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悪戯に笑う声が聞こえる。 幻聴だと知っているからこそ閉じた目を開けれないで居る俺は弱虫だ。
飯田 佳子
飯田 佳子
飯田 佳子
数年前妻 飯田佳子はこの世を去った。 65歳でまだまだこれからの年齢だった筈なのに、元々弱い体の癖に俺を支えてくれていたのだろう。 無理が祟った。
思い出す度に罪悪感やあの日の感情が一気に押し寄せる。 それでも蘇る記憶に再び意識を飛ばした。
数年前 8月24日 午前6時30分
飯田 忠
飯田 佳子
飯田 忠
少し寂しくなり、食卓に並ぶ豪華な食事に目を運ぶ。 俺の誕生日は8月ではなく12月だ。 佳子のボケが発覚したのは、丁度2年前の今日くらいの日
急に朝早くに嬉しそうに起こされ 食卓に着いた思ったら 普段作らないような、洋風の物を用意していた。 「お誕生日だもの。」 照れて笑う笑顔に悪戯を感じない
忘れられるよりも悲しい事はないとは思っていたが、現実を軽視してた俺にとっては辛い感情は拭えないままでいた。
飯田 佳子
飯田 忠
俺はお前と同じ65歳だ。 その言葉を乾いた笑いで誤魔化す。 医者からは、憐れみの目で見られようが俺の嫁は佳子だ。
目の前に居るのは。 紛れもない“佳子”なのだ。 なにも記憶が曖昧になろうがたった一人の____
走馬灯のように楽しかった日々が頭を駆け巡る。 と、同時に佳子が目を見開き倒れる。
“_________。”そう言い残してこの世を去った。 力なく横たわる佳子と目が合う。
飯田 忠
飯田 忠
布団を整え、キッチンへ向かう。 幸い一人暮らしの俺を心配してか、 娘夫婦が顔を頻繁に出す為整理整頓されている。
飯田 忠
娘に再三、危なっかしいと言われた料理もしなければ生きていけない。 慣れない手つきでお椀に注ぎ手を合わせ一人食す。
向かいの席を眺めては、一口また一口と箸を進める
飯田 忠
飯田 忠
飯田 佳子
バッと当たりを見渡す。 一瞬佳子の声が聞こえたような気がした。
佳子の姿はどこにもなくてまた現実を再確認するのだ。 「もう、佳子はいない。」 と
飯田 忠
今井 結衣
後ろから唐突に声をかけられ瞬発的に後ろを振り向けば、娘の結衣が心配そうに俺の方に足を進める。
飯田 忠
飯田 忠
今井 結衣
今井 結衣
今井 結衣
そう言い眉を下げる結衣に申し訳なさより心配が勝る。 もし俺に何かあったら、大切な一人娘だからこそ心配になるのは当たり前だが心配し過ぎは過保護だろうか
飯田 忠
今井 結衣
制止する声に怒気が混ざる。 佳子に似て真面目なのだろうタチの悪い冗談を好まないのは相変わらずだ。
飯田 忠
今井 結衣
さっきまで、眉間にしわを寄せていたのが嘘のように食いつく。 そう言えば孫のユキは今年で小学3年生になるんだったか。
好奇心旺盛の時期でもあるのか頻繁に最近の流行やらなんやらを連絡してくれている。 それはいいのだが、返信しようにも数分かかるので会話のテンポは割かし遅い。 それがつまらないのか、俺の返信には二言、三言返して終わる。
飯田 忠
首を傾げ、携帯電話を手に取ろうと 腕を伸ばせばその手を結衣が力強く握る。
今井 結衣
呼吸が止まりそうになるのを感じた。 そんなバカげた話がこの世にあるとは思えない。 ただ、珍しくタチの悪い冗談を好まない結衣が真剣な顔で問いかけるから 本当にあるかもと期待している自分もいた。
飯田 忠
今井 結衣
飯田 忠
今井 結衣
飯田 忠
結衣はわざとらしく、姿勢を正して もう一度俺の方に視線を向け続ける
今井 結衣
今井 結衣
今井 結衣