第七話. 「焦りはスパイス」
勧奈ーKannaー
な、何ここ……?
花楓ーKaedeー
すっごい変な場所……。
続いて、僕達は 二つ目の扉の先へと足を進めた。
僕らが入ったその場所は、一見するとただの書斎……の、ように見えたが、
ラミラ
パフ
本当に、此処はどういう場所なのかしら
小山ーOyamaー
至る所……壁や床、見るからに古そうな本の表紙にまで、誰かの眼が生えていて、それがギョロギョロと蠢いていた、何とも気持ち悪い場所であった。
何とも言えない不気味さと非日常感に背筋を凍らせながら、僕はふと、本の山を見上げる。
ざっと見ただけで、一万冊以上はあった。 不気味だが、きっと此処は図書館なのだろう。
消愿ーSyogenー
謎のカウントダウンは何なのでしょう?
不意に、消愿さんが誰にともなく呟いた。
彼の視線の先には、天井から吊るされている、大きな桃色のモニターがある。
重要なのは、“そこに映っている数字”。 そこには、やけに禍々しいフォントで、[5:00]と映されていた。
雪ーYukiー
フレア
ツァイル
ツァイルさんが そう、 言いにくそうにモゴモゴと口を動かす。
向葵ーHimariー
近くで話を聞いていた花楓さんと向葵さんは、体を寄せ合ってお互いの安全を守り合っていた。
一見余裕そうに見える夏希さんも、カシアさんにピッタリと体をくっつけていた。 きっと、内心怖がっているのだろう。
揺籃ーYurikagoー
揺籃さんが一同に問いかける。 だが、その必要は無いとでも言うように、青野さんが首を振った。
海人ーKaitoー
扉の方をご覧下さい。……既に書いてあります。
ピンクチャン
彼が指差す扉には、こう彫ってあった。
今回は、扉に彫られたこの三つの問題が 謎解きのようだ。
そんな問題をまじまじと眺めていると、 突然背後からけたたましいサイレンがなった。
女性陣(+青野さん)の 短く鋭い悲鳴が、辺りに響く。
慌てて後ろを振り向くと、モニターに映った数が減っていくのが目に入った。
カシア
秋霞ーAkikaー
秋霞さんの声で、僕らは全員天井を見上げる。
彼女の言う通り、その天井はどんどんと “僕らへ迫ってきていた”。
このまま此処にいたら、きっと全員 潰されてしまうだろう。
小山ーOyamaー
フレア
花楓ーKaedeー
謎を解かなくちゃ!
花楓さんに急かされ、僕は扉へ向き直る。
此の儘では全員潰されてしまう。 呆けてないで、急いで考えよう。
_________________
___制限時間は、五分。 五分以内に三つの謎を解いて、此処から脱出する事が、僕達の目的だ。
パフ
これよね?
パフさんが、 一つ目の問題を指差し、僕らに問うた。
これは、漢字を当てはめる問題だろう。「漆」「板」「字」「腹」の四文字が書かれている。
小山ーOyamaー
……嗚呼、いつもならすぐに分かるのに!
普段なら、考える間もなく分かる問題。 それなのに、 タイムリミットと 落ちてくる天井と言う二つの存在があるだけで、脳がうまく機能してくれない。
指先は震え、歯がガチガチとなる。 「死」に直面すると、人(?)はこんなにも無力になってしまうのだ。
勧奈ーKannaー
消愿ーSyogenー
ワタクシが45秒以内に解いてみせます。
消愿ーSyogenー
穴に入るのは、「黒」と言う漢字です。
そう彼(または、彼女だろうか。中性的な見た目をしている)が言い放ち、落ちていたマッキーペンで穴へと書き込む。
すると扉がぼんやりと光り、何処かから正解を示すような音が鳴った。
ラミラ
パフ
続いて、僕らは二つ目の謎解きに目を向ける。
“d”の反転に、〇に2をかける。 そして、英語の穴埋め……だろうか。
ピンククン
向葵ーHimariー
混乱でうまく回らない頭をどうにかフル回転させ、僕らは考える。
〇×2……。〇²?◎?2〇? それが何を表しているのか、何を伝えたいのか、全く理解できない。
カシア
カシア
突然、カシアさんが声を張り上げる。 案の定、扉に反応は無かった。
夏希ーNatukiー
カシア
不貞腐れ、口を尖らせる彼の姿を横目で確認しながら、僕はふと、後ろを振り向いた。
瞳に映る数字……残り時間は、 3分半だ。
まだあと一つ、謎解きが残っている。 ………焦るのは良くないと思いつつ、心臓の鼓動はどんどんと早まっていた。
フレア
秋霞ーAkikaー
フレア
答えは……“本”!
興奮気味に答えた彼女の声に反応し、扉がふわりと光る。どうやら、答えは本だったようだ。
海人ーKaitoー
そういう事ですか
小山ーOyamaー
どういう事ですか?
花楓ーKaedeー
反対?はbで、
花楓ーKaedeー
が二つ、
花楓ーKaedeー
小山ーOyamaー
優しく説明され、それに納得し、頷く。
分かっていなかった雪さんや揺籃さんも、感嘆の声を上げフレアさんに拍手を送っていた。
ツァイル
最後の問題だな。
パフ
……刹那。
警告音のような、アラーム音のような… 不快感を誘う音が、背後から鳴り響く。
見ると、モニターの時間が凄まじい速度で減り始めていた。
向葵ーHimariー
フレア
揺籃ーYurikagoー
赤ちゃんグッズよ、俺達のことをお守りください…っ
どうやら、 本気で僕らを殺しに来ているようだ。
辺りはあっという間に混乱に包まれ、 皆が慌てふためく。
そんな時、雪さんが声を張り上げた。
雪ーYukiー
画数だよこれ!!!
そう、興奮気味に問題を指差し、 早口で説明を始める。
雪ーYukiー
夏希ーNatukiー
雪ーYukiー
ラミラ
ラミラさんに突っ込まれながらも、雪さんは何とか「3」と答えた。
その声に反応して扉が光り、 ギィ……と音を立てて開く。
下がってくる天井は、 すぐそこまで迫って来ていた。
消愿ーSyogenー
潰される前に!
秋霞ーAkikaー
ピンククン
転ばないように!
ピンクチャン
皆、次々に扉へと入って行く。
それに続いて、僕も入__ ろうとするが、本棚の近くで何かを探していた勧奈さんに気付いて、慌てて声を掛けた。
小山ーOyamaー
勧奈ーKannaー
今、行きます!
何かを抱えながら 急いで此方へ駆け寄る勧奈さんの姿を確認して、僕は扉の奥へと急いだ。
続く