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教室の空気は、いつもどおりの笑い声に包まれていた。
だが私には、その笑いがどこか不自然に聞こえた。
上里壮翼は、今日も皆の中心に立っていた。
笑顔は完璧で、誰もが彼に注目している。
男子は憧れ、女子は微笑み、教師たちも自然と目を向ける。
まるで教室全体が彼のためだけに動いているようだった。
壮翼は軽やかに教卓に寄り、ノートを落とした子に手を差し伸べ、
隣の席の女子と笑い合う。
誰もがその場面を微笑ましく見守る。
だが、私の視線は違った。
彼の笑顔の奥にあるもの――底知れぬ冷たさを、私は感じた。
神月透羽がそっと横に寄り、壮翼の言葉に頷く。
彼の忠実さは異常に思えた。
透羽の存在が、壮翼をより一層大きく見せている。
まるで陰で操る糸を引く糸使いのように。
私は机に伏せたフリをして心の中で呟いた。
加藤 涼奈
そんなとき、川神知樹が私の隣に座った。
川神 知樹
優しい声。
けれど現実的な警告だ。
加藤 涼奈
私は小さく答えた。
休み時間になると、クラスの雰囲気はさらに緊張した。
皆が壮翼の周りに集まり、笑い、話す。
傍観者の田鶴穂波は静かに窓際に座り、何も言わず、
ただ、全てを見ているようだった。
その無言が、逆に空気を重くしていた。
昼休み、望月瑠那が私の机に近づいてきた。
望月 瑠那
情報屋らしい鋭い視線を向ける。
瑠那は周囲を気にせず、低い声で話し始めた。
望月 瑠那
望月 瑠那
私は心の奥でうなずいた。
やはり、ただの人気者ではない。
望月 瑠那
瑠那の言葉に寒気が走った。
私の直感は正しかった。
咲夏の死は偶然ではない。
午後の授業中も、壮翼はいつも通り笑顔を振りまき、
教師の質問に適当に答え、クラスを掌握していた。
誰も疑わず、誰も異議を唱えない。
教室は明るく、楽しく見える。
だがその裏で、涼奈の心は静かに、確実に燃えていた。
帰り道、涼奈は小さな声で咲夏の写真に話しかけた。
加藤 涼奈
街灯の下で写真に触れる指先に、冷たく固い決意が宿った。
そして私は思った。
クラスという小さな世界で、あの悪魔――壮翼の仮面を剥がす日が、必ず来る。
私の孤独な戦いは、まだ始まったばかりだった。