顔

顔

stxxx BL 桃青 夜の仕事

自分に顔しかないなんて知ってた

でも愛されて

金稼いで

そのお金で弟に飯食わせて 学校の金とか払って

そーやってる時が1番 自分ちょっとまともかもって思えた

薄っぺらいNo.1でも

No.1って称号があれば どうでもよかった

今日もちゃんと生きてた

えらいって自分を褒めた

それで終わればよかったのに

大丈夫、たまにいる厄介客

客に本名なんて教えたことない

いや、わかるわけないじゃん

何人客いると思ってんの

最近指名断ったやつ？

わかんない、わかんない

佐藤、佐藤なんとか

最近指名断った気がする

あ、これ終わったって

本能でわかってた

だめ、だめだよ

僕、この顔がなきゃ生きてけない、

弟も守れない、生き方わかんない…

一瞬何が起こったかわかんなかった

自分の口元を撫でると 手に生暖かい血がべったりとついて

あ、これ切られたんだって

理解するとともに怖かった

カッターなんて、

もし刺さったら最悪しぬじゃん

それに、切り傷だと跡が残る…

そこからはあんま覚えてない

気づいたら病院のベッドに寝ていて

　横を見ると傷だらけの腕

　多分反射的に 顔を庇ったんだと思う

そして僕の腕を抱いて寝てる弟

働けるのかな

てか、ここの入院費も払えるかな

真っ先にお金のことしか出てこなかった

目の前にいる弟なんかどうでもよかった

ただ自分の顔が気になって

お金が欲しくて

視界の隅に目を擦る弟が映る

よかったってぼろぼろ泣き出す弟

あ、そっか

ここの入院費どうこうのまえに

今度の修学旅行のお金払わなきゃ

色々考えてぼーっとしてたら

ふと鏡に自分の顔が映る

その時全部まっくらになった

　口裂け女みたい、

誰かがそうやって 僕を馬鹿にしてる気がして

病院の先生の説明も

よくわかんなかった

弟が僕がお金を稼ぐって言ってて

駄目だよって言わなきゃと思ったのに

もう働かなくていいのかと思ったら

　言葉が詰まる

働きたくない

てか働けない

あんな面倒ごと起こして

こんな顔で

その時病室のドアが開いた

やたら顔のいい事務の桃さん

弟なんか見えていないように

まっすぐ僕の目を見つめている

弟が口を出すが

ぼくは弟の手を優しく握った

僕も働き始めたときは 高校生だったんだけど

なんて思いながら弟を売店へ促す

　歯切りが悪そうな桃さん

なんて言ったけど 正直不安で仕方なかった

今の仕事は続けられないし

この腕で労働は とてもじゃないけどできない

誤魔化しても涙は止まらなかった

　だって全部わかんないんだもん

これからどうやって 生きてけばいいのかも

弟の守り方も

誰も何も教えてくれなかった

僕も教えられない

弟がどうやってまともになるのか わかんない

優しく声をかけられて

思わず甘えたくなった

とりあえず入院してる間の 弟の面倒をみてくれると聞いて

これで弟もちゃんと生きてけるんだ

ちゃんとまともにって

そう思ったら安心した

そう言って病室を出てった