今の世の中、”派手な子“と”地味な子“とでは、かなりの差別を受ける時代───
派手な子は存在感が強く、皆から愛され、地味な子は存在感が薄く、皆から貶(けな)される。
私、南城 陽向(なんじょう ひなた)は、どちらかと言えば後者(地味な子)の方だ。
地味なだけで差別を受けるのは不公平だと思う。
私だって、好きで地味で居るわけではない。
両親に振り向いてほしくて、勉強を頑張って、頑張って……
頑張って……
なのに……
和彦
多恵子
悠輔
そう言って、爽やかに笑うのは、さっきから二人に褒められている私のお兄ちゃん。
全国トップクラスの成績で、学校からも両親からも期待の存在。
だから、私がいくら頑張ったところで、お兄ちゃんには敵いっこない。
陽向
食卓を囲みながら、私を除く3人が楽しそうに話をしている。
その様子を、朝食を食べながら私は黙々と見ていた。
所詮、そこそこ勉強ができる私なんかに、両親は興味ないのだ。
お兄ちゃんと比べれば、そこら辺の学生と何ら変わりない。
だから私は、努力をしても”無駄“だ。
そう思って、何もかも……努力という、努力の全てを放り投げた。
陽向
悠輔
陽向
陽向
不意に話しかけられ、心配するお兄ちゃんに、私は慌てて元気を振る舞い、悟られないうちに……と、リビングを出て行った─────
悠輔
そう言って、玄関先まで心配で着いてきてくれたお兄ちゃん。
とっても優しくて大好きなんだけど……
陽向
私には長所と呼べるべき所はあるのだろうか……
そんな事を思いながら、靴を履いた。
悠輔
陽向
陽向
悠輔
陽向
陽向
少し心配そうに見るお兄ちゃんに笑顔を見せ、学校へと向かった。
教室に付くと、後ろの方で男子達が机を囲み、いつものアレをやっていた。
龍平
陽向
大きな声で、ガッツポーズをするのは……
私が密かに想いを寄せている、黒崎 龍平(くろさき りょうへい)くん。
だから私は、彼の声に思わず反応してしまった。
和基
そう言って悔しそうにしているのは、黒崎くんの友達の植村 和基(うえむら かずき)くん。
トランプが大好きで、いつも学校に来ると、何かしら皆とトランプゲームをしている。
そう……“アレ“とは、まさにトランプゲームの事。
一見、普通のトランプゲームの様だけど……
龍平
そう、黒崎くん達がやっているのは、罰ゲーム形式のトランプゲームだった───
敗者は勝者から受けた罰ゲームを実行しなければいけない。
その上、ゲームが終わるまではその内容は誰にも分からない。
その為、いつも皆は必死になってゲームをやっている。
遠くからだけど、チラッと一人の男子の手札が見えた。
そこには“JOKER“のカードがあった。
今回は、どうやらババ抜きみたい。
陽向
私は心の中で声援を送った。
詩織
陽向
吐き捨てるように言う彼女は、このクラスの中心である、藤堂 詩織(とうどう しおり)さん。
某企業メーカーの”藤堂グループ”のお嬢様。
気が強くて、いつも私を罵倒する。
そんな彼女に一番恥ずかしい顔を見られてしまった。
陽向
菜穂
馬鹿にしたように言う彼女は、藤堂さんの親友の入江 菜穂(いりえ なお)さん。
いつも、藤堂さんにくっついている……
所謂、金魚のフンのようなもの。
藤堂さんといる時は、いつも私に絡んでくる。
陽向
詩織
陽向
地味子………
それは、彼女が私と同じクラスになってから付けられた私へのあだ名。
お兄ちゃんと同じ高校に頑張って入って、お母さん達に喜んでもらうつもりだったけど……
それは叶わぬ夢だった。
努力することを諦めたのは、高校に入って直ぐの事だった─────
周りからはいつも「全国トップクラスの妹」として、学校内でも近所でも、そんな扱いだった。
だから、私はなるべく目立たず、静かに学校生活を送ることにした。
そしたら、変なあだ名を付けられてしまった………
陽向
そう思っていると─────
龍平
和基
どうやら勝敗が決まったみたい。
あの感じだと……
龍平
陽向
和基
龍平
嫌そうに言う黒崎くんに、植村くんが耳元で罰ゲームの内容を告げた。
龍平
声が小さくて、肝心な内容までは聞き取れなかったけど、黒崎くんの反応を見て、何となく嫌な内容だと思った。
でも……
「 ゲームだしな!!」
この言葉から、恐らくその罰ゲームを楽しもうとしている事だけは分かった。
周りの男子達は「頑張れよ」と、からかいながら黒崎くんの肩を軽く叩き、それぞれ机を元に戻し、席に付いた。
そして次の日─────
コメント
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あんらまぁ素敵じゃなぁい(?)