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ななか
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ななか
藤野 翠
藤野 翠
藤野 翠
広瀬 優杏
藤野 翠
藤野 翠
藤野 翠
優杏は俯いたまま
藤野 翠
藤野 翠
私は優杏の隣に寄った
お互い肩が触れ合うくらい近い
広瀬 優杏
やっと発された優杏は涙声だった
広瀬 優杏
あんなにいつも強気で明るい優杏が
初めて、私の前で弱々しい姿を見せた
広瀬 優杏
広瀬 優杏
初めて、優杏の弱音を聞いた
それが嬉しかった
藤野 翠
藤野 翠
藤野 翠
今度は、私が優杏を助ける番
広瀬 優杏
優杏の頬を一筋の水滴がつたう
それは雨粒か、それとも涙か
広瀬 優杏
広瀬 優杏
藤野 翠
優杏が笑う
広瀬 優杏
藤野 翠
いつの間にか、雨は止んでいた
すっかり水没した服を絞ろうかと思ったが、 冷え切った手には上手く力が入らず、 結局諦めた
藤野 翠
広瀬 優杏
濡れて滑る道を、二人並んで歩き出した
雨で体は冷えているのに、心は温かかった
それから、少し道に迷いつつもなんとか おじいさんとおばあさんの待つ家に帰って
おばあさんは二人で手を繋いで帰ってきた 私たちを見て安心したように優しく笑い、 体をタオルで拭いてお風呂を沸かしてくれた
「明日の朝、二人で神奈川へ帰る」
そう二人に告げて、皆で夕飯を食べた
広瀬 優杏
藤野 翠
私の目線の先には、あのテントの中で 敷かれた毛布の上で気持ちよさそうに 寝ているソラの姿
人間にとっては狭くてもソラにとっては ちょうどよく、快適そうだ
広瀬 優杏
そう言って、優杏は私の隣に座った
夜
疲れ切った私たちは布団へ入った
また、真っ暗な部屋に 時計の針の音だけが響く
広瀬 優杏
藤野 翠
気付けば初日の夜と同じ会話をしていて、 二人で笑った
広瀬 優杏
藤野 翠
私も布団から飛び出して、窓を開けた
瓦が濡れて滑るから、屋根に乗ることは できなかったけれど
藤野 翠
あの夜、二人で瓦の上で見た満点の星空
それは、今も変わることなく 美しく輝いていて
それは、神奈川では高いビルや窓から 漏れ出る眩しい光に隠れている、 夜空本来の姿だった
藤野 翠
広瀬 優杏
『二人で逃げよう』と初めて言った日は 新月だった
広瀬 優杏
二ヒッと笑って優杏が聞いた
藤野 翠
もう、答えはわかってるくせに
藤野 翠
広瀬 優杏
広瀬 優杏
夜空を一瞬見上げてから言った
藤野 翠
私もこれ以上ない笑顔で返した
心が満ちていくのを感じる
広瀬 優杏
藤野 翠
藤野 翠
藤野 翠
私は財布を広げて見せた
広瀬 優杏
優杏が笑う
藤野 翠
藤野 翠
広瀬 優杏
藤野 翠
少し言葉が詰まる
優杏は優しく笑って言った
広瀬 優杏
藤野 翠
藤野 翠
広瀬 優杏
藤野 翠
翌朝
荷物をまとめて、二人の家の玄関に立った
優杏と深々と頭を下げてお礼する
おじいさん
おじいさん
おじいさんがニコニコ答えた
おばあさん
おばあさん
おばあさんは、優しく、でも強くそう言った
藤野 翠
おばあさん
藤野 翠
山の中腹にある、小さな墓地だった
周りには木が多くて、風が吹くと葉の音が さやさやと揺れる
藤野 翠
歩きながらおばあさんに謝った
おばあさん
藤野 翠
おばあさん
おばあさんは笑いながら答えた
おじいさん
おじいさんがそう言って足を止めた
そこには、一つの墓石
綺麗に手入れされていて、 花も新しいものが供えられていた
藤野 翠
思わず、小さく呟いた
写真で見た笑顔が頭に浮かぶ
あんなに幸せそうに笑ってたのに
どうして
そんな言葉が、一瞬よぎる
でも
聞いていいことじゃない気がした
おじいさん
おじいさんが柄杓を差し出す
藤野 翠
私はそれを受け取って、墓石に水をかけた
冷たい水が、ゆっくりと流れていく
優杏も隣で、静かに同じことをしていた
その顔は、いつもより少しだけ真剣で
何かを考えているようだった
線香に火をつける
煙が、ゆらゆらと空に上がっていく
四人で手を合わせて、目を閉じる
藤野 翠
わからない
でも
自然に浮かんできたのは
藤野 翠
短い間だったけど
この場所に来て、いろんなことを知って
少しだけ、自分が変わった気がするから
目を開ける
隣を見ると、優杏もゆっくり手を下ろした
広瀬 優杏
優杏がぽつりと言った
広瀬 優杏
おじいさんとおばあさんは、 少しだけ驚いた顔をして
それから、二人ともふっと笑った
おじいさん
おじいさん
遠くを見るような目
おばあさん
その言葉に、私は少しだけ反応した
おばあさん
おばあさんは優しく笑った
おばあさん
おばあさん
おばあさん
おばあさんが、少しだけ声を落とす
おばあさん
風が吹く
木の葉が揺れる音
おばあさん
おばあさん
その言葉に、胸が、少しだけ痛くなる
隣の優杏も、何も言わなかった
おばあさん
おばあさんは、私たちの方を見た
おばあさん
おばあさん
優しくて、でもどこか強い声だった
藤野 翠
私は頷いた
優杏も、小さく頷いた
しばらく、誰も喋らなかった
風と、線香の香りだけがそこにあって
空を見上げる
昼の空は、どこまでも青い
でも
あの夜に見た星空が、ふと浮かぶ
ここに来なかったら
私はきっと、あの空も見ていない
優杏とも、ここまで話せていない
結花ちゃんのことも、知らなかった
全部、繋がってる気がした
少しの沈黙のあと、私は口を開いた
藤野 翠
自分でも、言っていいのか少し迷った
藤野 翠
藤野 翠
藤野 翠
言葉を探しながら、ゆっくり続ける
藤野 翠
言葉を探しながら、ゆっくり続ける
藤野 翠
おばあさんとおじいさんは、何も言わずに 頷いた
少し、息を吸う
藤野 翠
藤野 翠
おばあさんの指が、わずかに動いた
藤野 翠
藤野 翠
声が、少しだけ震える
藤野 翠
少し間を置く
藤野 翠
藤野 翠
顔を上げて、二人を見る
藤野 翠
藤野 翠
藤野 翠
あの写真が浮かぶ
藤野 翠
藤野 翠
藤野 翠
少しだけ、強く言う
藤野 翠
藤野 翠
言い切ったあと、少しだけ目を逸らす
優杏が、肯定するように私の肩に手を置いた
藤野 翠
死人に口なし
確認することはできない
でも、少なくとも私はそう思ったから
おばあさんもおじいさんも、 しばらく何も言わなかった
でも
ぽたり、とおばあさんの手の上に涙が落ちた
おばあさん
おばあさんが震える声で言う
おばあさん
言葉にならない
おじいさんが、そっとおばあさんの肩に 手を置く
結花ちゃんが返事をしたかのように、そっと 優しく風が拭いた
コメント
1件
仲直りしてよかったーー!! お墓参りしたいって言うところが翠ちゃんっぽいですね^^