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クロロ
そう言ったのは、旅団のリーダー・クロロだった。 なのに、あの人は私を、連れていった。 私は奪われた。 名前も、家族も、居場所も。 でも、不思議と、憎めなかった。 誰よりも冷たくて、誰よりも優しいこの“化け物たち”に。
夕焼け色に染まる空。 あの日もこんな色だっただろうか。 私に「ユナ」という名前を付けられた日、 そして捨てた日も。
ビルの屋上。風が冷たい。 高い場所は嫌いじゃない。 何もかも、どうでもよくなるから。
背後には気配がした。 でも振り返らなかった。
フィンクス
いつもと同じ。 低くて飾られない声。
ユナ
フィンクス
ユナ
少しの間、沈黙。 風の音が痛いほど耳に残った。 その時、背後にもう一つの気配がした。
クロロ
振り返らなくても分かる。 クロロだ。
この男の声だけは、何があっても忘れない。 憎くて、悔しくて、忘れられなかった。
クロロ
ユナ
声が震えた。 それが悔しくて、唇を噛んだ。
ユナ
もうとっくに捨てたはずだった。 なのに、どうして あの頃の私が、まだこの胸に残ってるの?
私は、“ユナ”なんかじゃない。 もう、“蜘蛛”なんかじゃない。
でも。 この男の目だけが、私を“それ”としてしか見てくれない。 まるで私の一部を、永遠に焼きつけたみたいに。