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FAKELAND

1 - ようこそ、FAKELANDへ

♥

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2025年04月25日

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目を覚ますと、そこは知らない場所だった。

地面はタイルのようなピエロ模様、空には逆さに吊られた観覧車。

チュロスの香りとガソリンの匂いが混ざる奇妙な風。

目の前には、サビついた鉄のアーチ。

"WELCOME TO FAKELAND"

ネオンで彩られたその看板の「F」は点滅していて、"AKELAND"と読めるたびに、なぜか喉の奥がざらついた。

ゲートの前には、黒いスーツを着た案内人。

顔は覆面。

表情も読めない。

けれど、その声はなぜか知っている気がした。

シロ

チケットをどうぞ

ポケットに手を突っ込むと、何の記憶もないまま、指先が一枚の紙をつまんでいた。

『入場券:1名分 "真実"との引き換えに。』

シロ

ご入園、ありがとうございます。心の底まで、どうぞお楽しみください

そう言って、案内人はゲートの鍵を回した。

ーーギギギギギィィィ。

機械仕掛けの音と共に、ゲートが開く。

その瞬間、空が裏返り、地面が笑った。

ようこそ、FAKELANDへ。

ここは"嘘"が本当になり、"本当"が死んでいく場所。

入ってすぐの広場では、パレードが行われていた。

マスコットキャラクターの被り物たちが、火炎放射器を持って踊っている。

「Rat a tat-tat-tat-tat!Ciao!」

リズムに合わせて、爆音と歓声。

鳴り響く音楽はどこかヒップホップ、どこか狂騒。

見物人たちはみんな仮面被っていた。

泣いているのか笑っているのか、判別できない顔。

カケル

……夢だよな?

呟いた声は、自分のものなのに、誰かの声みたいだった。

シロ

違うよ。これは"選んだ"んだ

後ろから聞こえた声に振り返る。

そこにいたのは、同じ制服を着た少年ーーいや、鏡に映った自分のようだった。

カケル

お前は誰だ?

シロ

俺は"お前"だよ。だけど、こっち側のな

笑ったその顔は、心底楽しそうだった。

彼は手を差し出した。

シロ

一緒に回ろうぜ、全部。ここには"ホントのモノ"しかないからさ

カケル

嘘ばっかのテーマパークで?

シロ

嘘しかない世界で、"ホント"を知るのは、一番ヤバいことだろ?

目の奥が燃えているようだった。

私は黙って、その手を取った。

歩き出すと、アトラクションが次々と見えてくる。

「カルト教団のメリーゴーラウンド」

「廃工場仕込みの絶叫マシン」

「他人の本音が聞こえるお化け屋敷」

「"自分"を引き裂く鏡の迷宮」

どれも名前だけで、脳の裏がチリつく。

それでも、足が止まらなかった。

シロ

お前、何を探してる?

カケル

……知らない。ただ、何かを"取り戻したい"気がする

シロ

いいね。その感じ。最高のゲストだよ、君は。

少年ーーもう一人の"私"は、にやりと笑った。

シロ

まずは"始まりのアトラクション"からだ

案内されたのは、大きなテント。

中からは、叫び声と、爆笑と、狂ったラップが混ざり合った音が聞こえてくる。

"THE FIRST RIDE:素行不良の喧嘩ラップバトル"

シロ

行くぞ。ここからがFAKELANDの本当の始まりだ

私たちは、テントの中へと踏み出した。

外ではネオンが瞬き、空中ブランコが宙を舞い、誰かの悲鳴がBGMのように響いていた。

"現実"が遠ざかる音がした。

ようこそ、狂気と快楽の見世物小屋へ。

人生そのものがアトラクション。

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