉
直哉
喉の奥から酸っぱいものが込み上げる
自分の顔
何よりも誇り、他者を見下すための 武器だった『美貌』が見るに堪えない汚物となっていた 直哉は激しい吐き気に襲われ 胃酸を吐き出す
直哉
視界が滲む だが瞳を閉じれば真希の瞳が、 暗闇の中から自分を射抜く
怒りでも憎しみでもない ただ『ゴミ』を掃除するかのように 冷徹で、圧倒的な支配者の眼差し
直哉
今では女性に話しかけられるだけで背筋に 氷を当てられた時のような悪寒がはしる 女性の手を見るだけで 自分の顔を抉らた時を思い出し過呼吸になる
『女の分際で』と見下していた存在が 今では自分を容易に噛み殺す『化け物』へと 変貌していた
直哉
直哉
直哉
直哉
直哉は己の顔の傷を指でなぞる 硬く冷たい傷跡 それは、真希が刻み込んだ『隷属の証』だ
直哉
鏡の中の『怪物』が力なく笑う その瞳には人間不信と一生消えることのない 『真希』というなの、恐怖が渦巻いていた
ノア
ノア
ノア
ノア
薄暗い一族の離れ かつて「無能」と吐き捨てた連中がいた場所 そこに直哉は膝をつき震えていた
真希
真希
直哉
真希の冷たい声が上から降ってくる 彼女は椅子に腰掛け片手に冷めきったお茶を持っていた
バシャッ
わざと直哉の足元にこぼすように置いた
真希
真希
直哉
直哉
直哉は顔の右側に刻まれた 深い傷をあらわにしている 真希の前では『印』を隠すことを許されず 剥き出しの醜態を晒さなければならない それが『飼い犬』としてのルールだった
直哉
震える口で直哉は液体を啜る かつて女中を侍らせ、酒を煽っていたその口は 真希の気まぐれに縋るためにあった
真希
直哉
真希
真希直哉の瞳にはかつての傲慢さの欠けらも無い 真希に捨てられないように必死とも言えた 真希に捨てられるすなわち『死』を意味する
真希にとって直哉は既に復讐の対象ではなかった 自分を蔑む一族の『威厳』は 『壊れた置物』のように客が来れば奥に隠し 時に傷をなぞり優越感に浸る ストレス発散の道具でしか無かった