…何?ナンパ?
傷心バカンスも兼ねていつものビーチとは違う、家族連れの溢れる海岸でパラソルを拡げてシエスタをしているところを
アソビに慣れてそうだけれど歳の離れた、大学生くらいの男の子に急に話しかけられた事に少し不快感を感じた。
…なんだ、意外とスマートな誘い方知ってるじゃないの。
でも調子に乗ったお坊ちゃんの思い通りになるのも癪(しゃく)だし、
体良く奢らせて軽く話して、向こうがやる気になる前に袖にすれば良い。
暇つぶしも兼ねて、お坊ちゃんについて行くことにした。
…確かにお坊ちゃんは一杯と言った。
言ったけれど…
海の家のおじさん
…なんでかき氷なの!?
海の家のおじさん
海の家のおじさん
…別にカノジョじゃないわよ。
そのぼやきはおじさんの耳には入らなかったのか、おじさんは氷を削る作業に取り組み始めた。
年季の入った自動削り機が唸りを上げ、シャーッ、シャーッと器に雪を降らす。
その二つの純白の山の頂に赤と青、それぞれのシロップの雨が降り
じんわりと氷の山が色づいていく。
シロップを存分に吸った山に練乳がかけられ、さくっとストローが刺される。
海の家のおじさん
かき氷を坊ちゃんに渡してサムズアップをするおじさんを背にして、海の家の横のイートインスペースへと足を運んだ。
シャクシャクと子供のようにかき氷を頬張るお坊ちゃん。
…今までのオトコ達とは違う、本当に子供っぽい男。
…航海士?
ちゃらんぽらんに見えてしっかりした定職には就いてるのね…
…まあ、1ヶ月海に出てることもあるっていうからね。
…え?
…このお坊ちゃんは何を言っているの?
困惑する私をよそに、傍らのレジャーバッグから取り出した手帳を見せてきた。
幽霊の母親
女性の母親が、依頼料を手に深々と俺に頭を下げる。
幽霊の母親
幽霊の母親
幽霊の母親
幽霊の母親
幽霊の母親
カノジョを送るべく砂浜に焚いた、 送り火の煙が空に登るのを二人で見届けた。
#TELLER文芸部 あかいとまとさん案
テーマ:同音異義語 追加お題:色付く