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コメント
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あんまり好きじゃないけど、一緒にいる二人。どこか無理している。それは相手にも伝わる。 職場関係にもよくありますよね。 彼は片想いかな…? けど、彼女の方はやっぱり好きになれない。 鬱陶しいって思っていたから、ますます嫌にならなくて良かった。 これからも、この二人はこのままのような気がしました。
例えを混じえながらもりんちゃんの気持ちがテンポよく入ってきてすごく読みやすかったです なかなか素直になれないお年頃なんだなぁと思いました ((お前はババアか笑
“私たち”ってことは、主人公ちゃんもコウタ君が好きだったりするんですかね…?笑
第九回 TELLER文芸部
お題 『返答』
私は、いつだって
コウタのことが
キライだ
キライで、キライで
仕方ない
言ってみれば
ハンバーガーに入っている
ピクルスくらいキライだ
生理的に無理
というよりかは
存在自体が鬱陶(うっとう)しい
という表現の方が
相応(ふさわ)しいのだろう
どういう所が
鬱陶しいのか
具体的に例を挙げるなら
たとえば
私の容姿をイジってきたりとか
たとえば
私を揶揄(からか)ってきたりとか
そして
たとえば
エトセトラ
そういうことばかり
してくるもんだから
私が
彼を
すなわち、コウタのコトを
"キライ"と言い切ってしまうのは
至極当然の結果であって
理論的に必然であると
残念ながら
そうやって、言えてしまうのだ
それは仕方ない
彼が更生しないことには
変わらない実相だ
今だってほら
こうやって
コウタと二人きりで
卒業アルバム用の写真を
選んでいる最中なのだけれど
彼の口がポカリンチョと
開いたかと思えば
航多
航多
航多
凛
航多
航多
凛
航多
凛
などと、しょうもない悪口を
マーライオンから吐き出される
シンガポールウォーター如(ごと)く
ぽろぽろと口から零(こぼ)すのだ
こんなにも腹立たしいコトを
平然と言ってしまうあたり
ある種の才能なのでは?
と、私はなんとなく
一目置いてはいるものの
やっぱり
ウザすぎると感じてしまう
まぁ
彼に対する
”キライ”やら”鬱陶しい”やらの
アンニュイなこの感情は
多分
多分ではあるけれど
この先ずっと
10年経っても、20年経っても
変わらない感情なんだろうなって
私は悟ったりしている
でも
そういう風に
私に
思わせちゃってる
彼の方こそに
非があるんじゃないのって
私は思う
そう、思っているのだ
世の中思ったもん勝ちだから
即ち、私の勝ち
世の中は
そういう風にできている
こういったロジカルな考え方も
別に
間違ってはいないでしょう
ね?
凛
凛
航多
凛
凛
航多
航多
凛
航多
航多
凛
凛
航多
航多
航多
航多
航多
凛
航多
航多
いやいや
それは私のセリフだ
と、心のハリセンで突っ込む
そう
誰しもが持っている
心のハリセンで
パシーン!と
心地よい音を奏でて
ぶん殴ってやる
早く帰りてえの気持ちは
私だって同じだ
でも、目の前で
そういう気持ちを
口に出しちゃうとは
こればかりは
幾らタフな私でも
傷ついてしまう
やっぱり彼は
早い所
"デリカシー無い夫"
に、改名した方が良いと思うんだ
もしくは"アンモラルゲス郎"
お、なんか
こっちの方が
しっくりくるかもしれない
私はアンモラルゲス郎を
睨みつける
アンモラルゲス郎は
キョトンとした顔を
私に向けてくる
少し小っ恥ずかしくなって
窓の外を眺めるフリ
...
外は、小粒の雨が降っていた
私の心のように
空は曇り渡っている
その心は
そのままの意味だ
"彼と二人きりでは"
"単純に心がモヤモヤする"
要するに
適度な距離を保ちたい系男子は
今まさに窓の外で賑わっている
小雨のような存在なのだ
降らない日はつまらないけど
降り過ぎるとうざったい
だから取廻し(とりまわし)として
心の折り畳み傘を差してやる
そうすれば
先っぽから柄の部分までが
心の距離として保たれる
このくらいの関係で丁度いい
それ以上は望まなくてもいい
もし彼が突然
何かの間違いで
私に
"好きだ!"と
告白しようとしたものならば
彼の頸椎(けいつい)を
チューペットのように
ペキ折ってやるんだ
航多
航多
凛
航多
航多
航多
凛
凛
航多
航多
凛
『高校でやり残したこと』
彼の"問い"は
たしかに
私の痛い部分を突いてきた
もちろん無くはないのだけれど
あった所で、残りの30日で
とやかくできるモンじゃない
女子高生舐めんな、金髪ハゲ
と、文句を垂れようとした所で
間違いに気付いて、思いとどまる
あぁ、"金髪未来ハゲ"か、と
今はハゲてねぇもんな
ゴメンゴメン
私のやりたかったこと
一言でいえば
"恋愛"
だった
二行で言うとするなら
"友情と恋愛に溺れた青春を"
"ドチャクソに楽しみたかった"
正直、恋愛に飢えていた
恋愛に浅短な自分自身を
見つけ出したくはなかった
ずっと隠しておきたかった
こればかりは、やむをえないよな
と、開き直っている自分が
とっても浅はかで
正直しんどくなってくる
コウタのクエスチョンが無ければ
私だって傷付かなかった
そう思うと
無性に腹が立ってきて
目の前のヘンテコリンな顔面を
私の固いグーでパンチしたくなる
航多
航多
航多
凛
凛
航多
航多
凛
凛
航多
航多
航多
航多
凛
思い切りコウタの目の前で
笑い飛ばしてやった
有言実行だ
がはははは
がはは
がは
は
は
......
......
......
はぁ
しばらく
虚しくなって
思わず溜息を漏らす
そうだ、何強がってんだ、私は
正直になれ
実の所、私もしたかったんだ
好きな人と相合傘を
あぁ、笑えないよ、全く
切ない感情
押しては引いて
寄せては返す
まるで波のよう
ザブンザブンと
音を立てて揺れている
一方、心はズキンズキンと
音を鳴らして痛み疼(うず)く
感情と心の共鳴
なぜ?
"彼女を作りたい"
という台詞(セリフ)で
どうしてこんなにも
苦しくなるんだろう
分からない
分からなすぎる
ひとまず
早く、収まって欲しいと
願うばかり
この心音を
誤魔化(ごまか)したいと
願うばかり
凛
凛
航多
航多
凛
凛
凛
凛
航多
航多
凛
航多
航多
凛
瞬間
私の胸中が騒いだ
次に紡がれる彼の言葉を
聞きたくない
と、本能的に感じた
続きを聞いてしまったら
私とコウタとの今の関係が
崩れてしまいそうだったから
うまく帳尻合わせて噛み合った
一ミリの狂いもない歯車のネジが
外れてしまいそうだったから
耳を塞ぎたくても
塞げない
目を塞ぎたくても
塞げない
口を塞ぎたくても
塞げやしない
航多
航多
航多
航多
凛
凛
凛
凛
凛
航多
航多
航多
凛
航多
航多
凛
航多
航多
凛
航多
凛
航多
凛
航多
航多
航多
凛
コウタの告白は
むりくり私の耳から入り込み
脳髄から脊髄
そして、足の爪先まで
ピリピリと
身体中に流れていったのだ
心地悪い
訳でもなかった
心音が遠く響く
二つ
静かな教室に
ドクドク どくどく
と
鳴り止むことはない
凛
凛
凛
航多
凛
凛
凛
航多
航多
航多
凛
凛
航多
凛
航多
凛
凛
航多
凛
凛
航多
航多
凛
凛
航多
航多
航多
航多
凛
凛
凛
航多
航多
航多
航多
航多
航多
凛
凛
航多
航多
航多
凛
そうだ
私は、いつだって
コウタのことが
キライだ
でも
大嫌い、という訳ではない
目の前で作業しているコウタは
ずっと私のことが好きで
ちょっかいやら
いたずらを
掛けていたんだと思うと
なんか
悪い気もしない
なんて、思っちゃったり(笑)
凛
凛
凛
凛
凛
航多
航多
航多
航多
凛
航多
凛
凛
凛
航多
凛
航多
航多
航多
凛
凛
凛
高校を卒業したって
もしかしたら
素直になれない私たちの青春は
これからも
続いていくのかもしれない
『素直になれない私たちへ』
TO BE CONTINUED
なんて、思っちゃったり(笑)