テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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第1話 - あ

2023年09月29日

#スカッと

タナカトシキ

ハナ

サキナ！

ハナ

今日なんだけど、開店前に道具の準備とかしてもらっていい？

ハナ

週末で、お客さん多いから大変なんだよね

サキナ

分かった

サキナ

何やればいいの？

ハナ

えーと、今日はカラー、縮毛矯正、カット込みのカラーのお客さんが沢山いるから、

ハナ

組数数えて、タオルとか用意しておいて

ハナ

あと、昨日の閉店で床のモップ掛け、できなかったみたいだから

ハナ

それもお願いね

サキナ

え？床の掃除も？

サキナ

昨日のクロージングはハナがいたでしょ？

サキナ

何でやる時間なかったの？

ハナ

昨日は疲れてたんだから、しょうがないでしょ

ハナ

ずっと立ちっぱなしだったんだし、もう少し家で休んでたいの

ハナ

ミーティングの時間前には店に行くから、

ハナ

それまでに準備終わらせといて

サキナ

そんな...めちゃくちゃでしょ

ハナ

いいじゃん！

ハナ

サキナは、昨日休みで体力あり余ってんでしょ？

ハナ

その体力、仕事以外で使う場面、どうせないくせに

サキナ

そんな言い方...いくら何でもないんじゃない！？

サキナ

私だって、お客さんのカットしてるハナたち以上に働いてるし、

サキナ

昨日は久しぶりの休みだったの！

サキナ

昨日も、家でカットの練習してたんだから、疲れてるに決まってるでしょ

ハナ

私の方が疲れてるし

ハナ

昨日、どれだけ大変だったのか知らないでしょ？

ハナ

土曜日で、カットもカラーも...縮毛矯正も

ハナ

私、朝から夜まで働きっぱなしで、勤務時間中もほとんど座れなかったの

サキナ

知らないよ、そんなの

サキナ

私も十分疲れが取れてない状態で今日仕事するし、

サキナ

お互い様じゃん

サキナ

こういう時はお互いに助け合うもんでしょ

ハナ

は？助け合いとか、雑用係の身で偉そうなこと、言わないでくれる？

ハナ

何のためにサキナがいると思ってんの？

サキナ

ハナこそ、私のことなんだと思ってるの？

サキナ

私が美容師国家試験合格するまでサロンで掃除を主にやる、っていう条件で入ったからって、

サキナ

なんでも仕事引き受けて雑用する必要場ないじゃん

サキナ

今日の朝はもともと仕事は言ってないけど、ハナも来るなら、私も掃除手伝うよ

ハナ

偉そうなこと、言ってないで早くお店行ってよ！

ハナ

今日、私とサキナで開店準備でしょ

サキナ

お店には行く

サキナ

でも、これはハナのためじゃないから

サキナ

お店に来てくれるお客さんが時間通りにカットしてもらえるために、行くだけだからね

サキナ

勘違いしないでよ

ハナ

もう、うるさいな

ハナ

悔しかったら、早く私に追いつけられるように頑張れば

～1週間後～

ハナ

サキナ、今週の金曜日だけどさ

ハナ

夕方の勤務までだと思うけど、夜まで伸びれる？

サキナ

は？なんで？

ハナ

最近疲れがたまってて、あんまり今日も思うように体動かなかったんだよね

ハナ

だから、最後のクロージングの時の床のモップ掛け、サキナがやって

サキナ

無理だって！

サキナ

私も秋の美容師国家試験の勉強してるし、その準備で忙しいの

サキナ

今回は、絶対に合格したいんだから

ハナ

国家試験の勉強はしたらいいじゃん

ハナ

資格の勉強を理由にして仕事休みたい、っていうの止めれくれる？

ハナ

そんなんで、本当に美容師になりたいとかいうわけ？

ハナ

この仕事舐めてんじゃないの？

サキナ

は？美容師に憧れてここに来たの！舐めてるとか...そんなことするわけないでしょ！

サキナ

なんで、私がハナの疲れを取るために必死に働かないといけないの？

サキナ

おかしいでしょ！

ハナ

そういう世界なんでしょ、スタイリストの世界って

サキナ

は？そういう世界って？

ハナ

私とサキナ、同い年なのに、もう私の方が2年のアシスタント期間終えて、

ハナ

何度も指名を受けるほどのスタイリストになってるの

ハナ

サキナは、専門学校卒業してまだ国家試験なんて受けてるんでしょ？

ハナ

2年も資格取れてない時点で、スキルがどっちが高いかなんて、

ハナ

誰が見ても分かるでしょ

サキナ

そんな言い方、いくら何でもないでしょ

ハナ

私だけじゃなくて、他のみんなも思ってると思うよ？

ハナ

サキナはあと2年は国家試験取れないんじゃないか、ってね

ハナ

だから、今度の試験もどうせ落ちるでしょ

ハナ

諦めな、って

サキナ

まだ結果は決まってないじゃん！

サキナ

なんですぐにそうやって決めつけるわけ！？

サキナ

これまですごく準備してきたし、合格する自信あるから！

ハナ

へえ～

ハナ

そうなの

ハナ

どこからそんな自信は湧いてくんの？今まで何度も落ちてきたくせに

サキナ

自分のこと信じてるから、受かる自信あるんだよ

ハナ

まあ、せいぜい頑張ってよね

ハナ

あっ！そうそう！

ハナ

私、来週の月曜日から1週間休み取って、北海道までちょっと長めの旅行に行くことにしたから

ハナ

私がいない間、私がいつも当番になってる日の店の掃除、よろしくね

ハナ

じゃあね～

～1週間後～

ハナ

エミナさん、明日、帰りますね

エミナ

ハナちゃん、旅行楽しめた？よかったね

ハナ

はい、おかげさまでリフレッシュできました

エミナ

うん、どういたしまして

エミナ

余韻も残って楽しい気分のところ、本当に申し訳ないんだけど、

エミナ

早速仕事の話しても大丈夫かな？

ハナ

はい、構いませんよ！

エミナ

ごめんね～本当に

エミナ

来週も、ありがたいことに沢山予約が入ってて、

エミナ

ハナちゃんが帰ってくる予定の次の日の午前から、早速予約できないか電話が来たの

エミナ

この日、午前休だったと思うんだけど、予約入れちゃってもいいかな？

ハナ

分かりました

ハナ

予約受け入れてください

エミナ

本当にありがとね

エミナ

いつも助かるよ

エミナ

アシスタントには、この前の国家試験に合格したサキナちゃんに入ってもらうことにしたから、

エミナ

スムーズに仕事進むと思うわよ

ハナ

え？サキナ、合格したんですね

エミナ

そう！これでまだ、戦力が増えてくれて助かるわ～

ハナ

そうですね

エミナ

じゃあ、気を付けて帰ってきてね

～翌日早朝～

ハナ

あの、エミナさん

ハナ

本当に申し訳ないんですけど、東北に近づいてる台風の影響で、

ハナ

新幹線が止まってしまったんです...

ハナ

急遽、申し訳ないんですが明日のカット、入れなくなっちゃいました...

エミナ

そうだったのね

エミナ

でも、もう心配いらないから安心して

ハナ

え？何でですか？

エミナ

ハナちゃんに最初カットを頼んだけど、

エミナ

サキナちゃんがカットしてるの見て、彼女にカットを任せることにしたの

ハナ

え？サキナがカットしてるところ、見たんですか？

ハナ

ついこの間国家試験に合格して、まだアシスタントなんじゃないですか？

エミナ

まあ、そうなんだけど...

エミナ

うちの店は基本的に、アシスタントとして下積みしながらカットの技術を学ぶでしょ

エミナ

でも、やる気とスキルがある子はどんどん前に出てもらってるじゃない？

エミナ

ハナちゃんもそのうちの1人だけど、サキナちゃん、もっとすごかったみたいね～

ハナ

え？何がすごいんですか？

エミナ

あれ？知らなかった？

エミナ

サキナちゃん、日本の美容師専門学校に在学中、成績優秀者の得点で、

エミナ

アメリカ留学への補助してもらえてたのよ

ハナ

え！？

ハナ

そんなこと、私聞いてなかったですよ...

エミナ

あら...言ったかと思ってたけど～

エミナ

私の思い込みだったかな...？

エミナ

その留学中に、アメリカで彼氏ができて、

エミナ

アメリカに住んで美容師として働いてたみたいなんだけど、

エミナ

海外で学んだ技術を日本にも持ち帰りたい、と思って今後は日本で働くことにしたそうよ

ハナ

え？アメリカって...そんなところで

エミナ

しかも！サキナちゃんね、

エミナ

有名モデルからも人気のあるスタイリストだったらしいわよ！

ハナ

え！？モデルのカット...？

エミナ

本当に、私も雑誌見た時は驚いちゃった～

エミナ

そんな子がうちに来てくれたんだもの

エミナ

これからは、どんどん指名来ちゃうかもね！

エミナ

それで、少し話がそれちゃったんだけど...

エミナ

彼女がカットしてるところを見たのは、数日前なの

ハナ

私が旅行に言ってる間、ってことですか...

エミナ

そうね！ハナちゃんの専門学校の時の友達がカットモデルとして今日、お店に来てくれて...

エミナ

サキナちゃんんがカットしてくれたんだけど、

エミナ

もう、すごくて！

エミナ

それで私から、「明日の午前に入ってる予約のお客さんのカットしてみない？」って

エミナ

私から言ってみたのよね

ハナ

え？店長から言ったんですか？

ハナ

なんで...だって、明日のお客さんはいつも私のこと指名してくれるお客さんなのに...

エミナ

そうだったんだけど...

エミナ

でも、センスとスキルとスピードとか...どこの面から見ても、

エミナ

総合的に見ても、サキナちゃんの方が美容師として優れてると思うのよね

ハナ

店長、ちょっと待ってください！

ハナ

私がアシスタントの時からお世話になってるお客さんで、信頼関係もあるんですよ？

ハナ

なのに、急に湧いてきたサキナにその関係値を壊されるなんて...

ハナ

そんなの、私は嫌ですよ！

エミナ

そんなに、自分のお客さんとの関係値は大切なの？

ハナ

え？

エミナ

サキナちゃん、確かに技術はあるしお客さんからも好評なんだけど、

エミナ

段々時間がたって疲れてくると、同僚の子たちに少しきつく当たることがあるでしょ？

ハナ

え？そんなこと、するわけないですよ！

エミナ

ハナちゃんは気づいてなかったのかもしれないけど、

エミナ

ハナちゃんに夜やるべき仕事を押し付けたり、準備を彼女に全部任せて、

エミナ

ミーティングが始まる前にお店に着くようにしていたんでしょ？

エミナ

店長の私がそれを最近知ったのは、本当に情けないと思うわ

ハナ

すみません...

エミナ

それを言ってきたのは、サキナちゃんじゃないの

エミナ

同僚の子たちなのよ

エミナ

サキナちゃんは、同僚の子たちに「店長に相談してみようか？」って言ってくれたらしいけど、

エミナ

あの子は「今はこれが私の仕事なので」って言って引き受けていたらしいじゃない

エミナ

彼女には、お客さんのために動こうとする意識が誰よりもあると思うし、

エミナ

私はそんな彼女のことを応援したいの

エミナ

ハナちゃんも、応援してくれるでしょ？

ハナ

はい、それはそうですね...

エミナ

そうときたら、これからはサキナちゃんへの指名も、どんどん引き受けるからね！

ハナ

え？もうスタイリストとして働くんですか！？

ハナ

まだ資格取ってから1カ月もたってないんですよね？

エミナ

アメリカで十分、下積みはしてきていたもの

エミナ

もう、日本で下積みする必要なんて、あるかしら？

エミナ

彼女、専門学校にいた時も、アメリカで修業していた時も、

エミナ

随分努力してスキル磨いてきたみたいよ

エミナ

私が今まで会ったこの中で、一番努力しているわ

エミナ

ハナちゃんも、そんな彼女に追いこされないように頑張ってちょうだいね

～後日談～

サキナ

私は半年もたたないうちに、エミナさんのサロンでトップスタイリストになりました

サキナ

一方で、サキナさんは私の実力を目にして、今まで取ってきた態度を改めて謝罪してくれました

サキナ

そして、今は私の次の目標である自分のヘアサロンをオープンする、

サキナ

という新しい目標を見つけて、日々頑張っているところです

サキナ

アメリカ人の彼も、日本に移住を決めてくれて、お店のマーケティングをしてくれています

サキナ

夫婦で助け合って、仕事をすることができて毎日幸せです

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タナカトシキ

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