5月。高校へ入学してから約1ヶ月経った頃のことだった。
私はこの事故で全てを失った。犯人は石田という40代のトラック運転手だった。
お母さん
りんか。。。りんか。。。置いて行かないで!
お父さん
どうして。。。
律
お姉ちゃん!
石田
すみません。。。
お父さん
お前、謝って許されると思ってるのか!もうりんかは、帰って来ないんだぞ!顔も見たくない。早く帰れ!
石田
本当にすみません。。。すみません。すみません。すみません。
お父さん
お前が死ねば良かったんだ!殺してやる!
お父さんは殺意に満ちた目で石田さんを殴りかかった。
医者
吉田さん!落ち着いて下さい!
見ていられなかった。お母さんは狂ったように泣き崩れ、律は呆然と私の遺体を見ている。お父さんは完全に我を失っていた。
りんか
やめて。。。
私は死んだのだ。もう何も失うものなどない。どこへでも連れて行ってくれ、お願いだから。そう思ったときだった。
?
なにを言ってるの?あなたは死んだりしないわ。
りんか
誰?
?
大丈夫。あなたは死なない。これは夢だから。だから私は誰でもない。
これ以上の会話は覚えていない。気づいたら私は自分の部屋にいた。
お母さん
りんか!いつまで寝てるの?!
りんか
お母さん。。。生きてる?
お母さん
何言ってるの!早く起きなさい!遅刻しても知らないから!もう、いつになったら自分で起きれるの!
時計を見ると7時半だった。学校が始まるのは8時だ。。。
りんか
ん?やばい!
お母さん
朝ごはん食べてる暇もないからね!急いで!寝ぼけてないで
りんか
はい!
りんか
(夢、だったのか)
あや
なんでりんか今日遅かったの?笑まぁいつもだけど今日は特に。
りんか
悪夢見たんだよー💦あれはほんとにリアルだった!
あや
どんな夢よ笑
りんか
なんか私が交通事故にあって死んじゃって、みんなが泣いてる夢。。。
あや
それ、悪夢か?交通事故は確かに悪夢だけど泣いてくれる人がいるだけ幸せだよ!もう、そんなことで遅刻とかやめてよね!りんかあと一回で反省文とトイレ掃除なんだからさー!私巻き込むくせに笑
りんか
あー!そうだった!
あや
気を付けてね!
あれはただの夢だったみたいで今のところいつも通りだった。
りんか
ただいまー!
お母さん
おかえり!ご飯もうすぐだから先にお風呂入って!
りんか
はーい!あれ、律は?
お母さん
あんたと違って部活してるからねー笑まだ帰って来てない
りんか
うるさいなー笑じゃあお風呂入るからね!あ、でも今日はご飯お父さん待たないんだね!
お母さん
。。。
りんか
どうしたの?
お母さん
りんか、よっぽどショックだったのね。。。
そう呟いたお母さんの視線の先には我が家にあるはずもない仏壇があった。
お母さん
お父さん半年前に死んじゃったのよ。交通事故で。りんか、ゆっくりでいいからね。無理に忘れようとしなくていいの。だんだん頭が整理されるから。。。だから、大丈夫だから。
りんか
お父さんが、事故?何言ってるのお母さんなんかショックなことあったの?お父さん、生きてるよ?
お母さん
りんか。。。そうね。りんかの心にずっとお父さんはいるからね。
りんか
だから違うって!お父さんは死んだりなんかしてない!
律
ただいま。あれ、2人とも何してんの?
りんか
お母さんがお父さんは死んだとか言うから。
律
姉ちゃん何言ってんの。母さん、ちょっと姉ちゃんと外で話してくるから。
お母さん
分かった。お姉ちゃんよろしくね、律。
律
ほら来て、説明するから。
りんか
律まで何言って。。。
律
とりあえず来て!
そう言った律の目があまりにも真剣で、私は律の話を聞く事にした。
律
姉ちゃんは多分ショックを受けて忘れようとしてるんだと思うけど、母さんは父さんが死んでからずっと落ち込んでたんだよ。最近やっと笑ったんだ。だから姉ちゃんも俺も、もっとしっかりしないといけない。姉ちゃんの気持ちも分かるけど、母さんの気持ちも分かってあげて欲しい。
りんか
。。。律
りんか
ごめん、そんなつもりはないの。多分自分でも分からないくらいショック受けてたんだと思う。ごめん。お母さん支えないとね。
律
お姉ちゃんも抱え込まないでね。
りんか
ありがとう。
律が言ったことが理解出来たわけではない。分からない。お父さんが死んだ?どうして。昨日まで笑ってたお父さんが死んだ?そんなわけがない。なのになぜかそれは事実なんだと感じた。律の言葉を聞いて、律も傷ついてるって分かったからかもしれない。