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次の日の朝、目が覚めても、現実に戻れなかった。
夢じゃない。
あの言葉も、あの瞳も、あの距離も。
すべてが現実だった。
私は、生徒会室で赤くんに「壊してあげる」と言われた。
なのに、逃げなかった。 いや、逃げられなかった。
ベッドの中、天井を見つめながら思う。
どうして私は、あの場から立ち去れなかったんだろう。
怖かった。
なのに、ほんの少しだけ、心が"安心していた"自分がいた。
_愛されてるから。
そんな勘違いが、私の心を少しずつ侵食していく。
学校に行くと、彼はもうそこにいた。
私の隣の席。いつも通り。
でも、視線を向けただけで全身が震える。
赤 。
赤 。
その一言が、何故か嬉しかった。
頭の奥で「違う」と叫ぶ声を無視してしまう。
おかしいよね?
怖がってるのに、逃げたくてたまらないのに。
なのに……どうして。
「私なんて、誰にも必要とされてなかったもんね」
ぽつりと心の中に沈んでいた声が漏れた。
誰かに求められることが、こんなにも暖かくて、甘くて、優しいなんて。
例えその手が、私を檻に閉じ込めるものでも。
放課後。教室には私と彼しかいなかった。
赤 。
赤 。
そう言いながら、彼は私の髪にそっと触れた。
嫌だ。嫌なのに、動けなかった。
心が、足元から抜け落ちていく。
橙 。
橙 。
絞り出すように呟いた私に、彼は優しく微笑んだ。
赤 。
赤 。
赤 。
それは、鎖だった。
愛という名をした、甘くて冷たい鎖。
でも私は_もう、その鎖を拒めるほど強くなかった。