愛を知らない君へ

最悪…よりによって

クラスメイトの家だったなんて

国見くんの家じゃない?

余計なこと言った…

寝てる…って

私はこの場所を

手放す訳には行かない

一か八かだけど

よかった…

ここがなくなったら

どうしたらいいか…

近くで見るとあんな顔してたんだ

渋谷くんレベルで整ってる

いや…そんな事はどうでもいい

え

何この人

耳良すぎでしょ

焦った…

あんな耳いいとか猫みたい

見た目も猫っぽいけど

2時間ぐらいたったかな

国見くんはさっきから

後ろでガチャガチャしてるし

あれ

なんかいい匂いする

もう8時前だったのか…

久しぶりに誰かが作ったご飯…

それは確かに一理ある

でも…

本当にヤクザの息子なんだ…

まぁ別に驚きはしないけど

にしても…暗くなっちゃった

この人…

なんもやらせてくれない

朝に帰ってるんだ…

なんで急に黙るのこの人

私だって勇気出して名前で呼んだんだから

とか言っときながら

服の袖掴ませてる癖に…

優しいんだか

そうじゃないんだか

確かカバンの中に

なんだ…

可愛いとこあるんだ

そう言って英は

振り返ることなくスタスタと帰って行った

あの家に

廊下まで物が散らかってる

この時点で大体察しがつく

きっとお父さんは

酔っ払ってる

臭い…

始まった…

そうやって言って

お父さんは私に手を上げる

こんなことは慣れてる

ずっと昔からそうだから

満足したら部屋に行って寝る

ここで我慢すれば大丈夫

…そう

何となく

私が家に帰りたくない理由が

分かるでしょ？

お母さんは私が中1の時に

癌でなくなった

それからお父さんは変わってしまった

本当に変わってしまった

不幸中の幸いで

お父さんは見えないところを狙う

こんな体誰にも見せられない

朝起きたらお父さんはいない

仕事に出てる

私は家を綺麗にしてから

学校へ行く

昨日は上半身ばっかだったな

夏前なのに

前にいるのは

英だ

でも私たちが学校で話すことは無い

私たちは「約束」をした

そうだった

そういったことで

先生からの信頼を落とす訳には行かない

これまで

努力してきたものが全て

水の泡

ということがあって

私たちが学校で話すことは無い

話さなくてもいいんだけど

何となく線を引かれた気分

まただ…

…は？

なんで急にそんなこと聞いてくんの

きっとこの人は

社長の息子だし

跡を継ぐんだと思う

そんな人がなんで私に聞いてくるの

マウントか何か？

鬱陶しい…

なんでこんなに着いてくるの

好きな人？

そんなのいるわけないじゃない

何を言ってるんだか…

頭がきっとお花畑なんだろうな…

この人は

まずまず

あなたのことはタイプじゃないし

田舎だから

噂が回るのはあっという間

みんな

今朝の私たちの話をしてる

渋谷恭平…厄介な人

今日は

私が1番嫌いな体育だ

体育だけ4しか取れない

そういえば

英…朝見たのに

嫌い…

早く告白してくれれば

キッパリと振れるのに

変なところで溜めるから

こうして持久走が始まった

私は普通に体力がない

運動には全く縁がなかったから

それに今日は寝不足の上

体も痛い

こんな走らせるなんて

いつの時代よ

あの先生はきっと

私のことが嫌い

だからああやってよく言ってくる

そう…

言って……

ここは…保健室か

私倒れたの？

だから持久走は嫌だったのに

汗もかくし

横にペットボトルの水が置かれてた

この人か

そう言って彼は私の手を掴んだ

ちょっと強く言いすぎた

期待させるのが1番辛くさせる

私はそれをわかってるから

甘い言葉はかけなかった