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赤のジャケットの襟元から、ちらちらと覗く白い項に誘われるまま(いざなわれる)、歯をたてる。

佐古大和

いっだぁ!いだだだだ!

佐古大和

ちょっ、守若の兄貴!何するんですか!

守若冬史朗

ん?そこに項があったから

佐古大和

いや、そこに山があったから、登ってみましたみたいな理由で、噛まないで下さいよ

佐古大和

って、血出てるじゃないっすか

守若冬史朗

ジャケットも赤だから目立たないじょ

くっきりと歯形の残る項には、うっすらと血が滲んでいる。

佐古大和

いやいや、そういう問題じゃありませんよ

佐古大和

あ!守若の兄貴、手どうしたんですか?

守若冬史朗

さっき、紙で切ったみた~い

佐古大和

血出てるじゃないですか

紙で切った程度の切り傷。佐古の傷、まあ、俺がつけたんだけど、比べれば、対したことのない傷だ。

佐古大和

早く手当てしないと

守若冬史朗

別にこれくらい対したことないじょ

佐古大和

バイ菌入って化膿したら、どうするんですか。小さな傷も、意外と馬鹿に出来ないんですよ

時折、佐古は不思議な事を言う。

それが痛覚という意味の話なら、まだ理解出来る。

佐古大和

でも、どうして、紙で切った傷って、地味に痛いんですかね?

守若冬史朗

指先に神経が集中してるからだじょ

佐古は救急箱を取り出し、消毒した後に、俺の指の傷を保護するように、絆創膏でくるんでいく。

戦場に身を置いていたから、戦場では、かすり傷でさえ、命取りになる事を、誰よりも、その危険性を把握している。

佐古大和

守若の兄貴に噛まれたとこ、まだじんじんと痛むんですが

そんなに痛いなら、自分の手当てを先にすればいいのに~

守若冬史朗

噛んだんだから、痛いのは当たり前だろ~

何故か、佐古は自分の痛みよりも俺の傷を優先する。

傷の度合いと緊急性を考えた場合、優先的に治療が必要なのは佐古の方だ。

口の中には、雑菌が多い。歯科医が、キスをするなって、推奨するくらい、雑菌が多く存在し、キスをする事で、唾液をかえし、虫歯がうつったりもする。

たかが紙で切った傷なんてほっとけばいいのにね。本当、佐古って変わってるよね~

佐古大和

はい、これでよし

佐古大和

ちんちんぷいぷい、痛いの痛いの飛んでいけ

守若冬史朗

なにそれ?

佐古大和

え?守若の兄貴は、この呪文知らないんですか?

佐古大和

子供の頃にこうやって怪我すると母がおまじないをしてくれてたんですよ

佐古大和

痛みが消えるおまじないなんですよ。ほら、もう痛くなったでしょ?

やはり佐古の言っている話の内容は理解出来ない。

守若冬史朗

言っている事分かんないじょ

でも、手当てをしてくれた事に感謝は必要だよね。

手当てのお礼に、先ほどよりも更に深く、俺は佐古の首筋に歯を立てた。

おわり

あとがきと補足 傷つけることでしか愛を示せない守若と愛してるからこそ大切にしたい佐古の話。 痕になるほどの傷を負わす事で、傷つけられた相手は、傷を見る度に守若の事を思い出す。そして、痛みが続いている間は、傷をつけた相手に意識が向く。自分の愛を受け取って欲しくて、相手に自分を刻みつける事でしか、愛を伝えらない守若。だから、佐古から自分に向けられるのも愛情の一種だと気づけない。成育環境により、佐古のような愛し方をされた事がなかった為に、守若の中では、優しくする=愛情として結びつかない。 反対に佐古は好きだからこそ優しくしたいし、相手には傷ついて欲しくないと思っている。佐古もまた、守若のように、相手に刻みつけて自分を残したいという事を考えた事がない故に、それが愛情からくる行為だと気づけない。 二人とも鈍感な訳ではない。ただ愛し方による相違点から、互いの行為が愛情からきているのだと理解できないだけ。 もりさこなら、こういう両片想いもありかなと思う。

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