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又理三
他人事みたいに、三はそう言った。
雨がコンビニの自動ドアに当たる音が店内に響く。
つい先ほどまでは陽光が眩しくて、外に出ただけで目を細めるぐらいいい天気だったのに、突然雨が降り始めたのだ。
早乙女シロ
私はそう言って、カバンの中から念の為常備持ち歩いている折り畳み傘を取り出そうとする。
カバンの中には、なぜか丁度二本の傘があった。
そのまま、二人で使い分け
……ようとした私の頭の中に、ふと考えがよぎる。
傘が一本しかないということにしたら、三と相合傘ができる。
という、その邪すぎる考えが。
ーーそう
私こと早乙女シロは、実はこの人。又理三に絶賛片想い中だ。
ここ最近、神様はたまに私の味方をする。
今日みたいに、偶然相合傘ができる状況になることとか。
早乙女シロ
無意識のうちに少し上擦ってしまった声。 わざと目をバッチリ合わせながら、そう言った。
胸が、静かに期待の音を立てる。
三は少し目を見開いた後、ほんの一瞬、何かを考えるみたいに目を細めた。
勘のいい彼のことだ。バレたかもしれないと言う考えが頭に浮かび、背中に冷や汗が伝う。
又理三
いつも通りの言葉に、私は安堵の息を漏らした。 傘を広げ、三も入れるよう腕を上げる。 ……が。
早乙女シロ
少し背伸びをしないと、三が十分に入れない。
もげるんじゃないかと思うぐらい肘を伸ばしても、あまり変化はない。
そうやって頑張っているのに、三は揶揄うように目を細めて笑った。
又理三
その一言で、何かの糸がブチッと切れる音がした。
早乙女シロ
それでも、引き止めて欲しい気持ちが「帰っちゃう」と言う言葉にそのまま出てくる。
又理三
早乙女シロ
心の隅で安堵の息をつく。
傘を三に渡し、雨の中を歩き出す。 自然と距離が近づいて肩が触れた。 傘に当たる雨音より、自分の心臓の音の方が大きく感じる。
又理三
早乙女シロ
核心をつくその一言に、心臓がキュッと縮んだ。
早乙女シロ
慌てながらも平静を装って訂正し、三の様子を伺う。
少しだけ、口元が緩んでいた。
気づいてる? ……それとも、ただの偶然なのか。
答えを掴むことができないまま、私達は雨の中を歩く。
それでも、心臓はずっと優しく高鳴っていた。
ーーこの日の雨を、きっと私は一生忘れないだろう。