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だいふく
だいふく
麗央
小さく呟くように礼を言った麗央に、零斗が「お利口」とでも言いたげに頭を撫でた
その瞬間、ぽつりと龍牙が言う
龍牙
蓮
蓮
蓮のその言葉に、心臓が小さく跳ねた
……部屋?
まさか、帰れるわけじゃないとはわかっていた
でも“部屋”という響きに、なぜか嫌な予感がした
麗央
そう言う間もなく、また零斗が抱き上げる
さっきよりも少しだけ無言のまま、階段を上っていく足音が冷たく響いた
連れていかれたのは、廊下の奥、重たい木製のドアの先
ガチャ
蓮が鍵を回し、開けた先にあったのは――四方が壁に囲まれた、6畳ほどの無機質な部屋
ベッドと、タンス、洗面所
窓には鉄格子。扉の内側には、鍵がない。
蓮
蓮が淡々と告げた
蓮
龍牙
龍牙
龍牙の言葉に、麗央の背中を冷たい汗が伝う
麗央
声が震えた
口に出すと、それはより明確な現実として、胸に突き刺さる
朔矢
朔矢
朔矢がふざけたように言うが、誰も否定しない
零斗は、抱いたままの麗央をベッドにそっと下ろした
けれどその手は、しっかりと麗央の肩を押さえたまま、耳元で囁く
零斗
その声音に、血の気が引く
ポンと肩を叩いて、零斗がドアを閉める
最後にガチャンと響いた“外からの鍵の音”が、麗央の自由を完全に奪った
がらんとした部屋の中
小さな天井のライトだけが、どこまでも静かに照らしている
ベッドの上で、麗央は両膝を抱え、息を詰める
……優しくしてくれたのも……これのためだったのか
食事も、薬も、風呂も――
全部、自分が“逃げられないようにするための手段”だった
逃げ場のない現実が、じわじわと全身を締め付けてくる
麗央
呟いた声が、自分でも驚くほど小さく、空虚に響いた
だいふく
だいふく