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コメント
2件
主さんの表現?…の仕方が 好きです !上手ですね!
だいふく
薬を塗り終えたあと、再び零斗の腕に抱えられたまま、麗央はダイニングテーブルの前に運ばれた
そこには、すでに湯気を立てる味噌汁と、ご飯、焼き魚に小鉢が並んでいた
……嘘、だろ
どこにでもある、普通の朝食
けれど、この空間には似つかわしくないほど“まとも”だった
零斗
零斗が椅子に腰を下ろし、麗央をそのまま膝の上に抱きかかえる
膝の上に座らされ、背中を支えられた状態
零斗が箸でご飯をすくって差し出す
麗央
震える声でそう呟くが、即座に遮られた
零斗
零斗
麗央
見上げると、零斗の顔はどこまでも飄々としていて、怒りも嘲りもない
ただ、気まぐれに動物を可愛がるみたいに、優しかった
仕方なく、口を開ける
ご飯の温もりが舌に触れた瞬間、全身がぴくんと震えた
……あったかい
白米のやわらかさ。 塩気のある焼き魚。 だしの染みた味噌汁。
どれも、涙が出そうなほど“ちゃんとした”味だった
零斗
からかうように頭を撫でられる
けど、もう反発する気力すらなかった
一口、また一口と、零斗が食べさせてくれる
そのたびに、喉の奥がつまって、呼吸が苦しくなる
零斗
麗央
声が震えた
次の瞬間、ぽろぽろと涙が頬を伝って落ちていく
麗央
感情が、ぐちゃぐちゃだった
痛くて、怖くて、もう壊れるって思ったのに
なのに――
今、口に入るご飯は、こんなにも優しくて
零斗
零斗がため息をついて、頭をぽんぽんと撫でる
その手が、妙にあたたかかった
零斗
零斗
また箸が差し出される
何も言えず、麗央はただ小さく頷いた
ぐしゃぐしゃに泣きながら、あったかい朝ごはんを口に運ばれる
それは、救いじゃなかった
ただ、逃げられない現実を、より深く刻みつけていく時間だった
けれど――あの人(母親)といた生活では、一度も味わえなかった“優しさ”だったのも、事実だった
零斗の膝の上でぼんやりとしていると、リビングのドアが開き、龍牙がゆっくりと入ってきた
ぽつんと置かれた湯呑みを手に取り、静かな声で言った
龍牙
その目には、どこか優しさと心配が混じっていて、麗央は驚いた
龍牙のマイペースな態度の裏に、思いやりが隠されていることに気づく
続いて、蓮が重厚な足音を響かせて入ってくる
彼の視線は厳しいけれど、言葉は意外にも穏やかだった
蓮
蓮
蓮
その言葉に、麗央は恐怖とともに、どこかで守られている感覚も覚えた
最後に、朔矢が笑いながらやってきて、冗談めかして言う
朔矢
朔矢
蓮
龍牙と蓮が軽口を交わす中、麗央は彼らの間で自分が“囲われている”ことを実感した
優しさの裏に、確かな支配があった
でもその温もりに、今はまだ少しだけ、救われている気がした
だいふく
だいふく