朝一番に教室に入ると少し開いた窓から冷たい風が通り抜けた。 みんなが登校してくる前のこの時間が学校生活の中で1番好きな時間だ。
固く雑巾を搾ってみんなの机を拭くと清々しい気持ちがする。 そこから黒板の溝を綺麗にしてパソコンを起動させてさせておく。 別に誰かに頼まれた訳でもないしやらされてる訳でも無いけれど。
いつもは禍々しく暗く見えてしまうこの教室も、朝のこの時間だけは綺麗に見える。
いつもひっそりと端の方で生きてきた。 小学校3年生からずっとつけているメガネ。 下ろした髪。きっちり制服を着て。 いわゆる地味子、と言うやつなのだけど…。
??
声のした方を振り向くと眠そうな顔をした増田くんがたっていた。
○○
かっこよすぎるその顔を直視出来なくて思わず俯くとそこで会話は途切れ教室には静寂が訪れた。せっかく増田くんと2人きりなのに。 そう思うとこの静かな時間は勿体なくて。 勇気をだして声を掛ける。
○○
増田くんは驚いた顔をして私の方を見た。
○○
やっぱり話しかけなければよかった。 嫌われたかな。 そう思った私に聞こえた言葉は全く予想外なものだった。
増田
○○
増田
○○
にっこり笑顔で私にそういった増田くん。 こうやってみんなに優しいからモテるんだろうなぁって。
増田
○○
増田
○○
増田
○○
増田
そう言って鼻歌を歌い始めた増田くん。 その声は透き通っていて。
増田
○○
男子
どうゆうこと。 そう聞こうとした私の言葉は登校してきたみんなに遮られた。
あれから少し経った。 増田くんは毎日ではないけれど1週間に3日は早めに来ていて。 それが私と話したいからなのかは分からないし実際一言も喋らない日もある。 あるけれど私にとっては最高の朝になっていることは間違いない。 少し聞こえる鼻歌。3分間だけの寝顔。 課題を見せてくれとせがむ姿。 それを私しか見ていないのかと思うと嬉しくて。
今日も朝早く増田くんが来た。 最高の1日になる。そう思った。 思っていたのに…。
放課後、1人きりになった教室。 帰ろうと思ってカバンを持つと教室の扉が勢いよく開いた。そこには…。
??
明らかに私がいることを知っていたのに知らなかったように入ってきたその女の子はこのクラスのスクールカーストの1番上にたっている橘さん。 派手に染めた髪。濃い化粧。 じゃらじゃらとキーホルダーのついたカバン。
○○
あんまり長居したい空気ではない。 というか早く帰りたい。 そう思って横を通り抜けようとすると。
○○
足を出されて私は廊下に向かって倒れ咄嗟にでた左手を思いっきりひねった。
橘
低い声、睨みつける目、踏まれる足。 どう見ても私に敵対心しかなくて。
橘
○○
あの朝早い時間に橘さんが来たことは無い。
橘
そう言い放った橘さん。 私と増田くんだけのものだった亜の空間が他の人に覗かれていた。その事実が1番辛かった。
つづく…
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