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ななか
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ななか
コメント
1件
優杏ちゃん!!!やるやん!!翠ちゃん頑張ってくれ!!!!! 今回もめちゃめちゃ面白かっです、!!!!!し、師匠っ!
しばらく走って、人気のないバス停で 立ち止まる
ちょうど屋根があってよかった
藤野 翠
広瀬 優杏
藤野 翠
翠は息も絶え絶えでそう呟いて、 ドカッとバス停のベンチに座った
私も、息が上がっている
翠は特に。自律神経の乱れで 息切れしやすいうえに治りにくいはずなのに
広瀬 優杏
翠に無理させちゃった
広瀬 優杏
私は翠に問いかけた
本当に訳がわからない
走るの、辛いはずでしょ
藤野 翠
藤野 翠
声が途切れながらも、 翠は当然のように答えた
表情は疲れているのに、目は真っ直ぐ私を 見ている
広瀬 優杏
藤野 翠
広瀬 優杏
藤野 翠
藤野 翠
広瀬 優杏
ハッキリ覚えてるよ
私も翠の隣に座った
初めは、お互い全く意識してなかった
先生の都合によって干渉権も拒否権も無く 適当に振り分けられたクラスメイトという、 それ以上でもそれ以下でもない存在
席が近かったわけでもなかった
まだ新学期が始まってすぐ、翠は急に学校に 午後からしか来なくなった
元から遅刻と欠席が多かった藤野さんは、 いつの間にか完全に学校に来なくなった
クラスの誰もが、 『ああ、不登校なんだろうな』と思っていた
私も、その一人だった
広瀬 優杏
担任に職員室に呼び出されたと思ったら、 翠の家へプリントを届けてくれと頼まれた
広瀬 優杏
先生
広瀬 優杏
どうしよう。 しかもよりによって藤野さんの家、 私の通学路のちょうど途中かよ
広瀬 優杏
内申点欲しさに、 私は渋々引き受けることにした
広瀬 優杏
地図と表札をもう一度確認する
やはりここで合っているようだ
広瀬 優杏
大きな屋根の、いかにも新築の一軒家。 駅近なのに庭まで広い
広瀬 優杏
やっぱりめんどくさい…… さっさと終わらそう
ピンポーン
私はインターホンを押した
藤野の母
出てきたのは、背の高い美人で若い お母さんだった
広瀬 優杏
藤野の母
広瀬 優杏
藤野さんの部屋は二階らしい
天井は一部が吹き抜けになっていて、 リビングには巨大テレビ
大きくて高級そうなソファでは、藤野さんの 妹らしき人がスマホをいじって くつろいでいた
整いすぎてて、落ち着かない
広瀬 優杏
コンコンッ
階段を上がって、藤野さんのお母さんが ドアをノックする。
藤野の母
いや、友達ってほどの者でも ないんですけどね
………………………
部屋の中は静まり返っており、 返事は返って来ない
藤野の母
そう言って、お母さんはドアを少し開けた
広瀬 優杏
遠慮がちに部屋へ入った
藤野 翠
バタン、と扉が閉まる
薄暗い部屋
カーテンは閉めきられていて、 空気が重い
藤野さんは一瞬驚いたような顔をして こっちを見た
ほとんど話したこともないクラスメイトが 急に家へ来たんだから無理もない
広瀬 優杏
広瀬 優杏
ファイルごと藤野さんに渡した
藤野 翠
全く感情のこもっていない声で言われた
藤野さんは髪はボサボサでパジャマ姿で
瞳や表情、声色から生気が感じられなかった
広瀬 優杏
藤野 翠
広瀬 優杏
藤野 翠
広瀬 優杏
会話はぎこちない
でも、無理をしている感じがすごく 伝わってくる
無駄に広い部屋で、窓から差し込む夕陽を 二人で浴びていた
藤野 翠
広瀬 優杏
藤野 翠
広瀬 優杏
我ながら最低な返し
まぁ、事実だし……
広瀬 優杏
ほんとは、不登校って実際どんな感じなのか 知りたかったのもあるんだけど……
藤野さんは、本当にしんどそうだった
学校に居場所が無くて行けなくなったのに、 家にも居場所なんてどこにも無さそうで
せめて親の理解があれば、 ここまでならないと思う
広瀬 優杏
藤野 翠
広瀬 優杏
藤野 翠
広瀬 優杏
藤野 翠
急に大声を出して藤野さんは叫んだ
空気が変わる
広瀬 優杏
そう思ったけど、もう遅かった
藤野 翠
藤野 翠
藤野 翠
藤野さんはベッドで小さく蹲り、 肩が小刻みに揺れる
抱きかかえた熊のぬいぐるみも、 その動きに合わせてぐったり沈む
藤野 翠
藤野 翠
藤野さんの目から、 大粒の涙がボロボロ溢れた
藤野 翠
藤野 翠
藤野 翠
藤野さんは抱きかかえていたぬいぐるみが ぺしゃんこになるくらい強く抱き締める
藤野 翠
最後にそれだけ叫んで、藤野さんは顔を ぬいぐるみに押し付けて黙り込んでしまった
その隙間から微かに啜り泣く声が漏れている
広瀬 優杏
言葉と涙が同時に溢れて崩れ落ちた 藤野さんを見て、そのとき思った
この子、ずっと我慢してたんだな、って
誰にも言えなくて
どこにも逃げ場がなくて
限界まで溜めてたやつだ
気づいたら、私は言っていた
広瀬 優杏
藤野さんが、少しだけ顔を上げる
広瀬 優杏
私はできるだけ優しい声でそう返した
自分でも驚くほど自然に言葉が出る
私も、誰にももう嫌だ、疲れたって 言えなくて
誰にも見えない所で泣きながら、 毎日登校するしかなかったから
正直、学校から逃げられてる 不登校の子のこと……
広瀬 優杏
だけど、この子は違う
広瀬 優杏
家でも学校でも、ちっとも休めてない
きっとずっと、戦ってた
広瀬 優杏
藤野さんは、『自分も』、と言うように 目を大きく見開いた
広瀬 優杏
広瀬 優杏
藤野 翠
藤野さんは驚いたように 涙でぐしゃぐしゃになった顔を やっと全部上げた
目も鼻も真っ赤
私は自分の前髪を掻き分けて、 少し照れ笑いをしながら言った
広瀬 優杏
私の前髪の一部にある数十本の赤く染髪した 髪の束を見せた
広瀬 優杏
藤野さんは固まって、何か言いたげに 私の赤メッシュを凝視した
その反応がちょっと面白くて、 少し笑ってしまった
広瀬 優杏
広瀬 優杏
広瀬 優杏
広瀬 優杏
広瀬 優杏
そう言って自分の額を指差した
広瀬 優杏
広瀬 優杏
藤野さんは、涙で濡れた目で 私を見つめていた
広瀬 優杏
広瀬 優杏
広瀬 優杏
そう言って、私は手を差し伸べた
藤野さんが少し迷う
広瀬 優杏
藤野 翠
せっかく泣き止んでたのに、 また涙が藤野さんの頬をつたう
でも、きっとこれは違う意味で流れたものだ
藤野さんがゆっくり私の手を取る
私はそれを軽く引いた
藤野さんがゆっくり立ち上がる
広瀬 優杏
藤野 翠
私が初めて翠の笑顔を見たのは、 この時だった
広瀬 優杏
翠の眩しい笑顔に、私は思わず微笑んだ