テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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Illuminate the darkness

第3話 - 第1部イージス領編 2話リラの死

2021年02月05日

#ファンタジー

#女主人公

#魔法

日向

農業町フォーミュラ

あれからルーナ達は、闇獣に襲われていた少女を助け、町まで戻って来た。

少女の母親

大丈夫でしたか！？

町に入るやいなや、少女の母親がルーナ達に近付いてきた。

助けた少女

お母さーんっ！

少女の母親

大丈夫！？どこも怪我は無い？

助けた少女

うん！

助けた少女

このお姉ちゃんが助けてくれたから！

少女の母親

そう…

少女の母親

あの…なんてお礼を言ったら…

ルーナ

いえ！気にしないでください！

ルーナ

私もその子が無事でよかったですっ！

助けた少女

このお姉ちゃん凄いんだよ！

助けた少女

闇獣を一撃で倒しちゃったんだ！

少女の母親

闇獣を…一撃で…？

少女の母親

……まさか、貴方は……精霊士…ですか？

ルーナ

まぁ……そうですけど……

少女の母親

ほ、本物の精霊士様！？

母親の言葉に、周囲の人々が反応する。

少女の母親

ああ…やっと精霊士様が……

町の人々がルーナの周りに集まる。

ルーナ

わわっ！

人々から発せられる言葉は賞賛や、本物の精霊士なのか等の質問ばかりだ。

ルーナ

み、皆さん、落ち着いて……

謎の女騎士

精霊士様！ご無事でしたか！

そこに森で出会った女騎士が現れた。

ルーナ

あ！あの時の…

女騎士は人混みをかき分けルーナの元に来ると、膝を着き、頭を下げた。

ルーナ

え？

謎の女騎士

先程…ラヴェンチェの森での無礼な態度、お許しください。

謎の女騎士

あの時は気が動転していて、あの様な口調で精霊士様に接してしまい、申し訳ありません

ルーナ

…

ルーナ

え？

謎の女騎士

？

謎の女騎士

どうかしましたか？

ルーナ

だって…

謎の女騎士

あ…

謎の女騎士

気が回らず、申し訳ありません。

謎の女騎士

先程の戦いで疲れていますよね？

ルーナ

い、いや、そうじゃなくて…

謎の女騎士

さぁ、此方へ。

女騎士はルーナの手を掴み、再び人混みの中を進んでいく。

ルーナ

あ、あの！ちょっと…！

ルーナの声は届かず、そのまま連れて行かれる。

タナトス

まったく、騒がしいわね…

タナトスは面倒くさそうに、ルーナの後を着いていく。

フォーミュラ宿屋

ルーナは女騎士に連れられ、宿屋にやって来た。

謎の女騎士

あまり広くはありませんが、ここでお休みください。

ルーナ

ちょ、ちょっと待って！

謎の女騎士

？

ルーナ

名前！

謎の女騎士

名前…？

ルーナ

はい！

ルーナ

貴方の名前です！

謎の女騎士

…

謎の女騎士

こ、これは失礼しました！

クロエ

私は王都から来た騎士、『クロエ・イズン』と申します。

ルーナ

(はぁ…やっと話聞いてくれた…)

クロエ

敬称や敬語等はいりません。気軽にクロエとお呼びください。

タナトス

(イズン…)

ルーナ

王都から…

クロエ

はい、ラヴェンチェの森で話した通り闇獣が多く現れた原因、そして…

クロエ

あの森を跨いだ先にあるイシュ村に多くの闇獣が向かったと報告を受け、様子を見に参りました。

ルーナ

…

ルーナ

クロエ、実は…

ルーナはイシュ村が闇獣に襲われた事を話した。

クロエ

そんな…イシュ村が壊滅……

クロエ

それにルーナ様は村で唯一の生き残り…

クロエ

…ルーナ様、1つお聞きしたいんですが…

ルーナ

？

クロエ

その…イシュ村に……クレセント家という家はありませんでしたか？

ルーナ

…！

ルーナ

…あったよ。

ルーナ

…けど………

ルーナ

…私以外もう……

クロエ

私以外……？

クロエ

…もしかして…ルーナ様は……

ルーナ

うん…クレセント家の娘、ルーナ・クレセントだよ。

クロエ

…！

クロエ

もしかして、ルーナ様がリラ様のご息女なのですか！？

ルーナ

え？お母様を知ってるの！？

クロエ

は、はい、存じ上げております。

ルーナ

お母様ってどんな人だったの！？

クロエ

…ご存知無いのですか？

ルーナ

うん、何故かお父様に聞いても教えてくれなかったの。

クロエ

…

クロエ

…リラ様は私の憧れた騎士でした。

クロエは静かにルーナの母親、リラについて話し出す。

クロエ

リラ様は王国に仕える騎士団長でした。

クロエ

一見おっとりした方でしたが、剣の腕は王都1と言われていました。

ルーナ

王都1…

クロエ

剣だけでなく槍や弓などの扱い、戦術の才も素晴らしいものでした。

謎の女騎士

そして戦いだけでなく、人柄も素晴らしいお方でした。

クロエ

困っている人を見過ごさず、誰に対しても優しい…

クロエ

誇り高き騎士団長の名に恥ないお方でした。

ルーナ

…立派な人だったんだね……

クロエ

はい！他の騎士団の方たちも皆、リラ様に憧れていました！！

クロエ

私もリラ様に憧れて、騎士になったのです。

クロエ

それにこんな私にも、リラ様に槍術を教えて頂きました。

ルーナ

じゃあクロエはお母様とは親しかったの？

クロエ

うーんどうでしょう、団員一人一人に手解きをしておられましたから…。

謎の女騎士

ですが、リラ様にそう思われていれば良いと思っています。

ルーナ

…そっか……

ルーナ

顔は思い出せないけど、クロエの話からどんな人だったか想像出来るよ。

クロエ

…確かリラ様が亡くなったのは……

ルーナ

うん、私が産まれた頃だったって、お父様から聞いてる。

クロエ

はい…その……リラ様が亡くなった理由は…まだ分かってないのです…。

ルーナ

…え？

タナトス

…

クロエ

どうかしましたか…？

ルーナ

………お母様は闇獣に…殺されたんじゃないの？

クロエ

え！？

クロエ

どういう事ですか！？

ルーナ

村が闇獣に襲われて、聖域の森に逃げ出す前に私の世話係が、村を襲った魔物が昔、お母様を殺したって…

クロエ

そんな話私は……

クロエが額に手を当て、俯く。

クロエ

何故…私は何も知らされて…

タナトス

(…まるで自分が知っていて当然、みたいな口振りね……)

タナトス

(やはりこの子は…)

ルーナ

(どういう事…？お母様の死の理由は伏せられてる…？)

ルーナ

(それとも闇獣に殺されたっていうのはミアさんの…)

ルーナ

(いや、ミアさんはそんな嘘をつく人じゃない…)

ルーナ

(それにあのお父様の言葉…)

ルーナ

やっぱり…お母様は闇獣に殺されたんだと思う。

クロエ

…でもだったら何で理由不明なんて嘘の公表を……

ルーナ

それは分からないけど…

その時、タナトスがルーナの言葉を遮り、口を開く。

タナトス

そんなの決まってるじゃない、この世界の上に立つ連中は、ミアの死の理由を隠したかった、それしか無いわ。

ルーナ

え…？

タナトス

つまり、貴方の母の死は連中にとって不都合だったって事よ。

ルーナ

…お母様の死が不都合で、隠したかった…？

クロエ

…！

クロエは顔を上げる。

タナトス

そう思うのが自然じゃないかしら？

タナトス

だってそこの”クロエさえ”も知らなかったんだから。

ルーナ

クロエさえも…？

クロエ

…ルーナ様…今の…

ルーナ

え？

クロエ

今の言葉…

クロエ

本当ですか…？

ルーナ

い、いや、タナトスが…

クロエ

タナトス様が…？

ルーナ

うん

ルーナ

タナトスが言うには、この世界の上に立つ連中…つまりえーと…

タナトス

王都にいる王族達のことよ。

ルーナ

…王族達にとってお母様の死の理由が不都合だから、隠してるんじゃないかって…

クロエ

…

クロエ

…確かにそう考えたら辻褄が合いますね……

ルーナ

…信じるの？

クロエ

はい。

クロエ

そのルーナ様のお世話係だった方がその様な意味も無い嘘をつく理由が分かりません。

クロエ

とても信じ難いですが……

クロエ

…

クロエ

ルーナ様。

ルーナ

？

クロエ

申し訳ないですが急用が出来たので、王都に戻らせて頂きます。

ルーナ

え！？

クロエ

ルーナ様はこのままこの部屋にお泊まり下さい。

クロエ

宿代は既に支払ってますから。

ルーナ

ちょっと待って！

ルーナ

私も行く。

ルーナ

お母様の死について調べるために王都に戻るんでしょ？

ルーナ

だったら私も…

クロエ

いいえ、ルーナ様はある場所にお寄り下さい。

ルーナ

ある場所？

クロエ

はい。

クロエ

その場所はここから西、エスメル湿地帯から南西にある祠です。

クロエ

そこには妖精様がいると言われています。

ルーナ

妖精…

ルーナ

でも…お母様の……

クロエ

ルーナ様、リラ様の事は私にお任せ下さい。

クロエ

必ず、真実を見つけ出してみせます。

ルーナ

…分かった。

ルーナ

でも約束！

ルーナ

絶対に無茶しないこと！

クロエ

…ぁ……

クロエ

…ふふ、分かりました。

ルーナ

…うん、じゃあ指切り。

ルーナは小指を立てる。

クロエ

はい、約束です。

クロエも小指を立て、指切りをする。

クロエ

…では後程。

クロエ

王都で待っております。

ルーナ

うん、気をつけて。

クロエ

はい、ルーナ様も。

クロエは小さくお辞儀をし、部屋を出て行った。

ルーナ

大丈夫かな…。

タナトス

大丈夫よ、あの子なら。

タナトス

心配要らない…と思うわ。

ルーナ

ふふ、何それ？

タナトス

まぁ、とりあえず東都に行く前に寄る場所が出来たわね。

ルーナ

えーと、確かエスメル湿地帯から南西だったっけ？

タナトス

ええ。

タナトス

出発はいつにするの？

ルーナ

今から！って言いたいところだけど…

ルーナはベッドに倒れ込む。

ルーナ

流石に疲れたから、明日出発だね…

タナトス

確かに村から出てから、ろくに休んでないわね。

ルーナ

うん、だから…………

タナトス

…ルーナ？

ルーナは静かに寝息をたてていた。

タナトス

寝るの早いわね…

タナトス

…とりあえず着替えさせておきましょうか。

タナトスはルーナの汚れている服を脱がし、別の服に着替えさせた。

タナトス

はぁ…全く世話が焼けるわね。

タナトスはベッドの隅に座り、ルーナの寝顔を見る。

タナトス

(ふふ…可愛い寝顔ね)

タナトスはルーナの頭を撫でる。

タナトス

(…本当にこんな無垢な少女を精霊士にして良かったのかしら……)

タナトス

(世界を救うなんて大役を背負わせて……)

タナトスは窓から見える夕日を見て呟く。

タナトス

…私の選択は本当にこれで良かったの……？

タナトス

ベレヌス…貴方ならどうしたのかしら……

翌日

フォーミュラ西門辺り

ルーナ達は宿屋で1泊し、エスメル湿地帯に向かうため西門に来た。

ルーナ

さーて、エスメル湿地帯目指して！

タナトス

…

ルーナ

エスメル湿地帯目指して！

タナトス

…出発。

ルーナ

おー！

タナトス

…昨日までの疲れはどうしたのよ。

ルーナ

もう大丈夫だよ！

タナトス

まぁ元気なのは何よりだけれど、あまり飛ばしすぎないようにね？

タナトス

またラヴェンチェの森みたいな事は２度とごめんよ。

ルーナ

うっ…確かに……

そこに昨日助けた少女がやってきた。

助けた少女

あ！お姉ちゃんやっと見つけた！

ルーナ

あれ？昨日の…。

ルーナ

どうしたの？

助けた少女

もー、お姉ちゃんが昨日入っていった宿屋に行ったらもう出発したって聞いて、探してたんだよ？

ルーナ

探してた？

助けた少女

うん！はいこれ！

少女は瓶に詰められた回復薬を5本ほど差し出す。

助けた少女

私の家ね、薬屋なんだ！

助けた少女

それ昨日取った薬草で作った回復薬！

助けた少女

良かったら使って！

ルーナ

いいの？

助けた少女

うん！昨日助けてくれたお礼だよ！

ルーナ

わぁ…ありがとう！

ルーナは回復薬を受け取る。

ルーナ

大事に使うね！

助けた少女

うん！怪我した時に使って！

助けた少女

それであの時みたいに、どんどん闇獣を倒してね！

助けた少女

それじゃあまたね！

ルーナ

うん！また会いに来るねー！

少女は手を振りながら帰って行った。

ルーナ

それじゃあ、今度こそ出発！

タナトス

ええ

タナトス

…ルーナ。

ルーナ

んー？

タナトス

…辛かったら何時でも言ってちょうだい。

タナトス

何でもは無理だけれど、出来る範囲で何でもするから。

ルーナ

タナトス…うん！

ルーナ達は、西門からエスメル湿地帯を目指して出発した。

リラの死 END

Illuminate the darkness

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