服は、悩みに悩みまくった結果、上はダボっとした群青の半袖と、オリーブグリーンのカーゴパンツにした。
この後実は指輪を作りに行く予定。
だから、それをラリエットに通してネックレスとして使ってもらう。
僕は服のセンスが全くないけれど、変じゃないのは選べたはず。
そんなことを考えていると、叶くんのお会計も終わって、今度は15階にある“ring”というお店に向かう。
名前はそのまんまだから分かりやすい。
叶
刀也
エスカレーターは建物のど真ん中にあり、店はドーナツ状にグルリと周りに沢山あった。けれど、エレベーターはトイレみたいに奥の方にあったため、少し探した。
エレベーターであがると目の前にお店があった。
黒を基調としたおしゃれなお店で、看板は金色に輝いていた。
少し重い扉を引いて中に入るととても静かで、小さな音でオルゴールが流れていた。
キョロキョロと辺りを見回していると、若い可愛らしいお姉さんが席に案内してくれた。
説明を一通り聞き、研磨や塗装なども自分ですると知った。
ぼ、僕にこんなすごい物作れるのかな…失敗したらどうしようと突然不安に駆られ、すごく丁寧に作業した。
ふと、時計を見上げると作業を開始してから2時間以上経っていた。
意外と大変なんだなぁと考えながら腕で滴る汗を拭う。
刀也
叶
刀也
それだけ言うとまたお互い無言で作業を続けた。
それから更に約30分後に完成した。
思っていたより上手くできてすごく満足。
刀也
思わず笑みをこぼすと、それに気づいた叶くんがなに?と笑った。
刀也
叶
言いながら僕たちは会計をした。
さ、3万円…
かなり出費が痛かったけれど、これはずっとつけてる物だと考えたら安い気もしてきた。
その後はのんびり気になる店を見て回った。
カフェのパンケーキを眺めていたら、食べる?と言って叶くんが奢ってくれた。
正直かなりお金を使ったから奢りはありがたい。
少し申し訳なくも思いながらパンケーキを食べ終え、デパートの外に出た。
刀也
歩きながらニコッと微笑んで叶くんを見上げると、どういたしまして。と微笑み返してくれた。
刀也
言いかけたところで突然グイッと叶くんに抱き寄せられた。
モブ
チリンと自転車のベルを鳴らしながら勢いよく走っていった。
叶
叶
轢かれそうになった僕はバクバク暴れ回る心臓を押さえ、ハッハッと短い息を吐いた。
刀也
にへ、と情けなく笑うと、叶さんは呆れたようにため息をついた。
叶
叶くんが最後まで言い切る前に、遮るような声が聞こえた。
葛葉
刀也
会えて嬉しいのは僕だけ見たいで、葛葉は何故か顔を歪めていた。
何ってどういうこと?
葛葉の誕生日プレゼント買ってただけだけど…
とは言えるわけもなく黙っていると、葛葉は低い声でもう一度、『何やってんだって聞いてんだよ』と凄んだ。
コメント
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もうここだけで最高とはどういう事だろうか……