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赤い糸プロジェクト。③

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赤い糸プロジェクト。③

1 - 赤い糸プロジェクト。③

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2020年04月01日

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未乃

ねー、藤也

藤也

ん?

未乃

友達から聞いたんだけどさぁ

未乃

赤い糸プロジェクト。っていうアプリ知ってる?

藤也

あー、俺も先輩から聞いた。

藤也

あれだろ?初恋の人を高確率で結びつけるってやつ。

未乃

そー、やったことある?

藤也

やったことあったら初恋の人の話をわざわざ今してないと思うけど。

未乃

まぁ確かに。

藤也

ところでお前、初恋の人誰なんだよ!

藤也

話すり替えやがって!

未乃

あはは…

私は成瀬 未乃。 ごく普通の高校生で、恋愛とか、青春とか、そういうのが大好きな女子。

初恋の人…。

聞かれても、どんなに仲が良くても、私は絶対に藤也に教えたくないな。

まぁ、察してください笑。 教えられない理由…笑

藤也

誰なんだよ〜、俺でも教えられないっての?俺人に言わんよー?

未乃

わかってるけど…

言葉が詰まる。 初恋相手に言えるかっての。 しかもそれが今でも引きずってるなんて、言えるはずない。

未乃

藤也

未乃?

どうしよう

ずっと黙りこくったまんまだと、藤也が心配しちゃう。

すると、真っ白になっていた私の脳裏にあるものが浮かんできた。

未乃

赤い糸プロジェクト…

藤也

は?

未乃

赤い糸プロジェクトやる!

藤也

…え?なんで?

未乃

だって、だって!

未乃

赤い糸プロジェクトって初恋の人とチャットで繋がれるんでしょ?

藤也

そういうことか!

私の初恋の人は藤也。 なら、藤也がこのアプリをやってしまわない限り、私が初恋の人と出会って結び付けられることがない!

藤也

暴露するみたいになるから、いっそのこと面白いかもな!

未乃

でしょ!?

未乃

私名案!

安堵のため息。 …これでもう当てられることはないと安心をした瞬間。

藤也

俺もやろっと!

未乃

え?

藤也

やー、未乃だけにやらせんの、なんか違うと思ってさ!

その思いやりいらないってば

未乃

…私だけでやるよ?

藤也

いーや!俺もやる!

未乃

あ…まぁ…いーけど

藤也

よし!インストールしようぜ!

藤也はウキウキしながら赤い糸プロジェクトをインストールしている。

な、なんで藤也がやっちゃうのよ!

私も自分で言っておきながら、仕方がなくアプリをインストールした。

赤い糸プロジェクトへようこそ これは初恋の人に高確率で出会える。 そして、これからの運命も 共に歩むことができる。 そんな素敵なアプリです。 使い方は、 プロフィールを設定し、 チャット画面を開いているだけです。 そのまま待ってればいつか、 初恋の人に出会えます。 それではどうぞ、お楽しみください。 そして、お幸せに。

藤也

んで、アカウント作ればいいと。

未乃

う…うん

藤也

作ったらチャット画面開くんだっけ

未乃

うん…

藤也

未乃?どうした?

未乃

や、や…なんでも

藤也

大丈夫か?調子悪い?

未乃

きのせっ!

藤也

気のせいって…

藤也

まぁ、いっか。

藤也

っし!俺登録完了!

私の胸が高まる。 登録して仕舞えば100%の確率で 藤也に繋がっちゃう。 そしたらバレちゃうじゃん。 初恋も、今恋も。

藤也

未乃は?

未乃

もうすぐ…かな

嘘。 本当はもう完了ボタンを押すだけ。 でも押す勇気がない…。

未乃

……。

えい…もういいや、どうとでもなれ。 ボタンを押そうとした瞬間…

藤也

なぁ未乃。俺に好きな人いたらさ、応援してくれる?

目を、耳を、そして、私が持つ全ての感覚神経を疑った。

未乃

…す、好きな人…?

藤也

ああ、俺これで初恋の人、まぁ今の好きな人も一緒なんだけど、その人と繋がれたらいいなって思ったんだよね。

未乃

そ、そー…なの

目頭が急に熱くなった。

ダメじゃん、私が登録しちゃ。

未乃

…っ!

苦しくて、つらくて、私はその場から逃げ出した。

藤也

おい!

未乃

どうしようどうしよう…

反射的に逃げてきてしまった。

未乃

でもあんなこと言われちゃったら…

堪えていた涙が頬を伝う。

未乃

ずっと好きだったのに…

出始めて仕舞えばもう止まらない。 地面に大粒の雫が落ちていく。

未乃

藤也ぁ…

何を勘違いしていたんだろう。 なんで私は変な期待を持ってしまっていたんだろう。 ずっと前から好きだった。

未乃

もういっそのこと…

最後くらい気持ちを爆発させちゃえ

私は完了ボタンを押した。 設定完了と画面に映し出され、すぐさまチャット画面に自動的に移行する。

未乃

未乃

え…?

画面を二度見した。

藤也というアカウントからメッセージがリアルタイムで何件も来ている。

藤也

きっと未乃に繋がってるはず。

藤也

未乃!

藤也

戻ってこい!

藤也

いきなり変な話した俺が悪かった

藤也

ずっとずっと前からお前のことが好きだったんだよ、未乃!

藤也

なかなか言い出せなくてごめん

藤也

未乃、本当にごめん

藤也

もし繋がってたら…返信してな。

未乃

う、嘘…

表示された藤也とのチャット画面を何度も何度も読み返す。

未乃

なんで…

今までそんなそぶりはなかった。 藤也が私のことを好き? 考えたこともなかった。

未乃

藤也…

私の震えていた指はやっと、キーボードをタッチした。

未乃

藤也…?

藤也

未乃!

未乃

本当に藤也なの?

藤也

うん。さっき未乃と一緒にアカウント作った藤也。

藤也

やっぱ未乃と繋がってたんだな

未乃

分かってたの…?

藤也

そりゃ、もちろん

藤也

俺の初恋ってったら、未乃しかいないなってさ。

藤也

…って、俺どさくさに紛れて何気に告っちゃってるじゃんw

未乃

私も藤也に繋がると思ってた

藤也

そうなの!?

藤也

じゃあなんで逃げたんだよ

未乃

藤也ほど自信が無かったの。

未乃

だって、藤也あんなこと言うし…

未乃

私じゃないかもって

未乃

それだったら私、入っちゃダメじゃんって思って…

藤也

未乃…

藤也

ほんとごめん。

藤也

俺は未乃が好きだよ!

藤也

好き

未乃

私も好き

未乃

恋愛的な意味とか、全部

藤也

はは、俺も

藤也

なぁ未乃、

未乃

ん?

藤也

戻ってきてよ

藤也

俺、もっかいちゃんと未乃の目を見て告白する。

未乃

…うん!

私は一目散に駆け出した。 さっき逃げてきた藤也のもとへ。

心の木に秘めていた想いが全部、 春の風に乗って。

桜の花びらと一緒に揺れてる。

窓からは微笑んだ藤也が見えた。 ほおが少し赤い藤也にまた、 胸を締め付けられながら、 青春を駆け抜けていく。

赤い糸プロジェクト。

それは人と人もの縁を繋ぐもの。

私はそんなアプリに 伝えきれないほどの感謝をしている。

私に、藤也に、きっかけをくれて ありがとう。

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