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咲希
咲希
(……ここは…？)
咲希
(私……何してたんだっけ………？)
大野
やっとお目覚めになりましたか
咲希
……！
咲希
……あなたは…誰…？
大野
私は｢自殺取り止め｣員の大野です
大野
よろしくお願い致します｢咲希｣さん
咲希
っ!!
咲希
咲希
……なんで私の名前を…
咲希
それに……
咲希
｢自殺取り止め員｣ってなんですか……？
大野
まず貴方の名前を知っていた件ですが
大野
自殺名簿に私担当のお客様(自殺者)の名前に
大野
咲希さんの名前がありましたので……
大野
そして｢自殺取り止め員｣についてですが
大野
貴方は｢飛び降り自殺｣をしてしまい
大野
この｢自殺相談所｣に来てしまったんです
咲希
えっ…？
咲希
言ってる意味が分からないんだけど……
大野
分からないのも無理ありません
大野
簡単に言いますと
大野
貴方は今｢生と死の迫｣にいるんですよ
咲希
えっ……？
咲希
生と死の……迫…？
咲希
私……死んじゃうの…？
大野
その決断をここで決めるんです
大野
貴方は生きるか死ぬかどちらかを選べなかったが故に
大野
ここに来てしまったのですから
大野
その決断を｢生きる｣にさせる場所が
大野
自殺取り止め場所なのですよ
大野
私はその員です
咲希
あの……
咲希
まだ分からないんだけど………
咲希
私…自殺しようとしてたの…？
大野
そうですよ
咲希
…いやいや！
咲希
絶対に有り得ないから!!
大野
どうしてそのような事が言えるのですか？
咲希
だって私は…
咲希
学校では皆に人気あるし
咲希
成績だっていいし
咲希
親だって私の事いつもいつも褒めてくれたんだもん！
咲希
自殺なんてするはずが………
大野
私には分かるんですよ
咲希
えっ…？
大野
貴方の言っていることと｢逆｣の事が起きていたことを
大野
私は知っているんですよ。咲希さん
咲希
は…？
大野
貴方はクラスの中でも陰キャと言われ
大野
成績はいいとして……
大野
それを親に言っても耳を傾けてくれず
大野
とうとう耐えきれなくなってしまい
大野
学校の屋上で自殺を測った
咲希
咲希
…なんで…？
咲希
なんで知ってるの…？
大野
では逆に何故そのような嘘をつくのですか？
大野
ここでも口止めをされているのですか？
咲希
…えっ？
大野
本当は親にいじめの事を話したかったけれど
大野
クラスの集団が
大野
｢言えば殺すぞ｣
大野
｢親がどうなってもいいの？｣
大野
と、口止めされていたんですよね？
咲希
それは……
大野
自殺をしたくなる気持ちも分かります
大野
けれど少しでも言える勇気を持った方がいいと思いますよ
咲希
………
大野
もし家族が助けてくれなければ
大野
いじめ被害者に対応してくれる相談所に電話をすればいいんです
咲希
そんな簡単に言わないでよ!!!
咲希
私は産まれた頃からずっと誰からも愛されなくて
咲希
いつもいつも1人だった
咲希
親には｢失敗作｣って言われて
咲希
後から産まれた妹の方が愛されてて
咲希
もう私の人生終わったなって自覚してた!!!
咲希
……
咲希
私は……
咲希
生きてても邪魔なだけだし
咲希
人間扱いすらしてくれない……
咲希
そんな人が死んで何が悪いの?!
大野
………
大野
咲希さんは
大野
まだ｢幸せ｣というものを知らないだけですよ
咲希
…はぁ…？
大野
貴方は
大野
｢人生の素敵な事は、だいたい最後の方に起こる。｣
大野
という言葉を知っていますか？
咲希
…はぁ……？
咲希
そんなの知らないけど……
大野
これは今でも有名な○○ジャパンの昔のCMの言葉です
大野
貴方はまだ学生ですから
大野
幸せが訪れていないだけですよ
咲希
幸せが……訪れていない………？
大野
はい
大野
もし生きるのであればお年寄りのお爺さんお婆さんを見てみるといいですよ
咲希
でも………
大野
貴方の夢はなんですか？
咲希
私の…夢……
咲希
……歌手…
大野
ではきっと貴方は
大野
歌手になる為に誰よりも研究し
大野
誰よりも早く夢を叶えるでしょうね
咲希
…えっ…？
大野
咲希さんの人生はこれからです。
大野
きっとこれからとても素敵な事が起きますから。
咲希
………
咲希
本当にそう思う…？
大野
はい
大野
保証しましょう
咲希
……じゃあ
咲希
また頑張ってみる!!!!!!
大野
はい！
大野
では……
大野
確認します
大野
村井 咲希 様
大野
生きますか？
大野
死にますか？
咲希
生きます!!!!!!
大野
では生の門までご案内します
咲希
…はい！
生の門
大野
では最後の確認をします
大野
生の門を開いてもよろしいですか？
咲希
(本当は凄く怖い)
咲希
(またいつもみたいに皆が私をいじめてきたらって考えたら)
咲希
(背筋が凍りそうになる)
咲希
(でも………)
咲希
(大野さんの言ってくれた言葉を信じて)
咲希
(これからの人生を歩んでいく)
咲希
(何があっても！)
咲希
はい！
大野
では門を開きます
生の門は音を立てながら開いていく
咲希
大野さん！
咲希
ありがとうございました！！
大野
いえいえ
大野
これが私の
大野
｢仕事｣ですから
生の門は音を立てながら閉じていく
大野
ではまた
大野
殺(あ)う日まで
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
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