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次の日。私は学校を休んだ。
熱もない。怪我もない。
ただ、体がどうしても動かなかった。
昨日の夜の赤くんの姿が、何度も脳裏をよぎる。
あれが夢ならよかったのに。
でも、ベランダに残されたわずかな足跡が、それが現実だったと証明していた。
スマホも開けなかった。
通知が怖くて、電源を落とした。
けれど_現実は、避けても近づいてくる。
夕方。チャイムの音が鳴った。
私は息を殺した。
ピーポーン。
また鳴った。しかも何度も。
赤 。
聞き慣れた、優しい声。
でも今は、その優しさが何よりも恐ろしい。
赤 。
赤 。
ドア越しに、彼の声が続く。
赤 。
赤 。
赤 。
赤 。
その声は、静かで優しい。
けれど、どこまでも深く、底の見えない愛情に満ちていた。
赤 。
赤 。
赤 。
赤 。
赤 。
赤 。
ドアの外の沈黙が、重くのしかかる。
私は、動けなかった。ただ、涙も出なかった。
愛されるって、こんなに苦しいことなんだろうか。
優しさが、こんなにも冷たいなんて、知らなかった。