テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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第1話 - あ

2023年09月28日

#スカッと

タナカトシキ

ガクト

なあ、修学旅行にもっていく荷物はもう準備してくれた？

ガクト

明日から2泊3日で京都にいくんだよ。

ケイト

え、明日からだっけ？

ケイト

ガクトが働いている中学の修学旅行は、毎年9月だよね。

ケイト

まだ7月なのに、もう修学旅行に行くの？

ガクト

ああ、お前は育休中だから知らないんだっけ。

ガクト

今年は学校行事の関係で、7月に前倒しになったんだよ。

ケイト

そうなの？

ケイト

私、なにも聞いてなかったと思うけど…。

ガクト

え、なにトボけてるんだよw

ガクト

先週、ちゃんと話したと思うぞ。

ガクト

子育てで忙しくて、気が抜けちまったか？

ケイト

ヘンね、ほんとに聞いた覚えが無いんだけど。

ガクト

おいおい、ってことはなにも用意してくれてないのかよ。

ガクト

育休中で暇なんだからさ、そのくらいしっかりやってくれよ。

ケイト

ごめんなさい。

ケイト

ルミが夜中に何度も起きるから、寝不足で疲れてるのよ。

ガクト

寝不足で疲れてるって？なんだその言い訳ww

ガクト

赤ん坊と一緒に昼寝してるくせに。

ケイト

そりゃ、そうだけど。

ケイト

ルミはちょっとの物音でもすぐ起きちゃうから、気が抜けないのよ。

ガクト

子供のせいにするなよ、ったくしょうがないな！

ケイト

そんなつもりはないんだけど…。

ケイト

聞き洩らしていることがあったらゴメン。

ガクト

まあ、いいよ。

ガクト

荷物は自分で用意するから。

ケイト

それはどうも。

ケイト

たまにはルミの世話も手伝ってもらいたいけどね。

ガクト

なに言ってんだ、お前。

ガクト

その為に育休を取ってるんだから、俺が手伝ったら意味ないだろ？

ガクト

俺に甘えてないで、ちゃんと母親の務めを果たせよな。

ケイト

まあ、そうね…。

ガクト

そんなんじゃぁ、来年復職したら大変だぞ。

ガクト

育児と仕事の両立なんて、本当にお前に出来るのかよ。

ケイト

そんな言い方しなくてもいいじゃない。

ケイト

あなたも父親なら、せめてルルの抱っこくらいしてほしいわ。

ケイト

いまでさえ、全然お世話をしてくれないから、

ケイト

ルルがあなたの顔を見ると大泣きするでしょ。

ガクト

赤ん坊の世話なんて、俺は苦手だって言っただろ。

ガクト

ビービー泣かれてうるさいだけだし。

ガクト

もうちょっと大きくなって、一緒に遊べるようになったら世話するよ。

ケイト

ルルは今がいちばん可愛い時期なのに…。

ケイト

あとで後悔してもしらないよ。

ガクト

赤ん坊のことはお前に任せてるから、おれはいいの！

ガクト

それよりも、学校には若い子がいっぱいいるから最高なんだww

ケイト

はあ？どれどういう意味なの？

ケイト

受け取りかたによっては、とってもヤバイ発言ですけど？

ガクト

おまえ、なに下世話な想像してるんだ？

ガクト

若い学生見てるほうが、赤ん坊の世話より楽しいって意味だよ！

ガクト

10代のコたちは、お前とちがって肌もハリがあるしな。

ケイト

やっぱり言ってるコトがなんか気持ち悪い。

ケイト

最近、あなたヘンよ。

ケイト

外でそういうコトを言わないように気をつけてね？

ケイト

変〇だと思われるから。

ガクト

なに言ってんだ、おれはそんなヘマはしないよ。

ガクト

とにかく、あしたからしばらく家に帰らないから

ガクト

留守中の事は任せたよ。

ケイト

分かったわ。気をつけて行ってらっしゃい。

～4日後～

リョーコ

ケイト先生、お久しぶりです！

ケイト

あら、リョーコ先生。お久しぶりね。

リョーコ

赤ちゃんは順調ですか？

ケイト

ええ、生後3か月になるわ。

ケイト

とっても可愛いけどお世話は大変ね。

リョーコ

でも良いじゃないですか、ガクト先生のお子さんですもの。

リョーコ

きっと可愛いんでしょうね。

ケイト

はあ、そうね。

ケイト

ところで、修学旅行のお土産ありがとう。

ケイト

なんのお茶かわからないんだけど、これ何て書いてあるの？

ケイト

パッケージの字が全然分からないんだけど…。

リョーコ

やあだ、ケイト先生はもう老眼なんですか！？

ケイト

え？

ケイト

そういう意味じゃないんだけど。

ケイト

原材料が何なのかが分からなくて、飲む気になれないのよね。

リョーコ

ああ、それは痩せる漢方薬なんですよ。

リョーコ

ガクト先生から、最近ケイトが産後太りで悩んでるって聞いたから、

リョーコ

その、痩せる漢方のお茶が、役に立つかなぁって思ったんです♪

ケイト

ガクトがそんなコトを言ってたの？

ケイト

別に産後太りなんてしてないわよ。

ケイト

むしろ母乳の上げすぎと、寝不足のせいで

ケイト

どんどんやせて、困ってるくらいなんだよね。

リョーコ

あれ？おっかしいなぁ。

リョーコ

ガクト先生は確かにそう言ってたんだけどな。

ケイト

あのさ、あなた本当に養護教師なの？

リョーコ

え、なにがですか。

ケイト

私、出産してまだ3カ月しかたってないし、授乳してるのよ。

ケイト

授乳中は、こんな得体のしれない漢方のお茶なんて飲めないわ。

ケイト

母乳にヘンな成分が混じったら大変だもの！

リョーコ

ひどい！私、ケイト先生の役に立ちたくて、

リョーコ

お土産をガクト先生に渡したのに…。

ケイト

お気持ちはありがとう。

ケイト

でも飲めないモノは飲めないわ。

ケイト

赤ちゃんのためなの。わかってちょうだいね。

リョーコ

わかりましたぁ。

リョーコ

それじゃ、子育て頑張ってくださいね。

リョーコ

ケイト先生は、復職したら別の学校に転勤するんですものね。

ケイト

その予定だと聞いてるわ。

リョーコ

ということは、次に復職されたときにはもう会えませんね。

リョーコ

だから今度は、もう少し良いモノをプレゼントしますよ♪

ケイト

いえ、別にそんな気遣いは…。

リョーコ

遠慮しないで下さい！

リョーコ

それじゃ、楽しみにしててくださいね～。

ケイト

うん、まあ…それじゃあね。

～1週間後～

ガクト

なあ、俺最近、なんかお腹の調子が悪いんだけど…。

ガクト

食材とか、ちゃんと賞味期限チェックしてる？

ケイト

もちろんチェックしてるよ。

ケイト

私は買いだめはしない主義だから、肉も魚もいつも新鮮だよ。

ケイト

お腹の調子が悪くなってきたのは、いつから？

ガクト

一週間前から…。

ケイト

あ、もしかしたらアレかも！

ガクト

え？アレって？

ケイト

ほら、リョーコ先生が京都の修学旅行に行った時に、お土産で買ってくれたお茶。

ケイト

あれ、痩せる漢方のお茶なんだって。

ケイト

水だしでも飲めるっていうから、1週間前から飲んでるでしょ。

ケイト

私は授乳中だから、飲んでいないけどね。

ガクト

あ、あれ？

ガクト

なんかアヤシイ薬局で買ってたけど…。

ケイト

え、あなた一緒にお土産を買いに行ったの？

ケイト

っていうか、修学旅行中にそんな余裕あったの？

ガクト

え、いや、たまたま見かけただけだよ。

ガクト

京都は古くて小さなお店も色々あるから、

ガクト

生徒と一緒に見て回ってたんだと思う。

ケイト

ふーん。

ケイト

まあ、あの漢方はデトックス効果があるって話よ。

ケイト

ネットで色々調べたら、そんな風に書いてあったわ。

ガクト

でもこのお茶、ケイトへのお土産だって言ってだぞ。

ガクト

なんで俺に飲ませるんだ？

ケイト

あら、だって明らかにあなたのほうが太っているじゃない！

ケイト

独身の頃よりも15キロも太ったのは、なぁぜなぜ？

ガクト

そ、それはケイトの料理が上手いからだよ…。

ケイト

私の作った夕飯を食べる前に、他でも食事をしてきてるからでしょ。

ケイト

ご飯の食べ方があきらかに苦しそうだったもん。

ガクト

そ、そんなことはないよ。

ガクト

きっと間食し過ぎたから太ったんだよ。

ケイト

いいえ、そうじゃないわよね。

ケイト

帰りも遅くなる日が増えたし、スマホもいつも持ち歩いてるし。

ケイト

ぜったい、なにか隠し事をしているでしょ。

ガクト

隠し事なんてしてないってば。

ガクト

俺を疑うのか？

ケイト

さあね。何もないなら良いけど？

ガクト

大丈夫だよ、俺はお前を裏切ったりしないよ…。

ケイト

じゃあ、信じてあげる。

ケイト

そのかわり、本当に裏切ったら承知しないわよ。

ガクト

わ、わかったよ。俺も気を付ける。

ガクト

でもあのお茶は、俺ももういらないや。

ガクト

だって授業中に腹が痛くなるんだぜ。

ガクト

生徒たちの目の前でトイレに駆け込むのはもうコリゴリだ。

ケイト

あ、そう。

ケイト

ならあのお茶は捨てておくわ。

ケイト

せっかくのリョーコ先生からの頂き物だけどねww

ガクト

あ、ああ。そうしておいてくれ。

ケイト

ええ、わかったわ。それじゃ、学校のお仕事頑張ってね。

ガクト

うん、わかった。

～２か月後～

ケイト

リョーコ先生、いつもお疲れさまです。

ケイト

学校行事の宿泊体験、無事に終わったようですね。

リョーコ

あら、ケイト先生。こんにちは。

リョーコ

私、養護教諭なので宿泊行事には必ず同行するんですが…。

リョーコ

ガクト先生も３年生最後の宿泊行事だからって、はりきっていましたよ。

ケイト

ええ、張り切ってましたね。

ケイト

なんか、宿泊行事ともなると特に気合いが入るみたい。

ケイト

たぶん、誰かさんと一緒にお泊りが出来るからかしら。

リョーコ

へ？

ケイト

ウチの夫とずいぶん仲が良いようね。

リョーコ

ケイト先生、なにを言ってるんですか？

リョーコ

なんのコトかサッパリ分からないです…。

ケイト

ウチの夫に時々夕飯をつくって食べさせてるでしょ？

ケイト

そのせいでガクト、最近も太り続けてるのよ。

ケイト

独身の頃よりも、すでに15キロも太ったのよ。

ケイト

お腹まわりとか、パンパンでしょ。

リョーコ

ええ、そりゃいいお腹をされてますけど…って。

リョーコ

そんなの私には関係ないじゃないですか！

ケイト

関係あるわよ。

ケイト

ガクトに、夕飯用のお弁当をわざわざ作ってあげてるでしょ。

ケイト

同僚の別の先生から聞いたわよ。

ケイト

保健室で、一緒にお弁当をたべているところを何度も目撃したってね！

リョーコ

え？うそ。

リョーコ

誰にも見られてないと思ってたのに…。

ケイト

保健室が密室だと思って油断していたようだけど、

ケイト

夕方、ガクトが保健室に入っていくところを見た生徒もいるわ。

ケイト

一度入室すると、1時間は出てこないそうね。

リョーコ

誤解しないで下さい！

リョーコ

ガクトさんは部活の顧問だから、ケガをした生徒を保健室に連れてきて

リョーコ

ケガの手当を私に頼んでくることがよくあるんですよ。

ケイト

あら、そうかしら？

ケイト

ガクトは今年、囲碁将棋部の顧問なんだけど。

ケイト

ケガとは一番無縁の部活だと思いません…？

リョーコ

つ、つき指する子が多いんですよ！

リョーコ

証拠もないのに、憶測で人を追い詰めるのはやめてください。

ケイト

目撃証言があるのに？

ケイト

あくまでも認めないつもりね。

ケイト

それなら証拠があれば認める？

リョーコ

ええ、証拠があるならね！

リョーコ

なにも出てこないでしょうけど、

リョーコ

逆に、名誉棄損で訴えますよ？

ケイト

名誉棄損てww

ケイト

じゃあ、証拠を提示してあげる。

ケイト

でもそのまえに、ウチの人にも話を通さないとね。

リョーコ

なにをする気ですか。

ケイト

それは後でのお楽しみよ。

ケイト

それじゃ。

～翌日～

ガクト

け、ケイト、大変だ。

ガクト

なんか俺、校長室に呼び出されたんだけど。

ガクト

リョーコ先生も一緒に来いって言われて…。

ケイト

そう？

ガクト

なんだその他人事な反応は！一大事かもしれないんだぞ。

ケイト

それを私にいうかね。

ケイト

そんなにブルってるのは、心当たりがあるからでしょ？

ケイト

リョーコ先生と一緒に呼ばれたって事は…。

ケイト

アナタたち2人の不適切な関係がバレたからでしょ？

ガクト

へ？

ケイト

私が何も知らないとでも思った？

ケイト

リョーコ先生がウチの学校に赴任してきてから、

ケイト

ずっと行動がおかしいと思ってたわ。

ケイト

同僚の先生がたにもバレバレよ。

ガクト

な、なんだって？

ガクト

お前、人を使って俺を探ってたのか！

ケイト

ううん。わざわざ頼んだりしてないよ。

ケイト

あなたとリョーコ先生のイチャイチャぶりが目障りだから、

ケイト

みんなで校長先生に訴えたんだって。

ケイト

あの二人、絶対不倫してるから注意して下さいって。

ガクト

え、そんなバカな。

ガクト

絶対バレてないと思ってたのに…。

ケイト

あのさあ、あなたもリョーコ先生も、自分が教員だってことを忘れてない？

ケイト

教師同士で不倫だなんて、生徒たちが知ったらどう思う？

ガクト

そ、それは…。

ケイト

あと、私も証拠写真はゲットしてるからね。

ケイト

アナタたちが2人でホテルに出入りしている写真とかね。

ケイト

ルミを母に預かってもらって、不倫の証拠をあつめたのよ！

ガクト

お前、なんでそこまでするんだよ。

ガクト

なにもしなければ、ずっと平和に暮らしていけたのに…。

ケイト

私はルミのママだからよ。

ケイト

教員同士で不倫するようなダラシない父親なんて、いないほうがマシよ。

ケイト

分かったら、大人しく校長先生に怒られてきなさい！

ガクト

そ、そんな…。

ガクト

まさか離婚するとか言わないよな？

ガクト

もしそんなことになったら、学校での立場が…。

ケイト

あなたの立場なんて知らないわよ。

ケイト

やらかした事の責任はキッチリとりなさいよね。

ガクト

いや…ケイト、まってくれ。

ガクト

俺は別れるのはイヤだよ。

ガクト

頼む、助けてくれよ～。

～後日談～

ケイト

ガクトはあの後、リョーコ先生と一緒に校長室でしっかり絞られたそうです。

ケイト

同僚複数人と、生徒たちからの証言で、2人は言い逃れも出来なかったみたいですね。

ケイト

私は、自分でつかんだ証拠を片手に弁護士に依頼し、

ケイト

話し合いの結果、2人から慰謝料をゲットしました。

ケイト

もちろん養育費も、ガクトに払わせます。

ケイト

無事に離婚が成立し、娘のルミの親権ももちろん私に。

ケイト

１年後に復職する予定ですが、実家の助けも借りながら

ケイト

頑張って子育てしていこうと思います。

ケイト

教師として、母として、強く生きて行こうと思うのです。

ケイト

ここまで聞いて下さってありがとうございました！

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タナカトシキ

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